組合が日本IBM、キンドリルジャパンに提出する秋闘統一要求書の中から「労働法制の大改悪に反対し、安心して働ける職場の実現を求める統一要求書」を抜粋して以下に紹介します。
1.労働法制の大改悪に反対し、職場に持ち込ませない要求
(1)政府・厚労省がすすめようとしている労働基準法の大改悪や「無効解雇の金銭解決制度」に反対し、「労働者の雇用と権利をまもる」という経営責任を明確にすること。「裁量労働制」の導入をはじめ労働条件変更や解雇・退職勧奨など雇用に関する施策については、労働組合と事前に協議し同意を得ること。
(2)本人の希望にもとづき、有期雇用者・派遣労働者の正社員化を促進すること。正社員化にあたっての賃金・労働条件は労働組合と事前に協議すること。
(3)無期転換労働者の賃金・労働条件は正社員と同一とすること。
(4)「職務給(ジョブ型人事制度)」など名称にかかわらず、査定・成果主義を持ち込まないこと。賃金制度を導入・改定する場合は、労働組合と事前に協議し同意を得ること。
2.「ジェンダー平等」をすすめ、すべての労働者の均等待遇を実現する要求
(1)賃金・一時金、手当、特別休暇、退職金等の労働条件において、性差、雇用形態、国籍などによる格差をなくし、均等待遇を実現すること。また、格差がある場合、その理由を具体的な根拠を示して説明すること。
(2)すべての企業で男女の賃金格差を情報開示し、賃金格差にむけた是正計画を示すこと。
注)「女性活躍推進法」では、従業員301人以上の企業に対し、「男女の賃金の差異」を公表することを義務付けています。さらに、300人以下の企業についても開示義務を拡張することが検討されています。
(3)「均等待遇」を口実にした正社員の賃金・労働条件の引き下げを行わないこと。
(4)ハラスメント防止法を踏まえ、別紙「協定モデル」にもとづき、ハラスメント防止のための制裁処分や相談窓口の設置、被害者の救済措置および再発防止などについて労使協議し協定化すること。
(5)ハラスメントの温床となっている過重労働と人員不足の解消、過剰なノルマ(目標)の設定や成果・業績主義を改善すること。
3.長時間労働を規制する要求
(1)「自分と家族のための時間」の確保とジェンダー平等を実現するために、1日の所定労働時間を7時間30分(すでに実現している場合は7時間)にまで短縮すること。
(2)時間外労働の限度時間を1日2時間・週6時間・月20時間・年間150時間までとすること。臨時的・突発的に、限度時間を超える必要性が生じた場合には、労働組合とその都度、事前協議し36協定を再締結すること。労使の合意のうえ、特別条項を設ける場合であっても、月45時間・年間360時間までとし、限度時間を超える場合は都度、労働組合と事前に協議し同意を得ること。
(3)限度時間を超える場合の割増率を50%以上とすること。
(4)テレワークや在宅勤務などを導入する場合は、労働組合と事前に協議し同意のうえ行うこと。
(5)長時間労働の是正をすすめるために、職場の業務量の実態に見合った人員増をおこなうこと。
(6)人手不足を背景にした業務繁忙で年次有給休暇が取得しづらい環境を改善し、年次有給休暇取得の権利を保障すること。そのためにも、職場の有給休暇取得状況を開示して改善に向けた具体的な協議を行うこと。
4.65歳までの定年延長と継続雇用者の賃金・処遇の改善要求
(1)賃金を引下げることなく65歳まで定年を延長すること。
(2)定年延長を実現するまでの間も、継続雇用者の賃金について60歳到達時の賃金を維持すること。また、特別休暇や住宅手当・家族手当など正社員との均等待遇をはかること。
(3)継続雇用者の無年金期間中の生活と65歳以降の生活に配慮し、60歳到達時の退職金を2,000万円以上に引き上げること。
(4)労働者が65歳以降も雇用継続を希望する場合、選別は行わず、賃金・労働条件、労働環境、働く条件を維持したうえで雇用すること。
5.青年の要求
(1)奨学金を返還している労働者について月々の返還金を支援する制度をつくること。
(2)結婚一時金・休暇、出産一時金・休暇をはじめ青年の要求に積極的に応え、青年が希望をもって働き続けられる職場をめざすこと。
JMITU秋闘統一要求書の紹介
日本IBMの手当廃止は不利益変更か~7月30日、団体交渉で協議
