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24年ぶりのベースアップを実現した宇野沢組鉄工所支部のたたかい(連載②)

前号に引き続き宇野沢組鉄工所支部のたたかいを報告します。

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24秋闘で、秋闘要求に合わせて、改めてベースアップを行わないことに固執し続ける会社に対して「公開質問及び要求書」を提出しました。「方針」の撤回とベースアップ実施を要求し、物価上昇率、従業員の生活悪化、製造部門の累積赤字17億円解消までどのくらいの年月を要すると試算しているのか、今後赤字が出た場合これを累積赤字に加える考えか、また、この間の一時金の妥当性を質問。さらに組合への説明の言質を覆す行為に対し、誠実性に欠ける姿勢と考えるか否か、また秋闘回答を毎回文書にて求めているにも拘わらず口頭で済ませる理由と改善を要求しました。
会社は、総務省が発表している物価上昇率を示しながら、従業員の生活悪化については直接回答せず、製造業の中小企業としては一般的水準で、「生活はできると考える」、「初任給の引き上げも実施している」と回答。「方針」の撤回は拒否、この間の利益から累損解消には約11年との試算を回答。製造部門の利益改善は賞与に反映。今後の赤字も累積加算すると回答しました。ベースアップをしない理由を次々に翻す姿勢には言及することなく、文書回答も「回答者である会社が判断」としました。ただし公開質問や秋闘には文書にて回答してきました。24年末一時金も夏に続き2.3カ月が維持されました。残るはベースアップ実現です。「方針」を撤回せず、賞与にて還元することを繰り返す会社の頑なな姿勢をどうすれば変えさせることができるのか。「労働委員会で斡旋団交をやろう。会社が応じなければ不当労働行為救済申し立てで事実上の団交拒否を正してもらおう。」対策会議で何度も話し合いを重ねました。
1月11日(土)から12日(日)に泊まり込みで行った南部地協25春闘第2次討論集会でこのたたかいを報告した際に、助言者として参加していた生熊元JMITU中央執行委員長から「第三者機関の活用も悪いとは言わないけれど、まず全従業員を相手にシール投票を行ったらどうか」という提案を受けました。職場の多数の要求であることを可視化する、これで経営にインパクトを与えることができる。宇野沢組鉄工所支部の対策を担当している私と有馬事務局長は、「これは化けるかもしれない」と考え、支部に提案することに決めました。シール投票で要求の多数派であることを可視化しよう。支部の受け止めは、「組合の垣根を越えて投票してくれるかな」と疑心暗鬼なところもありましたが、とにかくやってみようということになり準備が始まりました。大量のシールをどこで買うか、投票呼びかけのビラ、シールを貼り付ける投票板の準備、正門と裏門、そして自転車・バイク置き場の三か所で同時に実施する為の手配など、組合内で役割分担を行い2月14日(金)の実施を決めました。南部地協25春闘闘争本部会議で他支部からの参加を呼びかけ、雨が降らないことを祈りつつ当日を迎えました。当日は支部6人と南部地協4人(大田地域支部、日本IBM支部、ISB支部)の1名0が3か所に分かれて呼びかけを開始。支部の若手には良い経験となりました。最初は遠慮がちに声をかけていましたが、出勤してくる従組のなかまに肩をたたかれ「ご苦労さん、頑張れよ」と励まされたり、会社方針に「反対、反対、絶対反対」と叫びながら投票してくれるなどなかまの反応は想像以上にあたたかく、終盤には追いかけながら呼びかけるなど自信が湧く行動となりました。組合員対象者が130名弱で、投票結果は当日90票が集まり89名が会社方針に反対、加えて、投票できなかったなかまから「自分も投票させてほしい」と支部組合員に声が掛かり、予定外でしたが食堂に投票板を設置し、さらに6票を集め、最終的に94票の反対票が集まりました。組合は、25春闘の要求団交で「会社方針に反対」が職場労働者の総意であることを会社に伝えました回 。答日が3月5日(水)から会社の都合で6日(木)の午後に変更されました。当日はJMITU第一次統一行動日南部地協リレーストライキで宇野沢組鉄工所支部も16時15分からストライキを決行する予定でした。しかし冒頭で述べた通り、24年ぶりのベースアップ回答が示され、かつ32年ぶりの5ケタの回答を得てストライキを中止しました。回答は異常な物価高騰による実質賃金低下を止めるには十分ではありません。労使の切磋琢磨は今後も必要ですが、ベースアップが実施され一時金が是正されてきた事実は、会社で働き続ける将来展望を持つことができる大きな一歩です。この実績と経験を活かし、組合員を増やし組織建設を進め、さらなる要求実現の足掛かりをつくるために支部とタッグを組んで奮闘することを決意し、たたかいの報告とします

