「偽装解雇」は許されない 解雇の恫喝による退職勧告は違法

「48時間以内に退職勧奨を受け入れないと解雇する」と社員を恫喝している事例について以前の記事でご紹介しましたが、このような会社側の攻撃について、弁護士の方から以下の通りご見解をいただきましたのでご紹介します。重要なメッセージですので、ぜひご覧ください。

■労働契約法16条違反

解雇が許される事情がないにもかかわらず、「48時間以内に自ら退職を承諾しなければ解雇をする。」という上司の圧力は違法にほかりません。解雇が有効であるためには、「客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当である」場合でなければなりません(労働契約法16条)。このような正当な理由がないにもかかわらず、解雇をしても、その解雇は違法無効です。
ですから、解雇できる正当な理由がないにもかかわらず、「48時間以内に自ら退職しなければ解雇する」という通知は、事実上の解雇、いわば「偽装解雇」とも言うべき措置であり違法です。
会社は、就業規則53条2号の「技能または能率が極めて低く、かつ上達または回復の見込みが乏しいかもしくは他人の就業に支障を及ぼす等、現職または他の職務に就業させるに著しく適しないと認められるとき」という条項を根拠に解雇できると宣伝しているようです。この定めは職務遂行能力の著しい低さを根拠にした解雇事由と言えます。
しかし、上記の解雇事由の有無は、裁判所の判例では極めて厳格に解釈されています。5年、10年、それ以上、普通に勤務を継続してきた者が、突然に、上記のように著しい職務遂行能力が低下したというのは、特別な事情がないかぎりあり得ません。人事考課は相対評価ですから、相対的に低評価であったとしても、それだけで職務遂行能力の低下ないし欠如があるとは認めていません。

■人事評価が低いことは解雇理由にはならない

東京地裁は、1999年10月15日、セガ・エンタープライズ事件の決定で、「従業員の中で下位10パーセント未満の考課順位ではある。しかし、すでに述べたように右人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない」と判断しています(労働判例770号34頁)。
このように単なる人事評価では職務遂行能力の欠如で解雇することは許されませんし、しかも、一律にボトム15%を対象として解雇するということができるはずもありません。

■労働契約法3条の労使対等合意原則違反

労働契約法3条は、「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする」と定めています。したがって、使用者ができもしない違法な解雇を、おどしに使って退職に同意させようとする措置は、「対等の立場における合意」とは真っ向から衝突するやり方です。会社の解雇を恫喝に使った退職強要(偽装解雇)は、労働契約法3条にも反しているのです。

■違法な偽装解雇、退職強要は跳ね返せる。

このように会社の退職強要のための呼び出しに対しては、文書で退職する意思がないことを明示しましょう。上司が、それでは解雇をすると言ってきたら、「解雇の理由を記載した文書を示せ」と要求しましょう。会社はこの解雇理由説明書を出さなければ労働基準法違反として処罰されます。会社自身が「無茶な解雇は出来ないこと」を一番、良く知っています。皆さんが解雇の脅しにひるまず、雇用を守るよう決意すれば、会社のリストラを跳ね返せます。労働組合に結集してがんばって下さい。
もし、会社の上司からの呼出や退職強要、解雇の脅しが止まない場合には、裁判所に解雇差止の仮処分という裁判を申し立てることもできます。あきらめずに頑張ってください。

以上、東京法律事務所 水口洋介弁護士より(ブログ「夜明け前の独り言 水口洋介」もご覧ください

4 thoughts on “「偽装解雇」は許されない 解雇の恫喝による退職勧告は違法

  1. チグハグ

    ハイパフォーマンスカルチャーとは社員全体のモラルを下げることを言うのでしょうか?

    高い業績や功績を残した者には、報いると言っていたのではないでしょうか?
    報いた結果が、全社員の昇進と昇給停止ですか?

    退職勧奨と称し特定の人物を呼び出し、実績も見ず、自主退職に追い込もうと一方的に低い評価をし、退職か解雇の選択を強要することがまともな会社のすることですか?

    ダイバーシティ(多様性)を重んじ、障害を持つ社員に対しても積極的な支援策をするとは、リストラのことですか?

    家族や親族に辞めさせるように説得してくれと連絡することがハイパフォーマンスを謳う会社のすることですか?

    言ってることと、やっていることが、チグハグな気がするのは私だけでしょうか?

  2. 通行人

    嫌気を誘って退職者を増やす。アメリカ人の指示に忠実な施策では?w

  3. 通行人

    http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081210/321094/

    1万6000人いる社員の8%に当たる約1300人が応募した。内部目標は最低1000人、最高2000人だった。
    情勢を考慮すると、2009年以降、第2弾、第3弾の人員削減プログラムが発動される可能性は否定できない。「IBMのグローバル基準で考えたとき、日本法人の適正規模は1万2000人」との指摘もある。

    来年以降毎年1000人削減は続きそうですね。

  4. 通行人

    日本IBM社員リストラの前に海外アサイニー(IBM日本支払の)を自国に帰すべきだ!! 全く役に立っていないアサイニーにほぼ日本人1年分の年棒以上に相当する額が1ヶ月のアサイニー費用として日本IBMコストになっているのを削減するのが先である。 早急に自国に帰すべきだ!!!

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。