会社は2月1日付けで「シニア契約社員」制度と「シニア・プロフェッショナル」制度を発表しました。これは4月1日付けで施行される改正高年齢者雇用安定法に対応するためのものです。
しかしその内容は、組合が要求する「65歳までの定年延長」とはかけ離れた貧弱なものでした。ここでは特に問題が大きい「シニア契約社員」制度について検証します。
組合は「シニア契約社員」制度について、以下の①~③の三つの問題点があると考えます。
①月給17万円では生活できない |
「シニア契約社員」制度では週5日勤務でも一律月額17万円(年額204万円)の処遇となります。60歳代の夫婦二人に必要な収入はJMIUの調査では月額28万円といわれています。年金支給年齢が60歳から引き上げられる状況も合わせ考えると、全く足りません。
さらに勤務日数は「社員と雇用部門の合意に基づき定めます」とあります。会社が「週3日勤務」と指定すれば、週3日しか勤務出来ないと考えられます。週3日勤務の場合、月給は10万2千円になります。これは東京の一人暮らしの生活保護水準を下回ります。
厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」で「賃金について高年齢者の生活の安定などを考慮し」とありますが、そのような考慮がなされていないことは明らかです。
②業務は60歳より前とは異なる |
「想定する業務」は「これまで社外に委託していた仕事や部門で発生するサポート業務など」になっています。会社は「本人が60歳より前に行っていた業務とは異なる」と明言しています。社員のこれまでのキャリアを全く無視しています。
週5日勤務で月に23日勤務した場合は、時給は1000円を下回ります。まだまだ元気な60歳の社員を、学生アルバイト並みの時給1000円の業務につけるのですから人材の無駄遣いです。
それでも会社は「業務内容を考慮して月額17万円の処遇を決定した」と主張しています。会社が高年齢者の有効活用を本気で考えているとは考えられません。
③PBCで契約解除も |
会社は「シニア契約社員」は「PBC評価対象。ただし、他の社員との相対評価はしません」としています。「シニア契約社員」の処遇は、週5日勤務で一律月額17万円と決まっており、「諸手当、賞与およびGDP・インセンティブは対象外です」としていますのでPBC評価による処遇の差はないことになります。
ではなぜPBC評価を行うのでしょうか。契約更新条件に「就業規則の解雇事由、退職事由に該当する場合は更新しません」とあります。これはPBC低評価の場合この条件に抵触し、65歳までの契約更新がされない可能性があることを示しています。
また相対評価ではないということは、何人でもPBC低評価をつけられます。会社の業績が悪い場合、多くの「シニア契約社員」の契約を更新しないという操作が出来るということを意味します。
これらを考慮すると、会社が60歳以上の高年齢者の雇用を本気で確保しようとしているとは考えられません。改正高年齢者雇用安定法に対応するために制度だけは作ったが、本当に社員が応募するとは期待していないと思われます。
それでも「シニア契約社員」になった人は安い給料で使われて、会社業績が悪化すればすぐに雇用を打切られる不安定な身分におかれるという、社員にとって非常に不利な制度ということです。
高年齢者雇用の安定を
組合は2月28日の中央団体交渉で「4月1日から、この制度がはじまるが応募者は何人いるのか」質問しました。会社の回答は「ゼロではありません」という極めて不誠実なものでした。極めて少ないものと思われます。
前出の厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」では、「希望者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること」とあります。 組合は、「シニア契約社員」制度が有効に活用されているかを監視し、改善を求めていきます。高年齢者の雇用の安定のために会社への働きかけを続けていきます。