ここがおかしいILC

ここがおかしいILC
  PBCは長時間労働が高評価
  プロジェクトでは短時間を入力

 サービス部門所属の社員のPBC目標設定に、ILC稼働率が入っています。この「稼働率目標」がいかに欺瞞に満ちたものであり、社員の生活を破壊するものであるか、検証します。

健康と生活を破壊する稼働率目標

 サービス部門では所属社員の有償稼働率が部門の実質的な売上とみなされるため、社員は稼働率目標を達成することが強く求められます。
 GBSでは、稼働率目標は90%で、分母は休日も祝日も無視した年間40時間×52週です。週末と国民の祝日およびIBM年末年始休日だけ休み、有給休暇を1日もとらずに週38時間働いた場合でも稼働率は88%であり、目標に達しません。
 GBSのガイドラインには、年間の祝日/休暇として29日(うち有給休暇15日)を勘案しているとありますが、祝日の日数計算が間違っており、実際には有給休暇は10日分しか算入されていません。勤続25年以上の社員の場合、有給休暇は年に29日付与されるにも関わらず、その1/3しか取得できない目標設定なのです。
 有給休暇を取得し、会社の求める研修や部門会議など有償稼働率に算定されない活動にも参加するには、長時間残業が不可欠となります。そもそもの目標稼働率設定が、社員が健康でワークライフバランスのとれた生活を送ることを考慮していないのです。

部門とプロジェクトの板挟み

 部門の売上は所属社員が長時間働くほど上がりますが、逆にプロジェクトにとってはメンバーが長時間働くことはコスト増を意味します。コストが増えれば当然利益は減り、PMの評価は下がります。プロジェクト・メンバーの作業時間を適正に管理するのもPMの重要な仕事なのです。
 ところが現実のプロジェクトでは、工数は予定より膨らみ、要員は不足し、プロジェクト・メンバーは過重労働を強いられています。PMは、メンバーの労働時間を実際に短くするのではなく、短く見せかけること、すなわちILCを少なくつけさせることを指示します。メンバーは、所属長とPMからの相反する要求を突きつけられます。その結果、PMに嫌われてプロジェクトをリリースされ、稼働率が0%になるという最悪の事態を回避するため、PMから割り振られた工数通りの数字をILCに入力することを選択してしまいます。

二枚舌の会社施策

 会社はガイドラインや研修でFLC(稼働実績通りのILC入力)の徹底を求めてはいますが、社員の労働時間を正しく把握するための具体的な施策はなく、掛け声だけです。裁量労働制を適用し、社員がどんなに残業をしていても無視し、万一ILCの不正入力が発覚した場合は、現場のメンバーを処分するだけで、問題の本質は放置されたままです。

そもそもおかしい有償稼働率目標

 プロジェクトにおいて、予定された工数を超えた作業が発生しても、そのコスト増加分をお客様に追加で請求できることはまずありません。当初の契約金額の中で最大の利益をあげるには、労働生産性をあげ、短い時間で作業を完了させることが一番有効です。サービス部門が有償稼働率の目標値を掲げ、長時間働いた社員の評価を高くするというのは、根本的に間違っています。成果主義を掲げているにも関わらず、PBCでも稼働率の高さ、すなわち労働時間の長さばかりが評価され、労働の質については評価されにくいのが現実です。
 プロジェクトにおいて過重労働が横行している背景には、このように長時間労働を是とする会社の体質に問題があります。
 組合では、不当に高い稼働率目標を設定し、個人の稼働率を評価に結び付けることに反対しています。また、社員がワークライフバランスのとれた健康な生活を送れるように、適正な労働時間の管理を行うための具体的な施策の作成と実施を会社に求めていきます。

- 現場の声-
◇ プロジェクトにフルアサインされ、残業もしていたのに、あとになって「プロジェクト・コストが足りないので0.5人月で勘弁してくれ」とPMに言われた。その結果、見掛けの稼働率
が低くなり、稼働率が目標に達していないことを理由にPBCで低評価をつけられ、賃金減額された。

◇ 新入社員研修でFLCの重要さをとくと聞かされたので働いた分の時間を正確にILCに入力したら、PMに「空気を読め」と怒られた。

◇ PMからは「予定されている時間を超えて作業する場合は事前に申請してください」と言われているが、申請書を書くだけで大変でとてもやっていられない。なかなか認めて貰えず交渉にも時間がかかる。結局誰もそんなもの出さずに黙って深夜まで残業しているが、ILCは週40時間しかつけていない。

 

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