解雇の実態はあまりに粗雑
-第3次ロックアウト解雇裁判 最終意見陳述-
第3次ロックアウト解雇裁判は2013年6月にロックアウト解雇された原告4人がたたかっています。2016年9月27日、東京地裁第611号法廷で原告2名と組合側代理人の穂積剛弁護士が最終意見陳述を行いました。
穂積弁護士は1989年入社の元IBM SEです。IBMの実情を熟知している穂積弁護士の説得力ある意見陳述に、裁判長も聞き入っていました。以下に穂積弁護士の意見陳述要旨を掲載します。
排除しなければならない者は誰もいなかった
労働者において本当に成績や能力に著しい問題があり、そのことによって日常業務の遂行にすら支障を来すほどに至っているのであれば、そうした労働者を除外してほしいとの要望は、業務の現場からこそ上がってきて然るべきである。おそらく裁判官の方々は、そうした事案をこそ多数取り扱っておられるのではないだろうか。
ところが、今回の3次訴訟での4人の原告についてはもちろん、これまでの1次2次訴訟においても、現場の声として「この人を何とかしてほしい」との切実な要望が出されたことはただの一度もない。認識している限り、被告の証人ですら「この人には辞めてもらわないと現場が困る」と述べたことはなかった。本当の意味で、職場から排除しなければどうにもならないところにまで至っている被解雇者など、誰もいなかったのが実態だったのである。
PIPの機械的対応
その代わり被告がやったことは、単純にPBC「3」が2年以上続いた労働者から「選別」して、突然トップダウンで解雇予告しただけである。
PBC「3」が続いたので上司らは形式的にPIPを実施しているが、それは被告の指示に従ってやっていただけで、真に業績改善を目指したものでもなかったし、まして解雇を回避するために努力を尽くしたものなどではなかった。何しろPIPをやった上司たちは、解雇予告のことなど直前まで知らされていなかったのである。
このように、現場の意向を無視してトップが勝手に「解雇」に突っ走った結果、どういうことになったか。その乖離は、被告のあまりにちぐはぐな対応と、根拠の欠如した解雇理由の主張にとてもよく表れている。
原告らの何倍もの「被害者」たち
解雇事案において、解雇直前の経緯が最も重要であることは当然だが、本件ではその内実はどれもあまりに粗雑である。
結局はこれが、現場の意向とは関係のないトップダウンの解雇であること、言い方を変えれば本件解雇の本質が「リストラ」の一環に過ぎないことにその根本原因がある。
それでも本件原告らは、争うことができただけでもまだ不幸中の幸いだったかも知れない。これほどまでに粗雑で乱暴な解雇によっても、争うこともできず退職に応じざるを得なかった何倍もの労働者たちがいたのである。
裁判所におかれては、原告らの背後に大勢の声なき被害者がいたことまで思いを馳せたうえで、本件事案の本質を見据えた最終的な判断に臨んでいただければ幸いである。
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原告4人全員の勝利を確信して、第3次ロックアウト解雇裁判は結審しました。判決は来年3月14日16時から同法廷で言い渡されます。第1次2次ロックアウト解雇裁判同様、組合は全員の勝利を確信しています。
穂積弁護士の陳述のとおり、本件解雇の本質が「リストラ」である限り、会社が解雇を何回繰返しても裁判の結果は同じです。
組合は残る第4次、第5次を含めて全てのロックアウト解雇裁判に勝利し、原告全員の職場復帰を目指して、最後までたたかっていきます。
■今後の裁判スケジュール