会社は最近、リストラをはじめ、昇進・昇給の凍結、退職金制度の改訂など、社員にとって不利益となる施策の発表時に、必ず「売り上げが低下した」「目標が達成できなかった」などと会社が「期待した業績」をあげられなかったことを理由としています。しかし、実際にはどうなのでしょうか。
「日本IBMコーポレート・レスポンシビリティー・レポート2009」から実際の数値を抜き出してみましょう。
売上高 | 経常利益 | 税引前当期純利益 | 当期純利益 | |
2008年度 | 1兆1,329億3,200万円 | 1,543億3,100万円 | 1,577億7,100万円 | 967億9,700万円 |
2007年度 | 1兆1,926億1,100万円 | 1,540億4,800万円 | 1,559億8,000万円 | 940億2,100万円 |
2006年度 | 1兆1,932億8,700万円 | 1,390億4,300万円 | 1,313億6,600万円 | 797億9,600万円 |
確かに2008年度の売上高は2006年度や2007年度よりも低下していますが、経常利益や税引前・税引後の当期純利益の額は増加しており、売上高に対する経常利益や当期純利益の比率は2006年から2008年にかけておよそ2%も上昇しています。昨年来の「百年に一度の不況」などどこ吹く風の順調な業績といえます。当然親会社への送金額も、それに比例して増えているものと推測されます。
それにもかかわらず、会社ぐるみで組織的に退職強要を実施して1500人もの社員をやめさせ、昇進・昇給を凍結し、ハイパフォーマンスをあげた社員のコンベンションも停止し、退職金制度改定によって年金資産にまで手をつけるほど経費削減をしなければならないのはなぜでしょうか?
それは、「2010年度に一株あたり利益を10ドルから11ドルにする」というUSのトップマネジメントによる株主へのコミットメントを守ることを最優先となっているからです。そのためには、社員を「ヒト」として扱わないこともいとわず、会社側から見て削れるコストはすべて削ってきています。
コミットメントを達成することで、トップマネジメントは莫大な役員賞与を手にして花道を飾り、あとは野となれ山となれ、知ったこっちゃない、という極めて無責任な経営陣の姿がそこにあります。
日本IBMのマネジメントは、知ってか知らずか、その無責任経営の一端を担い、従業員に一方的に不利益をなすりつけているのです。
退職強要により大勢の社員を傷つけ病気にし退職に追い込んだだけでなく、社員の年金にまで手をつける前に、コスト高な役員・理事を減らし、莫大な生活費がかかる海外からのアサイニーを減らすべきです。