シニア契約社員の待遇改善を要求

 

シニア契約社員の待遇改善を要求

-週3日勤務で手取り1万円の例も-

 
 日本IBMの「シニア契約社員」制度は、2013年4月1日付「高年齢者雇用安定法」の改正に伴い、それまでの「シニアエキスパート」制度に代えて導入されました。法律の趣旨に従い、60歳定年後の雇用継続を希望する社員に対し、暦年(1~12月)を単位とする単年契約の契約社員として、最長65歳の誕生日の月末まで勤務可能としています。勤務日数は「雇用部門と本人との合意」に基づき、週3日から5日とし、給与は週5日勤務で月額17万円を基準として、勤務日数に応じて支払われる仕組みです。諸手当や賞与、退職金などは支給されません。

当初の給与は厚生年金の支給が前提

 会社はシニア契約社員の給与について「想定される職務の重要度・位置づけに基づき、新たに給与を設定しました。設計にあたっては、60歳以降社員が受け取る企業年金や公的補助、法律改正の目的である厚生年金の支給分なども加味し、社員の生活面への影響を十分に考慮しました」(w3・シニア契約社員のFAQより)としています。しかし実際には、昭和30年生まれ以降は62歳まで厚生年金の二階部分が出なくなったため、その間はシニア契約社員の賃金がほぼ全収入となります。そのため、これでは到底生活できません。
この記事は、実例を交えて現状のシニア契約社員制度の問題点を明らかにし、待遇改善を要求するものです。

厚生労働省の指針

 厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の実施および運用に関する指針」(平成24年11月9日厚生労働省告示第560号)によると、継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、「継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること」(努力義務)とされています。

他社と比較すると

 シニア契約社員の給与を他社と比較すべく「週刊現代」10月29日号の特集「50歳すぎて、60歳すぎて『得する会社』『損する会社』」を見てみると、「有名100社」として取り上げられている会社では、再雇用後の月収はおおよそ定年前の4~5割減となるところが多く、月収が20万円未満になるところはほとんど見当たりません。しかも大企業よりも中小企業が圧倒的に多いJMITUの会社の中でも、下位から3番以内にはいるほど低いものです。「週5日フルタイム勤務で月収17万」がいかに少ないか、がおわかりいただけるでしょう。ちなみに、年間休日120日として時給に換算すると約1096円となり、東京都の最低賃金(時給932円)の二割増しにもならない低水準です。

手取り1万円の実例

 さて、今年60歳になり、「週3回勤務」とされたAさんの手取り額はどうなっているでしょうか。表の通り、給与10万2千円から住民税、雇用保険料と健康保険料、介護保険料および組合費(給与の2%)が控除されると、手取りはわずか1万円あまりとなりました。一人の生活費すら賄えないこの賃金では、まさに「IBMで働いていながらにしてワーキングプア」状態です。

Aさんの手取収入

 

会社が一方的に勤務日数を決定

 Aさんは、シニア契約社員になるに当たり、週5日勤務を希望しましたが、会社はAさんにアサインする業務を絞った上で、週3日勤務でこなせる量だとして週3日勤務しか認めず、会社が一方的に勤務日数を決定する状態が続いています。これは法律や厚生労働省の指針にも反するものです。Aさんはこう語ります。「日本IBMのシニア契約社員制度は、その収入だけでは生活が成り立たないものになっており遺憾。生活できる賃金になるよう制度改善が必要。これが日本IBMという有名な会社での再雇用の実態です」
 組合は、秋闘要求の中でシニア契約社員の待遇を大幅改善し、月額給与を週5日勤務で31万円以上に、また賞与も支給するよう要求しています。現在シニア契約社員で勤務中、あるいは今後シニア契約社員になることを考えていて、会社の待遇に不満のある方は、ぜひ組合にご相談ください。

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