現在、会社はPBC低評価者に対してPIP(業績改善プログラム)を強要していますが、そもそもPBC評価が公平、公正におこなわれているのでしょうか。組合は、いかに評価の中身がいい加減であるかを会社が作成した人事資料をもとに紹介します。
この資料は、2010年の夏、組合に部門の人事戦略に関する資料が、匿名の人から提供されました。その内容は、リストラ実施の企てともとれるショッキングなもので、人員の削減実績や今後の予定数、メンタル疾患者数の推移、PBC評価の割合など多岐にわたっています。
今回は、その中からPBCの評価付けそのものが公平、公正とは無関係におこなわれてきていることを紹介します。
この資料には、PBC評価について一般職の詳細は書かれていませんでしたが、理事・執行役員については具体的に書かれていて一般職も同様と考えられます。
◆ボトム15%退職勧奨リストに◆
まず、日本IBMの評価制度は相対評価です。理事・執行役員が20人いれば、ボトム15%の3人に低評価がつく計算になります。その資料では、驚くことに5月の時点で「理事・執行役員の人数比から、当部門で1名の低評価者を出さなければならない。」と論じていました。5月といえば、PBCの目標設定直後であり、評価期間の半分も過ぎていません。PBC評価がいかにいい加減であるかの証明です。
さらに低評価候補者として「レッドサークル」に属するA氏、B氏、・・と具体的な名前も記載されていました。「レッドサークル」とは「エグゼクティブの退職勧奨リスト」です。ボトム15%に入った時点で、退職勧奨リストに載せられるということです。
資料では、低評価対象者は「翌年2月に定年退職予定のC氏が良い」と結んでありました。
確かに翌年2月に定年退職予定の社員なら、その社員の経済的損失も周囲の軋轢も少ないのでしょう。しかし本来の評価者でもない部門人事の人間が、PBC評価を5月の時点で決めるなど許されることではなく、評価の方法も問題です。
この資料はPBC評価がいかに恣意的に決められているかを明確に示すとともに、会社のコスト削減目標のための人員削減計画にそって低評価の割合およびリストアップが個人業績とは関係なくおこなわれていることを証明しています。
◆証拠を閲覧制限に◆
組合はこの資料をIBM退職強要・人権侵害裁判の証拠(甲56号証)として、東京地裁に提出しました。すると会社は在籍中の原告3名(木村団長は2010年5月に定年退職)と組合の委員長に対して「甲56号証は不正競争防止法でいう営業秘密であり、公開した場合、懲戒処分にする」と内容証明郵便を送付してきました。
さらに東京地裁に対して、甲56号証の閲覧制限を申立ててきました。(注:日本の裁判は公開が原則であるため、証拠も一般の人が閲覧可能です。したがって提出された証拠を一般の人に閲覧されたくない場合は、今回のように「閲覧制限」を申立てる必要があります)
それに対して、組合側弁護団は会社の閲覧制限の申立てについて「営業秘密を理由とする閲覧制限については相当でなく反対する」旨の意見書を提出しました。
しかし東京地裁は昨年12月28日の不当判決と同時に、甲56号証が営業秘密に該当するとして閲覧制限を認めました。
本来は、この資料をそのままお見せし、人事施策の裏側をなまなましく紹介したかったのですが、組合は甲56号証本体の公開は避け、「かいな」において、内容の引用に留めて、この記事にしました。