日本IBMの 2025 年 7 月 1 日付の報酬制度改定で、専門職手当、副主任手当が廃止されました。専門職手当は月額 59,000 円、副主任手当は月額41,000 円で、両手当は残業をしなくてももらえていたわけですから、両手当の廃止により、専門職手当をもらっていた人で残業の無い人は 708,000 円の年収減、副主任手当をもらっていた人で残業の無い人は 492,000 円の年収減となります。残業の無い人には主に二通りの人がいます。業務を効率的に行っていて残業をする必要がない人と、仕事外しというパワハラにあっていて業務のアサインが何もない人です。
このように年収が 70 万円とか 50 万円の規模で減少する、これは従業員の生活に大きなマイナスの影響を与えるにもかかわらず、日本IBMはなぜこのような手当廃止を実施したのか、かなりの違和感があります。ちなみに、キンドリルジャパンは、月額 59,000 円の専門職手当、月額 41,000 円の副主任手当を維持しており、従業員の生活への配慮が見られます。
一方で、両手当の廃止後も両手当の金額に相当する残業代がある人の年収は維持されますが、残業時間は人によって異なりますので、専門職手当、副主任手当の廃止によって従業員は年収減になる人とならない人に分かれます。あるいは今は残業代があって年収減になっていない人も、将来残業代が無くなるか減ることで年収減になる可能性があります。残業をしなくてももらえていた手当が突然消えてしまったことで、人によって年収減の有無や規模が異なるという理不尽な格差が生まれています。
組合は、この問題を 7 月 30 日の日本IBMとの団体交渉で協議しました。この日の団交のやり取り(要旨)を以下に紹介します。
7月30 日団交のやり取り(要旨)
組合
専門職手当、副主任手当は、元々はそれぞれバンド7、バンド6という職責に対して支払われていた手当だ。つまりバンド7、バンド6という残業が発生する職務を前提としている手当だ。結果的に残業にならなかったとしても、それは本人が効率的に業務を実施した結果だから、もらって当然の手当だ。この手当の廃止は撤回してほしい。
会社 特に前回お伝えした内容から変更はない。賞与を本給に組み込むことによって時間割賃金そのものがけっこうな割合で増える。
組合 効率的に品質のいい業務をして、それが残業にならなかった人というのは、この手当廃止のマイナスの影響を被ってしまう。損じゃないか。見なし残業代を一方的に削るということは違法性が高い。実際にはこれ世間的にも認められている。そういう例は実際にはある。
会社 この一連の制度改定っていうのはトータルでやっぱり見る必要がある。つまり、今回やろうとしている変更が3つないし5つほどあるので、それら全部を踏まえて収入が、現状と比べて増えるのか否かっていうので見る必要がある。それら全部を含めると基本的には不利益になる社員はいないというのが私たちのスタンスで、よってこれはトータルで見れば不利益な変更とは考えてはいない。
組合 手当を無くしたことによって残業ゼロベースの人であっても年収は下がらないと会社は断定できる計算をしたのか。
会社 基本的には現状維持以上になるという試算。
組合 そこはやったと言い切っているということか。
会社 アセスしたのは事実だ。数字は確認する。
組合 具体的に言うと、残業していない人について制度変更前後の年収比較の数字を確認する、これを持ち帰って次回回答して頂くと。その数字を次回お見せ頂くということで、よろしくお願いします。
JMITU第20回定期大会開催 力強い団結と決意あふれる場に
7月5日JMITUは、第20回定期大会をラパスホール(東京都豊島区)にて開催しました。JMITU役員をはじめ、地本を代表する代議員、傍聴者など約80人が参加しました。大会では25春闘をはじめとする一年間のたたかいを総括するとともに、26年の運動方針を確立しました。
大幅賃上げ実現こそ物価高への最大の対抗策