5月28日4次スト決行 日本IBM、キンドリルジャパンは賃上げの上積み回答をせよ

今25春闘は、4月9日の3次ストライキの後、日本IBM、キンドリルジャパンから組合員の賃上げ回答がありました。日本IBMは、春闘要求への3月5日回答で25年の給与調整の詳細は現在検討中のため、現時点でお伝えできる内容はありませんと回答、3月12日の団体交渉では25年は5月1日付で給与調整を実施する予定ですと回答しただけで進展なしでした。続く4月3日の団体交渉でも進展なしでしたが、4月18日に組合員の5月1日付賃上げ回答を行いました。キンドリルジャパンは、春闘要求への3月5日回答で本年7月1日付で給与調整の実施を予定していますと回答、3月12日の団体交渉では進展なしでしたが、5月26日に組合員の7月1日付賃上げ回答を行いました。

組合推定平均賃上げ率日本IBM1.0%、キンドリルジャパン3.2%

今春闘での組合要求がなければ両社の2025年の賃上げそのものがなかったかもしれませんが、3次にわたるストライキを決行した組合の強い要求によって、両社は25年の賃上げ実施日の回答、組合員の賃上げ回答を行いました。しかし、両社の全従業員平均賃上げ率は回答が未だになく分かりません。そこで組合は平均賃上げ率を推定していますが、25年の組合推定平均賃上げ率は日本IBMが1.0%、キンドリルジャパンが3.2%で、今春闘の10%の賃上げ要求にはほど遠い水準です。これでは物価高騰の中、実質賃下げですので、組合は両社の賃上げ回答を不服として、5月28日、4次ストライキを決行、日本IBM箱崎事業所前でお昼休みにストライキ行動(上・右写真)を実施しました。昨年と比較すると、24年の組合推定平均賃上げ率は日本IBMが1.1%、キンドリルジャパンが2.1%でしたので、25年の賃上げは日本IBMが昨年と同水準、キンドリルジャパンが昨年より高水準です。また両社を比較すると、キンドリルジャパンの25年の賃上げ水準は日本IBMの3倍超で、日本IBMよりも従業員の生活への配慮が見られますが、組合の今春闘の10%の賃上げ要求には届きません。

賃上げのたたかいは続く

組合は、引き続き両社に賃上げの上積み回答を要求します。日本IBMには25年の賃上げの上積み回答と、少ない1回分の賃上げを25年に実施することを要求、キンドリルジャパンには少ない1回分の賃上げを25年に実施することを要求します。(少ない1回分の賃上げは、実施されなかった20年の賃上げのことです。)季節は春闘を過ぎ、すでに6月ですが、組合の賃上げのたたかいはまだ続きます。

24年ぶりのベースアップを実現した 宇野沢組鉄工所支部のたたかい(連載①)

