前号に引き続き宇野沢組鉄工所支部のたたかいを報告します。
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24秋闘で、秋闘要求に合わせて、改めてベースアップを行わないことに固執し続ける会社に対して「公開質問及び要求書」を提出しました。「方針」の撤回とベースアップ実施を要求し、物価上昇率、従業員の生活悪化、製造部門の累積赤字17億円解消までどのくらいの年月を要すると試算しているのか、今後赤字が出た場合これを累積赤字に加える考えか、また、この間の一時金の妥当性を質問。さらに組合への説明の言質を覆す行為に対し、誠実性に欠ける姿勢と考えるか否か、また秋闘回答を毎回文書にて求めているにも拘わらず口頭で済ませる理由と改善を要求しました。
会社は、総務省が発表している物価上昇率を示しながら、従業員の生活悪化については直接回答せず、製造業の中小企業としては一般的水準で、「生活はできると考える」、「初任給の引き上げも実施している」と回答。「方針」の撤回は拒否、この間の利益から累損解消には約11年との試算を回答。製造部門の利益改善は賞与に反映。今後の赤字も累積加算すると回答しました。ベースアップをしない理由を次々に翻す姿勢には言及することなく、文書回答も「回答者である会社が判断」としました。ただし公開質問や秋闘には文書にて回答してきました。24年末一時金も夏に続き2.3カ月が維持されました。残るはベースアップ実現です。「方針」を撤回せず、賞与にて還元することを繰り返す会社の頑なな姿勢をどうすれば変えさせることができるのか。「労働委員会で斡旋団交をやろう。会社が応じなければ不当労働行為救済申し立てで事実上の団交拒否を正してもらおう。」対策会議で何度も話し合いを重ねました。
1月11日(土)から12日(日)に泊まり込みで行った南部地協25春闘第2次討論集会でこのたたかいを報告した際に、助言者として参加していた生熊元JMITU中央執行委員長から「第三者機関の活用も悪いとは言わないけれど、まず全従業員を相手にシール投票を行ったらどうか」という提案を受けました。職場の多数の要求であることを可視化する、これで経営にインパクトを与えることができる。宇野沢組鉄工所支部の対策を担当している私と有馬事務局長は、「これは化けるかもしれない」と考え、支部に提案することに決めました。シール投票で要求の多数派であることを可視化しよう。支部の受け止めは、「組合の垣根を越えて投票してくれるかな」と疑心暗鬼なところもありましたが、とにかくやってみようということになり準備が始まりました。大量のシールをどこで買うか、投票呼びかけのビラ、シールを貼り付ける投票板の準備、正門と裏門、そして自転車・バイク置き場の三か所で同時に実施する為の手配など、組合内で役割分担を行い2月14日(金)の実施を決めました。南部地協25春闘闘争本部会議で他支部からの参加を呼びかけ、雨が降らないことを祈りつつ当日を迎えました。当日は支部6人と南部地協4人(大田地域支部、日本IBM支部、ISB支部)の1名0が3か所に分かれて呼びかけを開始。支部の若手には良い経験となりました。最初は遠慮がちに声をかけていましたが、出勤してくる従組のなかまに肩をたたかれ「ご苦労さん、頑張れよ」と励まされたり、会社方針に「反対、反対、絶対反対」と叫びながら投票してくれるなどなかまの反応は想像以上にあたたかく、終盤には追いかけながら呼びかけるなど自信が湧く行動となりました。組合員対象者が130名弱で、投票結果は当日90票が集まり89名が会社方針に反対、加えて、投票できなかったなかまから「自分も投票させてほしい」と支部組合員に声が掛かり、予定外でしたが食堂に投票板を設置し、さらに6票を集め、最終的に94票の反対票が集まりました。組合は、25春闘の要求団交で「会社方針に反対」が職場労働者の総意であることを会社に伝えました回 。答日が3月5日(水)から会社の都合で6日(木)の午後に変更されました。当日はJMITU第一次統一行動日南部地協リレーストライキで宇野沢組鉄工所支部も16時15分からストライキを決行する予定でした。しかし冒頭で述べた通り、24年ぶりのベースアップ回答が示され、かつ32年ぶりの5ケタの回答を得てストライキを中止しました。回答は異常な物価高騰による実質賃金低下を止めるには十分ではありません。労使の切磋琢磨は今後も必要ですが、ベースアップが実施され一時金が是正されてきた事実は、会社で働き続ける将来展望を持つことができる大きな一歩です。この実績と経験を活かし、組合員を増やし組織建設を進め、さらなる要求実現の足掛かりをつくるために支部とタッグを組んで奮闘することを決意し、たたかいの報告とします