大会冒頭、三木委員長は、26年度に向けた運動の柱となる重点課題について、参加者に向けて次のように力強く訴えましたま 。ず最初に取り上げたのは、長引く物価高への対応についてです。三木委員長は、「ここ数年の急激な物価高騰に対し、政府の実効性ある対策は見られません。私たちは引き続き、消費税の5%への減税を求めていきます。そして何より、春闘を通じて大幅な賃上げを実現することこそが、物価高から労働者・国民のくらしを守る最大の対抗策です。26春闘では、すべての仲間に大幅賃上げをというスローガンを掲げ、全力でたたかい抜きましょう」と述べ、賃上げこそが生活を守る最も有効な手段だと強調しました。さらに三木委員長は、「若年層の初任給は上がっている一方で、40〜50代のベテラン層の賃金は据え置かれ、深刻な頭打ち状態です。私たちは、すべての世代に対する公平な賃上げを徹底的に追求していきます」と述べ、世代間で広がる賃金格差の是正を目指すべきだと訴えました。
雇用と職場を守るたたかい
次に三木委員長は、企業によるリストラの動きが広がる中で、労働者の雇用を守るたたかいの重要性が語られました。「トランプ政権の関税政策以降、世界経済は混乱を深め、大企業ではリストラの動きが広がっています。しかし、どれだけ企業環境が変化しても、そのツケを労働者に押しつけるようなやり方は断じて許されません。私たちは、現場の声に根ざしながら、雇用と職場を守り、希望ある労使関係を築くたたかいを続けていきます」と強く訴えました。
労働法制改悪を許すな
続けて三木委員長は、現在進行中の労働法制見直しの動きについて危機感を表明し、その阻止に向けたたたかいを訴えました。「現在、厚生労働省では労働基準法の抜本的見直しが進められています。その方向性は、最低限の規制だけを残し、企業が過半数代表との労使協定を結べば、労働条件を自由に決められるようにするという、極めて危険なものです。実質的には企業の都合を最優先にし、労働者保護を骨抜きにしようとしているのです。私たちはこうした労働法制改悪の動きに対し、断固として反対し、全力で取り組みを強化していきます。」
組織拡大を実現しよう
最後に三木委員長は「これらの課題を確実に前進させていくためには、組織の拡大と団結の力こそが鍵です。仲間を増やし、現場の声を広げ、強くて大きなJMITUの実現をめざして、全力で進んでいきましょう」と協調しました。
キンドリルジャパンでシニア・プロフェッショナル社員が正社員に転換、65歳定年に
キンドリルジャパンが2025年4月1日から賃下げ無しで定年を65歳に延長したことは、かいな2458号(2025年1月20日号)1面、2462号(2025年3月17日号)3面でお伝えしましたが、その後、キンドリルジャパンでシニア・プロフェッショナル社員(以下「SP社員」という)が2025年3月1日付で正社員に転換し、65歳定年制が適用されていたことがわかりましたので、その詳細をお伝えします。
SP社員の正社員転換が判明
まず2025年1月6日の65歳への定年延長の発表は、生年月日が1965年4月1日以降のキンドリルジャパン、KJTSおよびKSOKの正社員を対象に、2025年4月1日付で定年を60歳から65歳に変更するというものでした。つまり、この発表によれば、2025年3月31日時点で59歳以下のこれら3社の正社員だけに同4月1日から65歳定年制が適用されることになります。ところが、キンドリルジャパンのSP社員の組合員が2025年3月1日付で正社員に転換し、同4月1日から65歳定年制が適用されていたことが判明しました。
正社員転換者の賃金差額をバックペイ、DC拠出金を是正
そこで組合は会社にSP社員の正社員転換について2025年5月29日の団体交渉で確認、さらにその後も追加で確認しました。これに対して以下の会社回答がありました。
■会社回答(要旨)
2025年3月31日時点で59歳以下の、キンドリルジャパン、KJTSおよびKSOKのSP社員について、全員に正社員転換を希望するかどうかを確認した上で、希望する人全員を2025年3月1日付で正社員に転換させた。正社員転換者の賃金、DC拠出額について以下を実施した。
(1)SP社員賃金と、SP社員になる直前の正社員賃金との差額をバックペイした。
(2)SP社員だった期間のDC拠出金相当額を現金払いした(これはDCに拠出金として入れることはできないので現金で渡した)。