今号、次号の2回にわたりJMITU宇野沢組鉄工所支部のたたかいを連載します。筆者は、宇野沢組支部が所属するJMITU東京地方本部・南部地区協議会の小泉隆一議長です。
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2025年3月6日(木)は、宇野澤組鐵工所(社名:旧漢字。以下、会社という)で働くなかまにとって、とてもうれしい日になりました。会社から、約5000円(平均)の定期昇給に加えて、24年ぶりに正社員1万円、定年再雇用社員6500円のベースアップ回答を引き出したからです。
「製造部門の過去7年間分の累積赤字約17億円を解消するまでベースアップの検討はしない」という会社の「方針」を受けた24春闘。そこから一年間、JMITU宇野沢組鉄工所支部(支部名:常用漢字)と南部地協(以下、組合という)は、たたかいの旗を降ろさずベースアップを追求し続けました。
アンケートや一言メッセージで、異常な物価高騰により生活が極めて苦しくなっていることを訴える職場のなかまの声を集め産別団交で会社に紹介し、「方針」表明後は、怒りのポスター掲示、そして「会社表明は事実上の春闘団交拒否の不当労働行為」と指弾し、リレーストライキや東京地本未解決支部激励ストライキを決行してきました。
続く24夏闘、秋闘、冬闘で「第三者機関への提訴も辞さないこと」を表明し、会社に「方針」撤回を迫る産別団交を重ねてきました。そして25春闘で「シール投票」を行い従業員の多数の思いを可視化して会社にぶつける取り組みが決め手となり結実しました。
会社には製造部門と不動産部門の2つのセグメントがあり、長年、不動産部門の黒字が全体収支をカバーしてきた歴史があります。会社には、1970年代に全国金属・宇野沢組鉄工所支部にインフォーマル組織を潜入させ組合を分裂、新たに立ち上げた従業員組合(以下、従組という)に「アメ」政策を続けたことにより生活残業の蔓延など職場統制が崩れ、生産性悪化が進み、製造部門が赤字転落していく暗い過去があります。その後も産業構造の変化、OEM着手による利益率悪化、新システム導入時の混乱での納期遅れ、作業場レイアウト変更での効率悪化が次々に起こり、黒字化への道のりは困難の連続でした。
会社は「製造部門が黒字化すればベースアップも可能」など、製造部門の黒字化がベースアップの鍵だとして、過去20年に亘る団交で定昇のみの回答を押しつけてきました。
赤字が縮小してきたここ数年は「黒字になったとしても、当面ベースアップはしない。一時金で還元する。その際、会社が利益を溜め込むようなことはしない」と言質を後退させました。実際に黒字化した23年冬季一時金は、例年よりも若干上積みし2.0カ月の回答ではあったものの世間並には程遠く、かつ「会社が溜め込むようなことしない」との約束は反故にされました。組合は、23年度製造部門通期黒字化で迎えた24年春闘の団体交渉で、尚も会社がベースアップに応じない頑なな姿勢を続けることに抗議し、黒字化したにもかかわらずベースアップを行わない明確な理由を示すよう追求しました。
すると会社は「過去7年間の製造部門における累積損失(約17億円)を償却完了するまでベースアップを実施しない方針である。償却完了後にベースアップを検討する」との回答に至りました。
これを許せば、製造部門の黒字化を目指し奮闘を続けてきた職場のなかまの努力が蔑ろにされ、定昇だけでは今後十数年間に亘り実質賃金が低下し続けます。組合は、産別団交で「何度も前言を反故にする会社の姿勢は許されない」、「不動産部門の利益により会計上の累損は存在しない。製造部門に限定した累積損失を理由に従業員の厳しい生活を顧みず、過去の累積赤字の責任を従業員に転嫁する経営姿勢を認める訳にはいかない」、「今後の春闘で組合が物価高騰対策や生活改善のために賃金引上げを要求しても、会社がベースアップの検討すらせず拒否し続けることを予告したのは事実上の団交拒否である」と猛然と抗議。妥結せずにたたかいを継続することを宣言しました。
24夏闘では会社から2.3か月の回答を引き出しただけではなく、当面この水準を維持したい旨の表明を受けました。組合から「それは予算の賞与引当金をこれまでの2カ月から2.3カ月に上げると言うことか」の質問に対し、会社が「そういうことだ。収益に多少のブレがあっても維持したい」との応答がありました。
このことは組合がベースアップ実現を追求してきた一つの成果の現れでした。22年夏までの数十年間、2カ月を下回る1.4カ月~1.8カ月が常態化していたことを見れば、改善が進んだことは確かです。しかし、漸く世間水準に追いついてきたというのが職場のなかまの受け止めでした。(次回につづく)

