シフト勤務者の裁量勤務を撤回
-組合が会社の違法行為を正す-
スペシャリスト認定を受けた途端、本人への説明無しにいきなり裁量勤務に変更され、しかもプロジェクトではシフト勤務についていたAさんの事例をご紹介します(なお、組合員の場合は重大な労働条件の変更の場合、本人への説明の前に組合との合意が必要となります)。
Aさんの場合はシフト勤務についているのに裁量勤務を適用するのはおかしいとして組合が団体交渉にて会社と協議した結果、会社はAさんの裁量勤務を撤回し、さらに後日変則勤務手当も認めました。
いきなり裁量勤務に
Aさんが5月分のeーAttendanceを入力しようとしたところ、いつもと違う画面になっていることに気がつきました。確認したところ、いつの間にか裁量勤務が適用されていたことがわかりました。
組合が1回目の団体交渉でこの理由について質問したところ、会社の回答は「Aさんは、5月1日付でスペシャリスト認定され、それを所属長から通知してある。」とのことでした。しかし、裁量勤務への変更は重要な労働条件の変更です。組合が労働条件の変更が事前に説明されていないことを問題視し、さらにAさんの勤務状況を確認したところ、Aさんは早番・遅番のあるシフト勤務についており、勤務開始・終了時間が決まっていることがわかりました。
シフト勤務ではそもそも働き方に裁量がありませんから裁量勤務を適用することはできません。組合はAさんの所属長がどういう経緯で裁量勤務を適用したのか、さらに調査するよう要求して1回目の団体交渉を終えました。
ラインをきちんと指導せよ
2回目の団体交渉で、会社はAさんに対して5月に遡及して裁量勤務適用から除外することを回答しました。組合がAさんはプロジェクトで働いているため、同じプロジェクトで他にもシフト勤務につきながらも裁量勤務で働いている人がいるかを質問したところ、会社はまだ調査していないと回答し、この問題について回避する姿勢をとりました。
さらに所属長にどのように指導したかを会社に質問したところ、口頭で「オイオイ、それは無いだろう」と言ったと回答しました。
組合は他の社員も含めて重ねてこの問題を調査するよう会社に要求し、さらにラインに対してもきちんとした指導をするよう要求して2回目の団体交渉を終えました。
裁量勤務制度とは
裁量労働は、「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に適用できる」とされています。
適用できる職種に「情報処理システムの分析又は設計の業務」が含まれるため、IBMではITスペシャリストに裁量労働としての裁量勤務制度が適用されることが多いのですが、勤務形態が正しく本人の裁量でできるようになっているかどうかはきちんと点検する必要があります。
裁量勤務制度の適用が残業代や変則勤務手当の削減を狙っていることは明らかですが、そもそも残業代を正しく申請できる雰囲気が社内にあるでしょうか。組合に入れば安心して残業代を申請することができます。ぜひともおかしいことは「おかしい」と言えるよう組合に加入することをお勧めします。
勤務時間管理は大切
裁量勤務制度が適用されていると、つい自分の勤務時間を記録することがおろそかになりがちです。しかし、これは大変に危険です。もし長時間労働の影響でメンタル疾患を患っても、それを証明することができず、労災申請が難しくなってしまいます。この機会にご自分の勤務状況を点検し、勤務時間の記録も始められてはいかがでしょうか。