(3)キンドリルジャパンのSP社員のみ、正社員転換日の2025年3月1日に、SP社員になる直前の正社員賃金より2%昇給した。これは、キンドリルジャパンのSP社員が正社員に転換した場合、DC拠出率が従前の8%から(2022年9月以降入社の正社員に適用される)6%に下がるため、年間DC拠出金の減少額をリファレンスサラリーの2%の昇給額で補てんするものである(この補てんはDCに拠出金として入れることはできないので現金で渡した)。※KJTS、KSOKについてはDC拠出率は従前も正社員転換後も6%で変更がないので、KJTS、KSOKのSP社員が正社員に転換した場合、2%の昇給はない。
組合の65歳定年制の対象拡大要求が実現
組合は、会社が2025年1月6日に発表した65歳定年制の対象が、2025年3月31日時点で59歳以下のキンドリルジャパン、KJTSおよびKSOKの正社員に限定されているため、組合は当初から65歳定年制の対象外の人たちへの対象拡大を要求していました会社は、2025年5月29日の団体交渉において、65歳定年制の開始前にSP社員になっている59歳以下の人たちは、65歳定年制の発表によって、先にSP社員に手を上げたために65歳定年制の対象外となるという不利益を被るので、正社員転換を希望する人全員を正社員に転換させたと説明しました。今回のSP社員の正社員転換は、組合の65歳定年制の対象拡大要求の実現です。
第306回金属反合共同行動に団結の声響く 未解決争議の早期解決せよ
6月25日、金属機械反合闘争委員会は、すべての未解決争議の早期解決を求め、第306回金属反合共同行動を展開しました。行動には、日本IBM支部をはじめ、JMITUの各支部・関係労組が参加し、団結した姿勢を力強く示しました。蒸し暑い天候の中、午前中にはノバ・バイオメディカル本社前で抗議行動を実施(左写真)。さらに、昼休みには日本IBM箱崎事業所前で行動を展開(下写真)、参加者は日本IBMに対し、誠実な対応と争議解決への具体的前進を強く求めました。
ノバ・バイオメディカル本社前行動
ノバ・バイオメディカル本社前での抗議行動では、最初に同委員会の小泉副委員長が主催者挨拶に立ち、次のように訴えました。「ノバ・バイオメディカル本社前での行動は、今回で20回目を迎えます。会社から組合への攻撃は、たたかう労働組合JMITUにとって絶対に許せない重大なものです。私たちは、必ずこの争いに勝利します」と力強く語り、闘争への決意を鮮明に打ち出しました。続いて、ノバ・バイオメディカル支部の射場委員長が決意表明に立ち、「この争議を最後の最後まで、そして勝利するその日まで、私はたたかい抜きます」と、揺るがぬ覚悟を込めて訴え、参加者に大きな共感と奮起を呼びかけました。
日本IBM箱崎前行動
ノバ・バイオメディカル本社前での抗議行動に続き、昼休みには日本IBM箱崎事業所前でも抗議行動が展開されました。主催者挨拶に立った同委員会の生熊委員長は、「会社は負けても反省しない。これは非常に問題です。日本の法律など気にせず、やりたいようにやる姿勢だと思います」と述べ、日本IBMの不誠実な姿勢を厳しく批判しました。続いて連帯の挨拶に立ったJMITU日本ロール支部・川田委員長は、日本IBMの定年後再雇用者の賃金問題について次のように訴えました。「日本ロールでは賃上げこそないものの、再雇用1年目は定年時賃金の90%、2年目は80%が支給され、一時金も労使協定に基づいて支給されています。それに対し、日本IBMでは定年後再雇用賃金は月額18万5千円、一時金の支給もありません。これでは生活も成り立ちません。一方、キンドリルジャパンでは65歳までの定年延長が実現し、賃金も維持されています。このような制度が、働く意欲と企業の健全な成長につながっています。日本IBMでは、現役社員の中にも賃上げがない人が多くいる今こそ、賃金水準の底上げが必要です。再雇用者にも最低限の生活が可能な賃金を支払うべきです。そして、こうした問題は裁判や労働委員会ではなく、団体交渉で真摯に協議し、誠実に向き合う姿勢を会社側が示すべきです」と強く訴えました。第306回金属反合共同行動は、厳しい暑さの中でも多くの組合員・支援者が結集し、争議の早期解決と労働者の権利確立に向けて力強く声を上げた一日となりました。すべての未解決争議の全面解決に向けて、今後も団結を深め、粘り強く闘い抜く決意が新たにされました。
JMITU夏ボーナス回答速報 組合員平均昨年を16,773円上回る