夏ボーナス回答出る バンド7以下一般職推定昨年を大幅に上回る 日本IBM平均1,155,000円 キンドリルジャパン平均1,046,000円

6月10日は夏ボーナスの支給日です。日本IBM、キンドリルジャパンから組合に夏ボーナス回答が出ましたので、全社推計をお知らせします。

両社とも昨年より大幅アップ

日本IBMの2025年夏ボーナスの組合推定平均支給額(本体・バンド7以下一般職)は、115万5千円(2.51ヶ月)、昨夏より15万円の大幅アップでした。キンドリルジャパンの2025年夏ボーナスの組合推定平均支給額(本体・バンド7以下一般職)は、104万6千円(2.22ヶ月)、昨夏より9万8千円の大幅アップでした。

リファレンスサラリーを全額もらえることはほとんどなかった


2024年支払までのボーナスは、変動部分(業績反映部分)が「リファレンスサラリー(RS)×6%×会社業績達成度×個人業績率」という計算式(下図参照)で計算されているために、RSと同額の年収を得るには、会社業績達成度、個人業績率ともに100%でなければなりませんでした。しかし、左表の通り、2024年支払までで会社業績達成度が100%に達したことは2024年支払ボーナスの1回しかないうえ、、個人業績率は毎年変動してきましたので、RSを全額もらえることはほとんどなかったわけです。

組合要求が実現

ボーナスがこのような方法で計算されているため、組合はこれまで会社に対し、年収が安定的に増えていかないこと、また個人業績率が0%など低水準とされた従業員のボーナス格差、年収格差が拡大していることを指摘し、個人業績率に大きな格差を付けないこと、ボーナス制度を改善することを要求してきました。その結果、組合要求が実現しました。まずキンドリルジャパンは、昨年12月27日にボーナス制度改定を発表。この中で2025年から賞与・定期俸に反映される会社業績達成度を基本「100」とし、個人業績は反映しないこと、会社・個人の業績に応じたボーナスは現行のSSP(グローバル共通のボーナスプログラム)だけとすることを発表しました。続いて日本IBMは、今年3月11日に2025年のボーナス支払に使われる会社業績達成度が「125」と決まったことを発表。さらに同13日に2025年7月1日付の報酬制度改定を発表し、この中で賞与・定期俸の変動部分を廃止し、アニュアル・リファレンスサラリーの総額を支給すること、会社・個人の業績に応じたボーナスは現行のGDP(グローバル共通のボーナスプログラム)だけとすることを発表。翌14日には2025年6月支払の賞与・定期俸の個人業績率は一律100%とすることを発表しました。今年の夏ボーナス回答は、上記の組合要求の実現が反映されたものとなりました。従業員の皆さん、組合に加入して年収を増やしましょう。

第 9 6 回中 央 メ ー デ ー 1 万 4 0 0 0 人 結 集 ~ す べ て の 働 く 人 に 人 間 ら し い 労 働 を ~”

5月1日、全労連(全国労働組合総連合)主催による第96回中央メーデーが、東京都渋谷区の代々木公園で開催されました。晴天の下、全国から1万4000人の労働者が結集しました。集会では、物価高を上回る実質的な賃上げの実現や働く者の権利擁護を柱としたメーデー宣言が採択され、その後、パレードが行われました。

スローガンと訴え

今回のメーデーでは「働くものの団結で生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう」というスローガンのもと、次のような課題が訴えられました。・物価高騰を上回る大幅賃上げの実現を目指すこと。・全国一律で最低賃金1500円以上への引き上げ。・労働時間のデロゲーション(規制緩和)拡大に反対し、8時間労働制を守り抜くこと。・均等待遇の実現とあらゆるハラスメントの根絶をすること。・ジェンダー平等と格差是正を実現すること。

