ブルームバーグは、経済・金融情報の配信、通信社・放送事業を手がけるアメリカの総合情報サービス会社です。この会社でも、日本IBMの業績改善プログラムと同様のPIP(成績改善計画=パフォーマンス・インプルーブメント・プラン)が行われており、成績が改善されないことを理由に解雇者が出ています。
現在、このPIP悪用による解雇撤回を求めて、解雇された元社員がブルームバーグを訴えた裁判が行われています。
2012年5月16日、東京地裁802号法廷において、証人尋問が行われました。証人尋問には、解雇された原告の松井さん、被告側証人としてブルームバーグから所属長と上長が証言台に立ちました。
傍聴席は約45席ありましたが、すべて埋まりました。この事件の関心の高さが伺えます。
今回の裁判では、主に次の3点についての尋問が行われました。
①問題があると判断した社員に対する所属長の指導の有無とその方法
②目標の設定と評価の妥当性
③解雇の判断の妥当性と手続き
法廷でのパワーハラスメント
被告側弁護人による原告への尋問では、法廷の場にもかかわらず、松井さんの人格を否定するなど、パワーハラスメントとも思える攻撃的な質問や発言が多く目立ちました。松井さんの成果物の品質を被告側弁護人が独善的に判断して裁判官へ訴える場面もありました。
解雇の理由を説明できない上司
目標を量で設定させたにも関わらず、その結果を質で評価していることの理由について、裁判官は質問しました。これに対し、所属長と上長は合理的な説明ができませんでした。
また、解雇の判断理由の一つとして、所属長は「原告が所属長の指示に従わないことを繰り返したから」としています。これに対して裁判官は、「なぜ、指示を業務命令にしなかったのか」「なぜ、解雇の前に懲戒するなどの手続きを行わなかったのか」と質問しましたが、これに対しても会社側からの説明はありませんでした。
不当解雇は許さない
報告集会では、原告側代理人の今泉弁護士は、「会社は金銭解決を望んでいるが、原告は解雇撤回のため徹底的に闘い勝ち取る姿勢である」とコメントしました。IBM退職強要・人権侵害裁判原告団長の木村さんは「自分の裁判を思い出し、痛みを感じながら聞いていた。相手側弁護士の発言には人権侵害と思えるものがある」と会社側の法廷侮辱に対する憤りを伝えました。原告・松井さんは「ロックアウトされて証拠を集められずに苦労した。証拠を集めるために、証券取引所に通いつめた。それ以外はインターネットで集めるしかなかった。今後は厳しい結果になるかもしれない。しかし、ブルームバーグを許してよいのかというのもある。皆さんのことは忘れません。これからも応援をよろしくお願いします」と今後の決意を表明しました。
ブルームバーグの解雇事件は、他人事ではありません。PIPは社員を退職に追い込むためのツールです。PIPと言われたら、即組合にご相談ください。