JMITU25夏季闘争は、6月27現在、春闘時に妥結済の支部分会を含め全国109支部分会が夏ボーナスの有額回答を引き出し、有額回答の組合員平均は昨年同時期との比較で16,773円上回っています。うちJMITU主要企業の夏ボーナス回答(速報・上位15社ランキング)は昨年を上回る高水準の成果を上げており、日本IBMとキンドリルジャパンは昨年に続きランキング圏内でした(左下表)。また上位15社のうち有額回答が100万円以上の企業は13社となり、速報ベースで2023年の5社、2024年の7社から大幅に増えています(右下表)。
支部分会別では次のような成果を上げています
▼東京西部・超音波工業支部は3回のストを決行、第4次回答715,000円(2.02ヶ月)まで回答を前進させました
▼東京東部・小坂研究所支部は4次回答720,000円(2.30ヶ月)を引き出しました▼東京北部・鈴木シャッター支部では3次回答720,000円(2.57ヶ月)を引き出しました▼東京西部・リオン支部では、1,200,000円(3.55ヶ月)の過去最高額となる回答を引き出しました▼他に埼玉・芝浦電機支部で2次回答1,226,333円(4.00ヶ月)、長野・マグネエース支部で3次回答346,860円(1.25ヶ月)、長野・カネテック支部で3次回答415,444円(1.37ヶ月)、兵庫・福原精機支部で3次回答541,000円(1.90ヶ月)、埼玉・東鋼業支部で2次回答660,000円(1.93ヶ月)を引き出しました。
ボーナス闘争は賃上げ闘争へ
日本IBMとキンドリルジャパンの2025年夏ボーナスの組合推定平均支給額(本体・バンド7以下一般職)がこれまでにない高水準となったのは、以下の組合要求の実現が反映されたためです▼日本IBMが25年7月1日付の報酬制度改定を発表、この中でボーナスの変動部分を廃止し、アニュアル・リファレンスサラリーの総額を支給することとしたこと、改定前の最後のボーナスとなる今夏のボーナスに反映される会社業績達成度を「125」、個人業績率を一律100%としたこと▼キンドリルジャパンが25年からボーナス制度を改定、ボーナスに反映される会社業績達成度を基本「100」とし、ボーナスに個人業績を反映しないこととしたこと。以上の制度改定により両社では年収が固定化されますので、ボーナス闘争は賃上げ闘争に移行していきます。
24年ぶりのベースアップを実現した宇野沢組鉄工所支部のたたかい(連載②)
前号に引き続き宇野沢組鉄工所支部のたたかいを報告します。
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24秋闘で、秋闘要求に合わせて、改めてベースアップを行わないことに固執し続ける会社に対して「公開質問及び要求書」を提出しました。「方針」の撤回とベースアップ実施を要求し、物価上昇率、従業員の生活悪化、製造部門の累積赤字17億円解消までどのくらいの年月を要すると試算しているのか、今後赤字が出た場合これを累積赤字に加える考えか、また、この間の一時金の妥当性を質問。さらに組合への説明の言質を覆す行為に対し、誠実性に欠ける姿勢と考えるか否か、また秋闘回答を毎回文書にて求めているにも拘わらず口頭で済ませる理由と改善を要求しました。
会社は、総務省が発表している物価上昇率を示しながら、従業員の生活悪化については直接回答せず、製造業の中小企業としては一般的水準で、「生活はできると考える」、「初任給の引き上げも実施している」と回答。「方針」の撤回は拒否、この間の利益から累損解消には約11年との試算を回答。製造部門の利益改善は賞与に反映。今後の赤字も累積加算すると回答しました。ベースアップをしない理由を次々に翻す姿勢には言及することなく、文書回答も「回答者である会社が判断」としました。ただし公開質問や秋闘には文書にて回答してきました。24年末一時金も夏に続き2.3カ月が維持されました。残るはベースアップ実現です。「方針」を撤回せず、賞与にて還元することを繰り返す会社の頑なな姿勢をどうすれば変えさせることができるのか。「労働委員会で斡旋団交をやろう。会社が応じなければ不当労働行為救済申し立てで事実上の団交拒否を正してもらおう。」対策会議で何度も話し合いを重ねました。