大幅賃上げを求める世論を広げる

主催者挨拶では、秋山正臣・全労連議長が「わたしたちのたたかいが、最低賃金の引き上げをはじめ、労働者の処遇改善、大幅賃上げが必要だとの世論をここまで創り上げてきた。今日の世論を創り上げたことは、わたしたちの運動の方向が正しかったことの証しである。このことを再確認し、さらに運動を大きく発展させようではありませんか。しかし、実質賃金はマイナスとなったままである。その原因の一つが、お米をはじめとする食料品の高騰による物価高がある。特に主食であるお米の高騰は、わたしたちの生活に大きな影響を与えている。今、政府が行うべきことは、国民の命とくらしを守るために、農政を転換し、自給率を大幅に向上させることではないか」と訴えました。

生活と権利を守る宣言を採択

実質賃金の低下が続くなか、生活防衛と働く誇りの回復を目指し、物価高を上回る大幅な賃上げと底上げによる生活改善、あらゆるハラスメントの根絶、ジェンダー平等の視点に立った均等待遇と格差是正を求めるメーデー宣言が採択されました。今年の宣言には、世界経済の不透明感が高まるなか、平和の実現に向けて、世界の働く仲間との連帯をさらに強化する決意も盛り込まれました。

3コースで力強く行進

集会後、参加者は代々木、恵比寿、青山の3コースに分かれてパレードを実施。「最低賃金1500円以上」「8時間労働を守れ」など、訴えのこもった横断幕やプラカードを掲げながら行進し、労働者の声を街頭に力強く響かせました。

25春闘賃上げ回答 JMITU主要企業は昨年より高水準日本IBMは上積み回答をせよ

JMITUの25春闘情勢は、4月18日現在、要求を提出した133支部分会のうち回答引き出し数は114支部分会となりました。上積み回答引き出し数は40支部分会まで増え、組合員平均は12,005円(3.96%)となりました。昨年同時期との比較では組合員平均で983円(0.14%)上回っています。賃上げ額が5桁を突破した支部分会は61支部分会になりました。JMITU主要企業15社の賃上げ回答は、3月28日時点の速報で昨年を上回る高水準の成果を上げていることをかいな2463号(25年4月7日号)1面でお伝えしましたが、4月18日時点の速報(左下表)では新たに回答を引き出したところやストライキによる回答額上積みを引き出したところも見られます。これにともない、賃上げ率回答の分布(右下表)は背景色で示したように、主たる分布域が昨年より上昇しているのと同時に、3月28日時点よりも5%台が増えています。また、主要企業15社以外にも東京東部の小坂研究所支部は4次回答11,000円を引き出し妥結方向となったほか、東京北部の鈴木シャッター支部は4次回答11,500円を引き出し、たたかいを継続中です。東京南部のISB支部は30歳~60歳のベースアップ1000円上積みの4次回答11,186円を引き出しました。このように主要15社を含むこれらの企業は物価高騰のなか賃上げで従業員の生活に配慮している姿勢がはっきりと表れています。

日本IBMの推定平均賃上げ率は1.0%

日本IBMは、5月1日付で賃上げを実施しました。日本IBMの5月1日付賃上げの全従業員平均賃上げ率は回答が未だになく分かりませんが、組合による推定平均賃上げ率はわずか1.0%で実質賃下げです。昨年は1.1%でしたので今年も大差無い水準です。そこで組合は4次ストライキを構えて、引き続き日本IBMに賃上げの上積み回答(物価高騰を上回る賃上げ)と、少ない1回分の賃上げを実施することを要求します。組合の賃上げのたたかいはさらに続きます

 

25春闘 4月9日3次スト決行 IBM、キンドリルは物価高騰からくらしをまもる大幅賃上げを実施せよ

日本IBM、キンドリルジャパンは、JMITU25春闘要求への3月5日回答において、本給の10%引き上げを柱とする、物価高騰を上回る賃上げ要求に対し、有額回答をしませんでした。組合は、両社の3月5日回答を不服として、既報の通り3月6日に1次ストライキ、3月13日に2次ストライキを決行しました。さらに両社はその後も依然として有額回答をしなかったため、組合は4月9日、午前9時から3次ストライキを決行、従業員の生活軽視に抗議しました。3次ストライキは、1次・2次と同様、一人でも多くの組合員が抗議の意思を示せるように、参加時間を9時から17時36分の間に設定した複数の時間から選択、出社または在宅にて参加する形で実施しました。また、日本IBM箱崎事業所前で、午前10時50分からのストライキ行動(左上写真)を、金属機械反合闘争委員会が主催する第304回金属反合共同行動として実施。ストライキ行動では約100人の支援者が集結するなか、組合は、賃上げの有額回答を行うこと、物価高騰に負けない賃金に改善すること、1回分少ない賃上げを実施することを訴えました。

