PIPは安全配慮義務違反【団交報告】
-メンタル疾患者への提示は違法-
PIPが始まっていることは前号でお知らせしました。ところが、あろうことか、産業医の経過観察中であるにもかかわらず、所属長がメンタルヘルス疾患者に対してPIPを提示したという驚くべき事件が発生していたことが7月7日の団体交渉で明らかになりました。この事件の詳細を以下にお知らせします。
労働契約法の安全配慮義務とは
労働契約法では、その第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」との規定を設け、使用者の労働契約上の安全配慮義務について明文化しています。
最近はメンタルヘルス疾患者が急増していることから、安全配慮義務の中身としてメンタルヘルスを重視するようになってきています。
今回の事件の場合、休職から復職し、産業医による経過観察が続いている社員で起こりました。
メンタルヘルス疾患者
PIP提示の問題点
メンタルヘルス疾患者に対しては心理的負荷を極力かけないようにする配慮が求められます。
PIPの問題は、改善目標が未達成であった場合のアクションとして「1.降格とそれに伴う減給」「2.職務の変更」「3.所属変更(他部門への異動)」が実施されることがあると記され、さらに「会社が就業規則に基づく対応を排除するものではありません」とし、就業規則第45条(解雇事由)に基づく対応、つまり最終的には解雇を想起させる記載があることです。健康な人が読んでもこれらの記述は脅迫そのものです。
このようなものをメンタルヘルス疾患者に提示すれば、かなりの心理的負荷をかけることになります。
あわや生命に関わる大事件
今回の事件では、PIPを提示された社員は血圧計が振り切れて測定不能となるほど血圧が上昇し、医者に駆け込みました。一歩間違えば命を落とすところです。
次の日からはメンタルヘルス疾患が悪化し、その社員は抑うつ感、不安感、焦燥感、冷や汗、動悸、めまいに苛まれ、出社することができなくなりました。
この社員が主治医の診断書を取得したところ、「うつ病」が悪化したことがわかりました。
厚労省が平成23年に定めた精神障害の心理的負荷の認定基準によれば、この事件のような場合、PIPによってもたらされた心理的負荷は「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行」(負荷の程度Ⅲ)と評価されます。程度Ⅲとみなされれば、客観的に精神障害を発症させるおそれのある強い心理的負荷に該当するとされ、安全配慮義務違反となります。
違法PIPはすぐに組合に連絡を
安全配慮義務違反が疑われるPIP提示をされたら、すぐに組合に相談してください。自らの生命を守る権利が、みなさんにはあるのです。