1月11日(土)から12日(日)に泊まり込みで行った南部地協25春闘第2次討論集会でこのたたかいを報告した際に、助言者として参加していた生熊元JMITU中央執行委員長から「第三者機関の活用も悪いとは言わないけれど、まず全従業員を相手にシール投票を行ったらどうか」という提案を受けました。職場の多数の要求であることを可視化する、これで経営にインパクトを与えることができる。宇野沢組鉄工所支部の対策を担当している私と有馬事務局長は、「これは化けるかもしれない」と考え、支部に提案することに決めました。シール投票で要求の多数派であることを可視化しよう。支部の受け止めは、「組合の垣根を越えて投票してくれるかな」と疑心暗鬼なところもありましたが、とにかくやってみようということになり準備が始まりました。大量のシールをどこで買うか、投票呼びかけのビラ、シールを貼り付ける投票板の準備、正門と裏門、そして自転車・バイク置き場の三か所で同時に実施する為の手配など、組合内で役割分担を行い2月14日(金)の実施を決めました。南部地協25春闘闘争本部会議で他支部からの参加を呼びかけ、雨が降らないことを祈りつつ当日を迎えました。当日は支部6人と南部地協4人(大田地域支部、日本IBM支部、ISB支部)の1名0が3か所に分かれて呼びかけを開始。支部の若手には良い経験となりました。最初は遠慮がちに声をかけていましたが、出勤してくる従組のなかまに肩をたたかれ「ご苦労さん、頑張れよ」と励まされたり、会社方針に「反対、反対、絶対反対」と叫びながら投票してくれるなどなかまの反応は想像以上にあたたかく、終盤には追いかけながら呼びかけるなど自信が湧く行動となりました。組合員対象者が130名弱で、投票結果は当日90票が集まり89名が会社方針に反対、加えて、投票できなかったなかまから「自分も投票させてほしい」と支部組合員に声が掛かり、予定外でしたが食堂に投票板を設置し、さらに6票を集め、最終的に94票の反対票が集まりました。組合は、25春闘の要求団交で「会社方針に反対」が職場労働者の総意であることを会社に伝えました回 。答日が3月5日(水)から会社の都合で6日(木)の午後に変更されました。当日はJMITU第一次統一行動日南部地協リレーストライキで宇野沢組鉄工所支部も16時15分からストライキを決行する予定でした。しかし冒頭で述べた通り、24年ぶりのベースアップ回答が示され、かつ32年ぶりの5ケタの回答を得てストライキを中止しました。回答は異常な物価高騰による実質賃金低下を止めるには十分ではありません。労使の切磋琢磨は今後も必要ですが、ベースアップが実施され一時金が是正されてきた事実は、会社で働き続ける将来展望を持つことができる大きな一歩です。この実績と経験を活かし、組合員を増やし組織建設を進め、さらなる要求実現の足掛かりをつくるために支部とタッグを組んで奮闘することを決意し、たたかいの報告とします
5月28日4次スト決行 日本IBM、キンドリルジャパンは賃上げの上積み回答をせよ
今25春闘は、4月9日の3次ストライキの後、日本IBM、キンドリルジャパンから組合員の賃上げ回答がありました。日本IBMは、春闘要求への3月5日回答で25年の給与調整の詳細は現在検討中のため、現時点でお伝えできる内容はありませんと回答、3月12日の団体交渉では25年は5月1日付で給与調整を実施する予定ですと回答しただけで進展なしでした。続く4月3日の団体交渉でも進展なしでしたが、4月18日に組合員の5月1日付賃上げ回答を行いました。キンドリルジャパンは、春闘要求への3月5日回答で本年7月1日付で給与調整の実施を予定していますと回答、3月12日の団体交渉では進展なしでしたが、5月26日に組合員の7月1日付賃上げ回答を行いました。
組合推定平均賃上げ率日本IBM1.0%、キンドリルジャパン3.2%
今春闘での組合要求がなければ両社の2025年の賃上げそのものがなかったかもしれませんが、3次にわたるストライキを決行した組合の強い要求によって、両社は25年の賃上げ実施日の回答、組合員の賃上げ回答を行いました。しかし、両社の全従業員平均賃上げ率は回答が未だになく分かりません。そこで組合は平均賃上げ率を推定していますが、25年の組合推定平均賃上げ率は日本IBMが1.0%、キンドリルジャパンが3.2%で、今春闘の10%の賃上げ要求にはほど遠い水準です。これでは物価高騰の中、実質賃下げですので、組合は両社の賃上げ回答を不服として、5月28日、4次ストライキを決行、日本IBM箱崎事業所前でお昼休みにストライキ行動(上・右写真)を実施しました。昨年と比較すると、24年の組合推定平均賃上げ率は日本IBMが1.1%、キンドリルジャパンが2.1%でしたので、25年の賃上げは日本IBMが昨年と同水準、キンドリルジャパンが昨年より高水準です。また両社を比較すると、キンドリルジャパンの25年の賃上げ水準は日本IBMの3倍超で、日本IBMよりも従業員の生活への配慮が見られますが、組合の今春闘の10%の賃上げ要求には届きません。