両社の現在の回答状況

日本IBMは、25年は5月1日付で賃上げを実施予定と回答したところまで、キンドリルジャパンは、25年7月1日付で賃上げを実施予定と回答したところまでで、両社とも賃上げの有額回答なし、1回分少ない賃上げについても回答なしです。具体的には、日本IBMは、3月5日回答で25年の給与調整の詳細は現在検討中のため、現時点でお伝えできる内容はありませんと回答、3月12日の団体交渉では25年は5月1日付で給与調整を実施する予定ですと回答しただけで進展なし、続く4月3日の団体交渉でも進展なしです。キンドリルジャパンは、3月5日回答で本年7月1日付で給与調整の実施を予定していますと回答、3月12日の団体交渉では進展なしです。

賃上げのたたかいはさらに

とはいえ、組合が要求しなければ、賃上げの実施さえなかったかもしれません。ただ、賃上げに有額回答がなければ、つまり全従業員平均の賃上げ額の回答がなければ、個々の従業員が自身の賃上げのポジションを知ることができません。そこで組合は4次ストライキを構えて、引き続き日本IBM、キンドリルジャパンに物価高騰からくらしをまもる大幅賃上げの実施を要求します。季節はそろそろ5月。しかし組合の賃上げのたたかいはさらに続きます

SPセントラル警備保障支部スト支援


JMITUCSPセントラル警備保障支部は3月31日、大幅賃上げ、職場のパワハラ根絶などを求めて昨年に続いてストライキを決行しました。東京都新宿区の本社前で実施されたストライキ行動には多くの支援者が集結しました。警備員の賃金は正社員でも全産業平均より月10万円以上も低く、さらに物価高騰で困窮しています。にもかかわらず、春闘で会社が提示した回答は、定期昇給1000円とベースアップ1500円の月額2500円足らずでした。スト行動では、堀一洋委員長が「交渉が決裂してストライキに発展するのは経営者の責任だ。CSPの賃金は健康で文化的な生活ができなくなっている。物価高騰に対応できない給与だ。今は緊急の生活支援が必要な状況だ」と訴えました。続いて、組合員が次々に発言し、職場の現状を訴え、職場環境の改善を会社に求めました。

定年後再雇用賃金差別裁判 和解成立で円満解決 

当支部組合員の原告2名が、定年後再雇用(シニア契約社員)に移行し、定年時から年収を大幅に減額されたため、差額相当分の損害賠償を求め東京地方裁判所に提訴した裁判は、和解により円満に解決いたしました。以下に和解成立にあたっての声明を紹介します。

1 定年後給与減額に関して会社との和解

原告ら、JMITU、同東京地方本部、同日本アイビーエム支部及びキンドリルジャパン株式会社(以下「キンドリルジャパン」という)は、2025年3月18日、東京地方裁判所にて、原告らが定年後継続雇用(シニア契約社員)として月額給与17万円(年収204万円)と定年時の年収から大幅に減額されたため、差額相当分を損害賠償請求していた本件請求に関して、双方の互譲により、キンドリルジャパンが一定の金銭の支払いを含むことを骨子として和解により円満に解決した。

