6.26HDD会社分割高裁判決――会社分割法を廃止させないと解決しない

高裁でも裁判官、会社の代弁

「不利益甘受は当たり前」の判決

6月26日、日本IBMによる会社分割で、本人の同意なく日立GSTへ転籍されたのは違法だとして、JMIU日本IBM支部の組合員10人が日本IBM社員としての地位確認を求めた控訴審の判決が、東京高裁でありました。 青柳裁判長は横浜地裁判決を支持し、大企業の身勝手なリストラを無条件に肯定し、原告の請求を棄却しました。

2008年6月26日・東京高裁判決後の記者会見

2008年6月26日・東京高裁判決後の記者会見

判決は、会社分割で想定される不利益は甘受すべきであり、争うことが出来るのは著しい不利益がある場合に限るとしました。

「不利益無し」で成立した会社分割法のはずが

そもそもこの会社分割法成立にあたっては、2000年5月に国会でJMIUの委員が、この法律は、欠陥だらけの法律で、労働者に対して大きな不利得を生じるのは目に見えているので、見直すべきと強く主張しましたが、労働契約は承継され不利益は生じないということで、成立してしまいました。その後この法律を多くの企業がいいように悪用し、不利益はあきらかとなりました。グッドウィルの日雇い派遣を可能にした法律も同様です。規制緩和の中で問題となる法律がどんどん通ってしまいました。派遣の問題など社会のひずみあらわになって来ているにもかかわらず、高裁の裁判官は、財界や企業の言い分をそのまま判決要旨に引用する始末です。結論ありきで到底公正な裁判とはいえません。現在の日本を象徴しているかのようです。
組合は当日記者会見を開き、声明を発表しました。(別記事に掲載
また、横浜地裁、東京高裁で鑑定書を提出してくださった本久小樽商科大学教授は、判決内容で次のように述べ、怒りを表わにしました。

判決文の内容には、正直、心の底から憤りを感じます。特に「通常甘受すべき不利益」論、同意推定論、法定協議義務の内容論に他方、会社分割の相対的無効論は、はるかに洗練されました。
総じて、あたかも東京高裁の裁判官と議論しているかのような印象を受けました。一行一行、腹立たしい限りですが、メッセージは明確に伝わってきます。

原告の感想

  • 横浜地裁から始まったHDD裁判、また東京高裁と原告として全ての裁判を傍聴し、裁判官が、会社側の主張を事務的に「追認」しているだけなのではないか、という不信感を抱きました。しかし、東京高裁の判決では「追認」どころか「補強」までしている有様です。これは、もう裁判官ではなく、財界「経営者」に近い存在としか言いようがありません。「裁判所が公正中立」などというのは、もはや、幻想にすぎないことを確信しました。今や、これが官僚化した司法の実態です。これでも、日本は法治国家と言えるのでしょうか。民主主義国家と言えるのでしょうか。本当に情けなく、腹立たしい限りです。この怒りを、今後の組合活動の力にしようと思います。
  • 同じ日、70歳以上の高齢者に支給されていた老齢加算金の廃止は「合憲」、とされ生存権侵害みとめず。東京高裁は、年老いた者までいじめを行うのか・・今の世の中、格差社会で強いものは優遇され弱い者は排除される構図が裁判所でも行われているような気がしました。
  • 横浜地裁に続き東京高裁でも「原告の訴えを棄却する」を、またしても聞くとは・・・財界や企業寄りの司法の壁を破るのは何と難しいのであろうと改めて感じた。しかしこんな理不尽がまかり通っていいとは未だに思えません。
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