賃上げのたたかいは続く
組合は、引き続き両社に賃上げの上積み回答を要求します。日本IBMには25年の賃上げの上積み回答と、少ない1回分の賃上げを25年に実施することを要求、キンドリルジャパンには少ない1回分の賃上げを25年に実施することを要求します。(少ない1回分の賃上げは、実施されなかった20年の賃上げのことです。)季節は春闘を過ぎ、すでに6月ですが、組合の賃上げのたたかいはまだ続きます。
24年ぶりのベースアップを実現した 宇野沢組鉄工所支部のたたかい(連載①)
今号、次号の2回にわたりJMITU宇野沢組鉄工所支部のたたかいを連載します。筆者は、宇野沢組支部が所属するJMITU東京地方本部・南部地区協議会の小泉隆一議長です。
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2025年3月6日(木)は、宇野澤組鐵工所(社名:旧漢字。以下、会社という)で働くなかまにとって、とてもうれしい日になりました。会社から、約5000円(平均)の定期昇給に加えて、24年ぶりに正社員1万円、定年再雇用社員6500円のベースアップ回答を引き出したからです。
「製造部門の過去7年間分の累積赤字約17億円を解消するまでベースアップの検討はしない」という会社の「方針」を受けた24春闘。そこから一年間、JMITU宇野沢組鉄工所支部(支部名:常用漢字)と南部地協(以下、組合という)は、たたかいの旗を降ろさずベースアップを追求し続けました。
アンケートや一言メッセージで、異常な物価高騰により生活が極めて苦しくなっていることを訴える職場のなかまの声を集め産別団交で会社に紹介し、「方針」表明後は、怒りのポスター掲示、そして「会社表明は事実上の春闘団交拒否の不当労働行為」と指弾し、リレーストライキや東京地本未解決支部激励ストライキを決行してきました。
続く24夏闘、秋闘、冬闘で「第三者機関への提訴も辞さないこと」を表明し、会社に「方針」撤回を迫る産別団交を重ねてきました。そして25春闘で「シール投票」を行い従業員の多数の思いを可視化して会社にぶつける取り組みが決め手となり結実しました。
会社には製造部門と不動産部門の2つのセグメントがあり、長年、不動産部門の黒字が全体収支をカバーしてきた歴史があります。会社には、1970年代に全国金属・宇野沢組鉄工所支部にインフォーマル組織を潜入させ組合を分裂、新たに立ち上げた従業員組合(以下、従組という)に「アメ」政策を続けたことにより生活残業の蔓延など職場統制が崩れ、生産性悪化が進み、製造部門が赤字転落していく暗い過去があります。その後も産業構造の変化、OEM着手による利益率悪化、新システム導入時の混乱での納期遅れ、作業場レイアウト変更での効率悪化が次々に起こり、黒字化への道のりは困難の連続でした。
会社は「製造部門が黒字化すればベースアップも可能」など、製造部門の黒字化がベースアップの鍵だとして、過去20年に亘る団交で定昇のみの回答を押しつけてきました。
赤字が縮小してきたここ数年は「黒字になったとしても、当面ベースアップはしない。一時金で還元する。その際、会社が利益を溜め込むようなことはしない」と言質を後退させました。実際に黒字化した23年冬季一時金は、例年よりも若干上積みし2.0カ月の回答ではあったものの世間並には程遠く、かつ「会社が溜め込むようなことしない」との約束は反故にされました。組合は、23年度製造部門通期黒字化で迎えた24年春闘の団体交渉で、尚も会社がベースアップに応じない頑なな姿勢を続けることに抗議し、黒字化したにもかかわらずベースアップを行わない明確な理由を示すよう追求しました。
