「新型解雇をうちやぶれ! PIPという名のアリ地獄」
11月16日夜、文京シビックセンターにて、「PIP」に関するシンポジウムが新聞労連とJMIU(全日本金属情報機器労働組合)の共催で開催されました。
当日は100人を超える一般参加者と7名の報道関係者が会場に詰めかけ、新型の解雇形態として最近では社会問題にまで発展してきた「PIP」に対する一般社会の関心の高さを示していました。
このシンポジウムの発案者である新聞労連中央執行委員長のあいさつで始まり、PIPを理由として解雇された、ブルームバーグ社の記者からブルームバーグにおけるPIPの実態報告がありました。
株価など金融情報提供サービスを行っている米国資本のブルームバーグでは、PIPを使った社員の解雇が行われ、犠牲となったこの記者は新聞労連の協力を得て労働組合を立ち上げ、会社と闘っています。
PIPの実態報告
ブルームバーグのPIP解雇の特徴は、達成不可能な出稿記事数などの目標設定で社員を追い込む手法は同じですが、最後通告の時点で社員証を取り上げ会社に入ることができなくする点です。その後は自宅待機を命じて、給料は払うが自宅でじっくり退職勧奨について検討してもらいたいと主張します。
この手法は「ロックアウト型退職勧奨」とよばれて違法性が問題視されています。会社は裁判資料の隠滅を狙っているとみられています。
ブルームバーグの実態報告につづいて、IBMからは大岡中央執行委員長より、「業績改善プログラムと闘おう」というタイトルで、IBMでのPIPの実態およびPIPとの闘い方のアドバイスが報告されました。
弁護士・大学教授の報告
IBMからの報告に続いて、IBM、レノボをはじめとする労働問題裁判の弁護団の一員として従業員の弁護に活躍している弁護士からの報告がありました。
PIPによる解雇の法的根拠は労働契約法16条における「労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失」に依拠するが、単に「能力不足」での解雇はできないことが、セガ・エンタープライズ事件の判例(解雇を無効とした)をもとに説明されました。 また、PIPに対抗するために、不当な業務命令であることを早期に抗議して証拠化すること、退職勧奨の言動を可能な限り録音・写真・メモなどの証拠に残すことがアドバイスされました。
続いて、青山学院大学経済学部教授から、解雇自由化要求の歴史的背景と財界・会社側主張に関する経済学的考察が報告されました。
まず、解雇自由化の要求の背景には、グローバル化・労働運動の後退・株式保有形態の変化があり、特にグローバル化が長期雇用慣行の必要性を薄くしたことがある、と説明されました。ただし、雇用側の主張である「解雇規制は雇用に悪影響を及ぼす」という主張に関しては長きにわたって実証分析が試みられた結果、現在でも明確に実証されていないことが報告されました。
会場の参加者より
その後、レノボから解雇撤回を勝ち取ったJMIU Aさんからの発言、日本メドトロニック(心臓ペースメーカーでトップシェアの米国企業)をPIPによって解雇された社員の発言などがあり、活発な意見交換が行われました。
PIPは解雇の道具
PIPには絶対にサインしてはいけません!
PIP=業績改善プログラムは解雇の理由作りのための道具なのです。 「業績改善プログラム」を提案されたら、すぐに組合に相談してください。