私どものOBで、現在は「働くもののいのちと健康を守る東京センター」で活躍されている方から、意見募集のお願いが届いております。 ぜひ多くのご意見をお寄せください。宛先は文中にございます。
労災認定における国の非常識に対するSEの意見を募集しています。どうかご協力をよろしくお願いします。
2009年7月1日
ソフト労働における国の非常識への意見募集
大田労災職業病患者会 網野 裕
(金属情報機器労働組合JMIU・IBM支部OB)
メール:(フォームを作成しましたのでそちらからお送りください、確実に依頼人に届きます)
FAX:047-462-2036
目的
私は、日本IBMを定年退職し、現在は、「働くもののいのちと健康を守る東京センター」にてボランティア活動をしています。その中でソフト労働における労災事案を被災者・遺族の立場から支援しています。この私の活動に対するご支援・ご協力をお願いするのが当レポートの目的です。
レポートで取り扱う過労自殺事案は、私が支援している事案の中の一つであり、現在、東京高裁で行政訴訟を国側(労働基準監督署、厚生労働省など)と争っているものです。この裁判所へ要請する文書をお願いすることになります。
事件の経過
大学卒業後、某大銀行のIT子会社に入社した被災者は、SE新人研修でも習得しなかった技術を必要とする最初の仕事で、にわかに、うつ病を発症しました。 その陰には、習得しなかった技術問題の他にも複雑な問題がありました。調べてみると、SEとしては1本の新規バッチプログラム作成で、おびただしい回数のプログラム変更というつらい目にあっていることも、残されたプログラムリストから分かりました。言語はPL/Iです。
被災者は、欠陥のある仕様書を渡されたら、それに基づきプログラム作業に入ったものの、その後の仕様変更があり、それは「後だしジャンケン」のように繰り返されたために、プログラム変更を重ねていたのです。
300ステップにも満たない小さなプログラムですが、それを完成するまでに、なんと、49回ものプログラム変更の跡が残されているのがプログラムから判明したのです。プログラム変更を管理できるライブラリアンを使用していたので判明した事実です。
1年くらいの経験者なら、その程度の小さなプログラムでマトモな仕様書なら、2,3回のプログラム変更で片付くようなプログラムです。しかし学んだこともない技術を利用させられたり、さらに、嫌になるほどのプログラム変更を要求されたりして、急激にうつ病を発症していったのです。
仕事は、納期より遅れて達成したものの、発症後も別の仕事でストレスが続き、うつ病は増悪、入社後半年もしないうちに、とうとう自殺に追い込まれたのが本事案です。
国の非常識な見解
この青年SE(システムエンジニア)の過労自殺事案において、国はソフト業界の常識ともいえる通念にも反するような非常識をさらけ出しています。
「(プログラムの)変更回数は、いわば(ワープロで文書作成中、)保存ボタンを何度押したかというものにすぎず、業務の困難性と比例関係にあるものではない。」と表明しているのです。
ワープロで文書作成する仕事とプログラムを作る仕事とを混同しているのが一つ目の非常識といえます。いわば、ワープロというソフトを作る「ソフト労働」と出来上がったワープロを使う「OA労働」とを国は同一視しているのです。これは根本的な誤りだと、業界の人ならすぐに理解できることです。
そのプログラム作成ですが、完成するまでに何回変更が起こっても、変更による仕事上の負荷はなく、例えあったとしても、それはワープロで文書作成中、保存 ボタンを何度押したかという程度と同じであるという非常識を重ねているのです。プログラムは、普通、一部分でも変更したら、そのプログラム変更が正しく出来たかどうか、必ずテストして確かめます。これが業界の常識ですが、国はこの必須のテスト作業をまったく理解できていないのです。
ワープロで保存ボタンを押してもそれを記録するようなつまらないツールはありませんが、プログラム・ライブラリアンは、当時、プログラムの一行ごとに、その変更回数番号を、ライン番号の後ろのカラムに記録するようになっていたのです。
この非常識ですが国の発案ではなく、IT企業の入れ知恵によるものであることも判明しています。過労自殺を防げなかった問題のIT企業は、自らの損害賠償責任を免れるために、苦し紛れに、業界通念にも反するような非常識な見解を出したものです。当該企業で働くSEがこれを耳にしたらどうでしょうか。まさか、自分の企業が、業界通念にも反するようなことを主張しているとは夢にも思わないでしょう。
その非常識をそのまま国は採用し、裁判所への準備書面の中でそれを開陳しているのです。
皆様へのお願い
うつ病発症による過労自殺の労災認定の場で、まさか、このような非常識が通用しているとは、ソフト業界の人は、おそらくご存じないと思います。このような 非常識を排除し、不幸な事態発生を防ぐために、ソフト労働に対する正しい認識を労働行政に持ち込み、労災認定業務をぜひ正常化したいのです。
この非常識を正すご意見を、IT業界で働く皆さんから、ぜひお寄せいただきたいと思います。システム開発の立場から、保守の立場から、開発計画を立てる立場から、管理の立場から、ご自分の言いたいことをお書きいただければとお願いする次第です。目を覆いたくなるような、体たらくな労働行政のために、精神障害を発祥した被災者が救われていません。どうかご協力よろしくお願いします。
はなはだ勝手ではありますが、裁判の都合上、納期を2009年7月末とさせていただきます。お名前、職場名、職種、略歴などもあわせてお知らせくださると助かります。
以上
ご意見をお寄せくださる方は、「続きを読む」をクリックして、フォームにご記入の上お送りいただくか、または上のFAX番号までFAXにてお送りください。多くの方のご意見をよろしくお願いいたします!
投稿フォーム
いろいろな面でお世話になりありがとうございます。
SE過労死事案で国の非常識に対する意見募集をこのHPで掲載していただきました。
それをご覧になって、ご意見やアドバイスなどのご協力を頂きました。意見やアドバイスは都合8件頂きました。
お忙しい中、なれていない分野での意見書の作成など本当にありがとうございます。
弁護士事務所を通じて、受け取った意見書は裁判所へ提出できたことを報告します。
判決日まであと一ヶ月あまりになりましたが、IT業界の常識を裁判所へ伝えきり、国側の主張の非常識と比較して、公正な判断を求めるために、最善を尽くしているところです。
これからもよろしくお願いします。
2009年8月11日
働くものの命と健康を守る東京センター
大田労災職業病患者会 網野 裕