すると会社は「過去7年間の製造部門における累積損失(約17億円)を償却完了するまでベースアップを実施しない方針である。償却完了後にベースアップを検討する」との回答に至りました。
これを許せば、製造部門の黒字化を目指し奮闘を続けてきた職場のなかまの努力が蔑ろにされ、定昇だけでは今後十数年間に亘り実質賃金が低下し続けます。組合は、産別団交で「何度も前言を反故にする会社の姿勢は許されない」、「不動産部門の利益により会計上の累損は存在しない。製造部門に限定した累積損失を理由に従業員の厳しい生活を顧みず、過去の累積赤字の責任を従業員に転嫁する経営姿勢を認める訳にはいかない」、「今後の春闘で組合が物価高騰対策や生活改善のために賃金引上げを要求しても、会社がベースアップの検討すらせず拒否し続けることを予告したのは事実上の団交拒否である」と猛然と抗議。妥結せずにたたかいを継続することを宣言しました。
24夏闘では会社から2.3か月の回答を引き出しただけではなく、当面この水準を維持したい旨の表明を受けました。組合から「それは予算の賞与引当金をこれまでの2カ月から2.3カ月に上げると言うことか」の質問に対し、会社が「そういうことだ。収益に多少のブレがあっても維持したい」との応答がありました。
このことは組合がベースアップ実現を追求してきた一つの成果の現れでした。22年夏までの数十年間、2カ月を下回る1.4カ月~1.8カ月が常態化していたことを見れば、改善が進んだことは確かです。しかし、漸く世間水準に追いついてきたというのが職場のなかまの受け止めでした。(次回につづく)
夏ボーナス回答出る バンド7以下一般職推定昨年を大幅に上回る 日本IBM平均1,155,000円 キンドリルジャパン平均1,046,000円
6月10日は夏ボーナスの支給日です。日本IBM、キンドリルジャパンから組合に夏ボーナス回答が出ましたので、全社推計をお知らせします。
両社とも昨年より大幅アップ
日本IBMの2025年夏ボーナスの組合推定平均支給額(本体・バンド7以下一般職)は、115万5千円(2.51ヶ月)、昨夏より15万円の大幅アップでした。キンドリルジャパンの2025年夏ボーナスの組合推定平均支給額(本体・バンド7以下一般職)は、104万6千円(2.22ヶ月)、昨夏より9万8千円の大幅アップでした。
リファレンスサラリーを全額もらえることはほとんどなかった
2024年支払までのボーナスは、変動部分(業績反映部分)が「リファレンスサラリー(RS)×6%×会社業績達成度×個人業績率」という計算式(下図参照)で計算されているために、RSと同額の年収を得るには、会社業績達成度、個人業績率ともに100%でなければなりませんでした。しかし、左表の通り、2024年支払までで会社業績達成度が100%に達したことは2024年支払ボーナスの1回しかないうえ、、個人業績率は毎年変動してきましたので、RSを全額もらえることはほとんどなかったわけです。
組合要求が実現
ボーナスがこのような方法で計算されているため、組合はこれまで会社に対し、年収が安定的に増えていかないこと、また個人業績率が0%など低水準とされた従業員のボーナス格差、年収格差が拡大していることを指摘し、個人業績率に大きな格差を付けないこと、ボーナス制度を改善することを要求してきました。その結果、組合要求が実現しました。まずキンドリルジャパンは、昨年12月27日にボーナス制度改定を発表。この中で2025年から賞与・定期俸に反映される会社業績達成度を基本「100」とし、個人業績は反映しないこと、会社・個人の業績に応じたボーナスは現行のSSP(グローバル共通のボーナスプログラム)だけとすることを発表しました。続いて日本IBMは、今年3月11日に2025年のボーナス支払に使われる会社業績達成度が「125」と決まったことを発表。さらに同13日に2025年7月1日付の報酬制度改定を発表し、この中で賞与・定期俸の変動部分を廃止し、アニュアル・リファレンスサラリーの総額を支給すること、会社・個人の業績に応じたボーナスは現行のGDP(グローバル共通のボーナスプログラム)だけとすることを発表。翌14日には2025年6月支払の賞与・定期俸の個人業績率は一律100%とすることを発表しました。今年の夏ボーナス回答は、上記の組合要求の実現が反映されたものとなりました。従業員の皆さん、組合に加入して年収を増やしましょう。