2 本件請求の具体的な内容

原告2名は、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下「日本IBM」という)に勤務していたが、2018年に60歳定年を迎えた。定年後は日本IBMの高年齢者継続雇用制度であるシニア契約社員制度の適用を受け、1年の有期雇用契約を締結し65歳まで契約が更新されることになった。ところが、日本IBMは、シニア契約社員は一律に月額17万円の基本給(賞与・手当なし)と定めており、原告ら2名も月額給与17万円(年収204万円)とされた。この給与水準は、原告2名の定年時年収の2割弱の水準であった。シニア契約社員となっても、労働時間及び配置転換の範囲、人事考課は正社員と同様とするというものであったそ 。こで、原告2名は、定年後も定年前と実質的に同様の業務に従事しているとして、2020年4月1日、日本IBMに対してパート有期雇用法8条の均衡待遇に違反するとして東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。日本IBMは、原告2名の定年後の業務は定年前の業務とは異なり、バンド3に該当する補助的業務であるから年収204万円の給与は不合理ではない旨を主張した。日本IBMは、原告2名が従事していた部門を、2021年9月1日、キンドリルジャパンを承継会社として会社分割(吸収分割契約)をしたため、原告2名の有期雇用契約はキンドリルジャパンに承継されることになった。その結果、本件損害賠償請求事件もキンドリルジャパンが訴訟を承継することになったが、キンドリルジャパンも日本IBMと同じく、原告らの業務内容が定年前と定年後は異なるとして、年収の減額は不合理ではないとして争った。以上が本件請求の具体的な内容である。

3 日本IBM及びキンドリルジャパンの労使関係

日本IBMでは、定年後の高齢者継続雇用に関しては、定年時から給与が大幅に減額されている。JMITU、同東京地方本部、同日本アイビーエム支部(以下「JMITU」という)は、定年後のシニア契約社員の基本給月額17万円を増額するよう要求し、同時に月額17万円とする理由を団体交渉で説明するように求めた。ところが、日本IBMは、「シニア契約社員の担当する業務の重要度・困難度を勘案して決定している」と説明するだけで、具体的な説明を行わなかった。そこで、JMITUは、日本IBMの対応がパート有期雇用法14条の説明義務に反するだけでなく、労働組合法7条2号が禁ずる不誠実団体交渉であるとして、2020年11月、東京都労働委員会に不当労働行為救済命令を申し立てた。この不当労働行為救済命令申立後、都労委で審理中に、上記のとおり日本IBMは原告ら2名が所属する部門をキンドリルジャパンに会社分割をした。東京都労働委員会(都労委)は、2024年3月18日、日本IBMに対して、JMITUに対してシニア契約社員をバンド3として給与を決定した理由、正社員との待遇の相違の理由を団体交渉にて誠実に説明すること、承継会社であるキンドリルジャパンに対しても誠実に団体交渉に応じるように命じた。キンドリルジャパンは、この都労委命令を受け入れて、JMITUと定年後再雇用者の給与等の団体交渉に誠実に応じることを表明した。JMITU日本アイビーエム支部は、キンドリルジャパンに対し、2024年11月、あらためて定年後再雇用者の給与等の労働条件に関して、定年後も定年前と同一業務に従事している場合には定年時と同じ待遇とし、定年後に同一業務に従事していない場合であっても定年前給与の8割を維持するように要求して団体交渉を申し入れ、キンドリルジャパンとの団体交渉を積み重ねてきた。キンドリルジャパンは、2025年1月6日、60歳定年を65歳に延長して定年後の待遇を維持することを発表した。対象者は2025年4月1日以降に60歳となる社員からである。待遇を維持したままの65歳への定年延長は、キンドリルジャパンの英断と高く評価できるところである。一方、日本IBMは、この都労委の救済命令を不服として中央労働委員会に対して再審査申立をした。

4 本件和解の意義

定年後再雇用の給与について、多くの会社では、定年時から減額されているにもかかわらず、労働者・労働組合に対して、その理由や根拠について団体交渉にて誠実に説明されていない。JMITUは、日本IBM及びキンドリルジャパンに対して誠実な団体交渉を求めて闘った。結果、キンドリルジャパンでは待遇を維持したまま65歳定年延長が実現するに至った。これは、JMITUの不当労働行為救済命令の申し立て、また、定年後再雇用による給与削減について本件訴訟に取り組んだことによる大きな成果である。本年の春闘においても、多くの職場で定年後再雇用社員の労働条件の維持・改善の取り組みがなされているところであるが、この成果が他の多くの職場での定年後再雇用社員の待遇改善につながることを期待するものである。一方、日本IBMとの関係では現在も中央労働委員会にて都労委命令の再審査手続が係属中であり、この争議の勝利に向けて全力をあげている。これまでのご協力に心から感謝を申し上げるとともに今後ともご支援をお願いします。

