残業代裁判で和解成立
組合では退職強要・人権侵害裁判とロックアウト解雇裁判の他に、残業代裁判を闘ってきましたが、2013年1月23日に東京地方裁判所にて和解が成立しました。和解調書に口外禁止条項があるため詳細をお伝えすることは出来ませんが、原告2名にとって十分納得のいく内容でした。以下はその経緯です。
本社事業所在勤の組合員のAさん・Bさんの2名は、組合加入前の2008年から2010年にかけて、過労死水準を遥かに越える時間外労働を行っていました。異様な長時間労働のため、Aさんはメンタル疾患を発症し、現在も週1回の通院を余儀なくされています。しかし当時の所属長の圧力のため、時間外労働手当を請求することはほとんど出来ませんでした。
2010年2月に組合は二人へのインタビューをとおして異様な時間外労働と、二人が始業時間・終業時間を記録していることを知りました。そこで中央団体交渉で、会社に残業実態の調査を求めました。その後、会社は所属長を通じて、二人に時間外労働手当の請求を指示しました。
二人の請求に対して、会社は2010年12月に「時間外労働を行ったことは認める」として、一方的なロジックを作成して請求額の一部を支払いました。しかし組合はこれに納得せず、未払金全額の請求を行いました。
■東京地裁へ提訴■
組合の再度の請求に対して会社は「これ以上の支払いは応じられない」と支払を拒絶しました。さらに二人が所属長の圧力のため、e―Attendanceに実際の残業時間を入力できなかったにもかかわらず、「会社は勤怠を正しく報告するよう求めているのにAさん・Bさんは従わなかった」と言いがかりをつけてきました。時間外労働手当を正しく請求できている社員がいったい何人いるのでしょうか?
会社の不誠実な態度にこれ以上の交渉は無駄であると判断した組合は、未払の時間外労働手当の支払を求めて2012年4月に東京地裁に提訴しました。
裁判の中で会社は(退職金を除く)労働債権の短期消滅時効2年が既に成立していると主張してきました。組合側弁護士は2010年12月の支払で一部弁済が行われ、「時効の中断」があったため、時効が成立していないと反論しました。
また会社は二人が記録した始業時間・終業時間メモが手書きであることから「信頼性に欠ける」と指摘しました。
さらに所属長に強制されて入力した「e―Attendanceの9時~17時36分の所定労働時間の記録が正しい」と主張しました。組合側弁護士は、e―Attendanceに入力された労働時間が所属長に強制されたものであることを指摘し、会社が使用者として労働者の労働時間を管理する義務を怠っていると反論しました。
双方の主張を聞いた裁判所は和解を勧告してきました。裁判所の和解案を元に交渉し、1月23日会社と和解が成立しました。
■サービス残業を許さない■
組合は、会社が社員にサービス残業を強制することを許しません。所属長の有形無形の圧力で、時間外労働手当を請求出来ない場合でも、始業・終業・休憩時間は必ず、正しく入力してください。そうすれば長時間労働によるメンタル疾患発症の証拠となるだけでなく、あとで時間外労働手当を請求できる可能性があります。年俸制や裁量労働制の社員も同様の理由で、e―Attendanceは必ず実態どおりに入力してください。
組合は今後も中央団体交渉や労働基準監督署への申告、裁判などあらゆる手段を駆使して、サービス残業をすることのないように闘っていきます。