10月15日、東京地裁への普通解雇撤回を求める提訴の後、原告団は裁判所内の司法記者クラブと厚生労働省記者クラブの2カ所で記者会見を開き「不当解雇撤回裁判にあたっての声明」を出してIBMの普通解雇の不当性をマスコミ各社に訴えました。
◆「業績不振」に疑問◆
記者会見には、並木弁護士、三木JMIU中央書記長、杉野IBM支部書記長と3人の原告が出席しました。まず並木弁護士が訴状を示して、解雇撤回と給与・賞与の支払を求めた裁判であることを説明しました。特に会社が「業績不振を理由とした普通解雇である」と言っているにもかかわらず、「期日までに自己都合退職を申し出れば、解雇予告を撤回し、割増退職金を支払う」と但書きしていることを指摘し「業績不振」の正当性に疑問を呈しました。
◆ロックアウト型解雇の強引さ◆
杉野IBM支部書記長は解雇の状況および会社の状況を説明しました。終業時間30分前に面談に呼びつけて解雇予告通知書を淡々と読み上げ、17時36分までに退去するよう通告することや、CASカードやノーツIDを直ちに停止して事業所から締出し、メールも使えないようにする、ロックアウト型の解雇の強引さを訴えました。
◆計画された整理解雇◆
さらに、これまで例のなかった普通解雇がわずか3ヶ月間で組合が確認しているだけでも11人も集中して出されたことや、このロックアウト型解雇を引合いに出して自己都合退職を迫るラインがいることから、組織的に計画された整理解雇であることを説明しました。
3人の原告はそれぞれ、解雇通知を受けたときの無念さや悔しさ、夜中の3時、4時まで眠れず不眠に悩まされていること、将来への不安を口々に訴えました。
◆裁判避け但書きか◆
マスコミからは「なぜ解雇のような(裁判を起こされる可能性がある)面倒なことをするのか。他社のように希望退職ではダメなのか」という質問が出されました。
三木JMIU中央書記長は「IBMは二十数年来、希望退職募集を行っていない」こと、「希望退職は何度も面談を行うので手間がかかる。解雇通知なら1回十数分で済む」こと、「裁判を起こされないために『割増退職金付の自己都合退職』の但書きがついている」と答えました。
さらに最初に解雇された組合員にはこの但書きがなく提訴の意志を強く示したため、それ以降の解雇通知書には但書きをつけた可能性を示唆しました。
◆解雇自由化を許すな◆
またブルームバーグのPIP解雇裁判で解雇無効判決がでたこととの関連で質問が出ました。それには「PIPのように解雇理由を詳細に説明した解雇でさえ無効である。解雇理由を全く説明していないIBMの解雇には合理性が完全に欠けている」と答えました。
最後に「IBMは破廉恥事件で辞任した最高顧問が言ったように『リストラの毒見役』を自認している。このような違法な解雇を許せば、解雇自由化につながり他社にも同様の違法な解雇が広まるであろう。」と訴えました。
司法記者クラブでは20名の記者とテレビカメラ、厚生労働省記者クラブでは十数名の記者が取材に来て、盛況のうちに記者会見を終えました。