2025年4月1日JMITU(日本金属製造情報通信労働組合)同東京地方本部同日本アイビーエム支部定年継続雇用パート有期雇用法8条違反訴訟弁護団

入社おめでとうございます日本IBM、キンドリルジャパンには頼れる労働組合があります

4月1日付で入社された社員の皆さん、入社おめでとうございます。しかし、入社の喜びの一方で、日本IBMとキンドリルジャパンは外資系なのでリストラをよく行う企業なのではないかと不安の人もいらっしゃることでしょう。でも安心してください。日本IBMグループとキンドリルジャパン・グループには、頼れる労働組合があります。それが私たちの労働組合「JMITU日本IBM支部」(以下、組合、または当組合)です。

日本の労働法の考え方と両社における労使関係

日本では日本国憲法第28条が労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保証しており、最上位の憲法が労働者の団結権を認めていることから、労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)に代表される日本の労働法は、「会社対労働組合」の関係、すなわち集団的労使関係という考え方を基本としています。そのため、日本の多くの企業は集団的労使関係に基づく労務管理を実施しています。このことは日本で事業を行う企業の責任であり、日本で事業を行う外資系企業も例外ではありません。ところが、両社では、皆さんの上司であるラインマネジャーが、配下の個々の従業員の人事評価と昇給額を決定する「ラインによる人事管理」が行われています。すなわち、両社における労使関係は、日本の労働法が規定する集団的労使関係ではなく、「会社対個人」の関係に押し込められているのです。

両社の労使関係の弊害

「会社対個人」の関係のには次のような弊害があります。日本で事業を行う企業で労働組合のある多くの企業では、集団的労使関係の中で、春闘での労働組合の賃上げ要求に対し、会社が全社平均賃上げ額を回答します。そして、その回答を元に個々の従業員の昇給額が決定されます。ところが、両社は全社平均賃上げ額を回答しませんので、個々の従業員は自身の賃上げ額が全社平均と比べてどの程度かを知ることができません。仮に自身の賃上げ額が全社平均より低くてもわかりませんから、低賃金で長年放置されることがあります。また、従業員は、上司の判断次第、やり方次第で低評価を受ける、昇給をゼロにされたり抑制されたりする、パワハラを受ける、退職勧奨をされる、などの弊害を被ることがあります。事実、IBMからの会社分割によるキンドリルの発足(2021年9月)の前には、日本IBMで「パワハラ4点セット」と退職勧奨を使ったリストラ(人員削減)が全社的に行われたことがあります。パワハラ4点セットは次の①~④の4段階で、そのいずれかの段階で退職一時金と再就職支援プログラムを提示した退職勧奨面談が行われます▼①低評価=リストラのターゲットになった従業員に対して恣意的な低評価をつける▼②PIP=低評価をつけた従業員の賃金を下げる口実をつくるために行う「業績改善プログラム」(Performance Improvement Program)▼③賃下げ=会社から追い出す目的で賃金を下げる▼④降格=賃下げされても会社を辞めないでがんばっていると待っているバンド引き下げまた、会社分割で発足したキンドリルジャパンは日本IBMの人事・給与制度を受け継いでいますので、両社ではパワハラ4点セットに対して常に警戒を要します。

組合に加入しましょう

皆さん、そのような弊害からご自身を守るため、弊害を被る前にその抑止力として、ぜひ今すぐ組合に加入しましょう。当組合は、会社に忖度なくはっきりと物を言い、要求を勝ち取るためにたたかう労働組合ですので、組合員は守られるのです。また、組合に入るとお得な保険である「全労連共済」に加入することができます。若い時から入ればさらにお得です。その上、組合に入ると「ろうきん」から有利な金利で住宅ローン等の借り入れをすることができます。いかがでしょうか。この両社で組合に入らない理由は無いのではないでしょうか。組合加入は3面の「組合なんでも相談窓口」にご連絡の上、お申し込み下さい。