今号1面で紹介した通り、キンドリルジャパンは60歳から65歳への定年延長を発表しました。一方で日本IBMの定年後再雇用制度であるシニア契約社員の賃金があまりにも低い状態(月額給与18万5千円・年収222万円)が続いています。組合は、日本IBMのシニア契約社員の賃金に関する問題点や労使交渉の模様などをシリーズで連載しています。今号の8回目は労使間の情報開示要求の書簡のやり取りをお伝えします。
シニア契約社員制度に関する書簡のやりとり
組合は、昨年9月25日と10月16日の団交で会社が持ち帰った組合の質問事項を、それぞれ10月1日書簡「シニア契約社員制度に関する情報要求」、10月22日書簡「シニア契約社員制度に関する情報要求(2)」にて提出、10月30日に得た両書簡に対する会社回答(2通)が賃金交渉ができる内容ではないため、組合は翌31日の団交で不誠実回答であると抗議しました。前記2通の会社回答のうち、10月1日書簡への会社回答はかいな2455号と2456号で紹介しましたので、今回は10月22日書簡への会社回答を抜粋して紹介します。
「シニア契約社員制度に関する情報要求(2)」と会社回答
質問1
会社は、「『2024年JMITU日本アイビーエム支部日本IBM秋闘1次要求』への回答2」において、「IBMは、シニア契約社員の業務内容について、これまで社外に委託していた仕事や部門で発生するサポート業務などを切り出して、新たにシニア契約社員の業務を創出することにしましたが、かかる方法によって十分な分量の業務を確保できると見込めた業務がバンド3相当のサポート業務でした。このため、シニア契約社員をバンド3に位置付けております。」と説明している。しかし、実際には、定年前の業務を継続する必要があり定年前の業務を継続しているシニア契約社員がいるし、業務アサイン待ちで業務が無いシニア契約社員もいる。このようにシニア契約社員の業務の創出が破綻している実態があるのに、シニア契約社員をバンド3に位置付けるシニア契約社員制度をなぜ変えずに続けてきたのか。
(会社回答)
ご指摘のような状況が常態化している事実は把握しておりません。今後も、適切に制度運用がなされるようサンプリング調査を継続して参りますが、人事部の人数が限られており既存の業務で手一杯である関係上、全員についての網羅的な調査は困難であるため、組合で把握している具体的な部署名や個人名についてご教示いただければ確認いたします。
質問2
バンド3にも給与レンジがあるはずなのにシニア契約社員にはなぜ無いのか。(シニア契約社員の給与はなぜ固定になっているのか。)
(会社回答)
10月30日付「シニア契約社員制度に関する情報要求への回答」項番8に対する回答に記載の理由によりシニア契約社員の担当業務はバンド3相当のサポート業務になっていますが、このようなサポート業務は、正社員が担当する業務とは異なり、高度なスキルを必要とするものではなく、スキルを伸ばしてより専門的な業務を可能にしていくという性質のものではありません。また、シニア契約社員は最大5年の有期雇用契約であるため、数十年の在籍が期待されている正社員のようにIBM内でスキルを伸ばしていただき、その努力に応じて高い賃金を支払うペイ・フォー・パフォーマンスに馴染みにくいものです。このため、ペイ・フォー・パフォーマンスによる変動給与が適用されている正社員とは異なり、シニア契約社員では固定給を採用しています。
質問5
バンド3の業務とは具体的にどういう業務か。
(会社回答)
バンドは業務の重要度・困難度を示す指標ですので、同じバンド3でもジョブファミリーによって業務の内容は異なることもあります。また、シニア契約社員については、実際に所属している部署のサポート業務を担当していただいているため、同じジョブファミリーであっても、所属している部署によって担当している業務の内容は大きく異なることもあります。(省略)したがって、バンド3の業務を網羅的に説明することは困難です。
質問6
シニア契約社員制度を変更(改善)する考えはあるのか。
(会社回答)
日本はバブル崩壊後の長引くデフレ状態によって給与水準も大きな変更がないまま長い年月が経過していましたが、最近になって様々な経済情勢の変動があり、今後もさらなる変動が予想されますので、当該情勢を踏まえて変更等を検討していくことになります。このため、将来的には変更する可能性があります。しかし、以前も説明させていただきましたとおり、一度変更した制度や引き上げた条件を引き下げる方向に再変更することは容易ではないため、短期的な経済情勢の変更を踏まえてすぐに制度変更や条件の引き上げを行うことはできないことについてご理解いただけると幸いです。(次回につづく)