退職強要許す異常な判決
東京高裁に控訴 |
2011年12月28日、東京地方裁判所民事19部の渡邉和義裁判官は、JMIU日本アイビーエム支部の組合員4人が日本IBMを相手取って提訴した退職強要・人権侵害裁判において、全面棄却の判決を下しました。
判決内容は、社会通念や常識に反し、裁判官個人の主観の入った、証拠に基づかない結論ありきと思える不当なものであるため、原告は、そうそうに東京高裁に控訴しました。
◆会社と社員が対等?◆
渡邉和義裁判官は、会社と社員が対等の力関係であることを前提にし、退職強要を、「タフな交渉である」と言い、判決文では「説得活動」としました。また、希望退職者募集は一切なく、隠密に行われた事実上の指名解雇であるにも拘わらず、これらの証拠に則った事実を無視し、日本IBMの「成績下位10~15%の労働者を追い出す」という企業文化(ハイパフォーマンスカルチャー)を容認し、人員削減は経営の自由としました。
企業利益の最大化のための人員削減であるにも拘わらず、退職強要された社員が会社に残るのは悪だと言わんばかりの判決内容です。このような「判決」は、公平・公正さが最も求められる裁判所に対する信頼を大きく揺るがすものであり、高裁での是正が絶対に必要です。
◆地裁判決是正を◆
原告側は2012年1月10日に東京高等裁判所に控訴しました。もし、高裁が、労働者と労働組合に対するあまりにも偏見と敵意に満ちたこのような判決を是正できないとすれば、「裁判は死んだ」と言わなければなりません。
このままでは、あまりにも経営の自由を認めすぎるものであり、企業の中は無法地帯になることは明らかです。東京高裁に対しては、あらためて証拠、証人を採用し、審理を尽くし、地裁判決を是正するよう要請します。
上記の会社利益と社員数のトレンドを比較したグラフは、会社が行った人員削減は経営悪化を立て直すために行われたのではなく、十分な利益を出している会社がさらに利益を出すために行った、強欲な人員削減であったことを示しています。 |
●IBMの特異な企業文化(ハイパフォーマンス・カ ルチャー)をそのまま受け入れ、経営的必要のない退職勧奨を正当化した。法的な裏付けのない判断をした。 ●優遇された退職条件があれば、退職強要の条件が緩和されるとした。 ●労働者の「退職しない」という明確な意思表示にも「会社の認識」というハードルを作った。 意思表示が明確にされた後でも「翻意する可能性」があり、会社の説得活動が可能であるとした。 ●労働者と経営者(上司)という「支配された特殊な関係」の認識が無く、圧倒的な力を背景にした会社による「タフな交渉」を是とした。 ●裁判官の推測により、密室において上司が不当な発言をするはずが無いという一方的な判断をした。 ●裁判官は退職強要を断った報復としてPIPが行われた事実を切り捨て、推測により不当行為が無かったという判断をした。 ●裁判官は証拠として提出した退職強要面談の録音内容を歪め、原告に不利な解釈をした。 ●退職強要の結果、体調を崩して呼吸困難になり、点滴を2日間に渡って受けた原告の被害を裁判官はまったく取り上げなかった。 |