退職強要はラインの暴走?
2010年12月20日号に引き続き、IBM退職強要・人権侵害裁判の進捗状況についてお知らせします。先日の記事では、主に裁判の進め方を説明しました。
最初に原告から、裁判を起こした理由、被告への要求を記述した「訴状」を提出して裁判が始まります。
原告の訴状に対して、被告は「答弁書」という反論をまとめた文書を提出します。それに対して、原告が反論の文書を提出します。これらをまとめて準備書面といいます。この準備書面の交換を、公開の法廷で1ヶ月に1回程度の頻度で約1年間続けました。
それと並行して、原告が証言台に立って、自らの心情を述べる「意見陳述」を行い、退職強要を受けたときの悔しさや無念さを証言しました。
この準備書面の交換をとおして双方の主張の差異や争点が明らかになった時点で、ドラマでおなじみの「証人尋問」に移るわけですが、実はその前に「進行協議」という闘いがあります。進行協議では、誰を証人として呼ぶかを決めます。証人尋問のような華々しさはありませんが、裁判の勝敗を大きく左右する重要な局面です。
現在はこの進行協議の終盤にあたることを先日の記事で説明しました。
取締執行役員の証人尋問要求
この裁判では「一部のラインの暴走による、個別の退職強要事件の集まり」なのか「会社ぐるみで行われた退職強要」なのか「退職強要すらなかった」のか、その事実が証人尋問での焦点になると思われます。
そのため、進行協議で、原告側は4人の原告に対して、実際に退職面談を行ったライン(所属長や上長など)を1原告あたり2~3人、申請しました。同時に今回の退職強要が会社の組織ぐるみの違法行為であることを証明するため、組合の委員長と当時の取締執行役員も申請しました。
それに対して会社は、いきなり、人事のライン担当を証人として申請を行い、取締執行役員よりも、この担当が証人になるのが適切であることを訴える「陳述書」が、裁判所に提出されました。
2008年のRAプログラムは、全国の数千人のラインを巻き込んだ大掛かりなものです。人事のライン担当が主導出来る規模のプログラムとは思えません。
裁判官は「証人尋問の結果、人事ライン担当だけでは不十分と判断したら、原告から申請のあった取締役執行役員らを証人として追加採用することもある。」としています。
私たちは、証人尋問で退職強要が「会社の組織ぐるみ」で行われたことを証明する所存です。