【告発】 このままでは会社が消滅?
-会社が秘密裏に減資、株主資本が半減-
前号に続く「日本IBMの昨年度業績」分析の第二弾です。なんと、昨年度の利益処分(株主総会)で資本金が300億円減額され、これと「その他利益剰余金」などを合わせて、株主資本がほぼ半減していることが分かりました。この結果は、日本IBMのオペレーションにどう影響してくるのでしょうか。
株主資本半減で安全性に「かなり問題」
前号では異常に高いPTI(税引前純利益)について報告しましたが、この額1996億円にほぼ相当する1905億円が株主資本から減少しました。この結果、株主資本の金額は2015年末の3791億円から2016年末には1886億円とほぼ半減し、総資産(負債・純資産合計と等しい)に対する純資産の部の比率は49.1%から一気に減って26.8%となりました。一般的な日本の会社と比較しても、「安全性にかなり問題がある」と言わざるを得ない財務状況です。これらをまとめたものが上表です。
株主配当のための減資
一般的に「減資」は業績が悪化し累積損失が出ている企業が、資本金とこの累積損失とを相殺するために行います(このほかに節税のための減資もありますが、これは大企業には当てはまりません)。このタイプの減資では手持ち現金が減ることはありませんが、今回の減資はこれとは明らかに違うものです。
これは親会社への「配当」のための減資であり、親会社に儲けをゴッソリ現金で持って行かれたことを意味します。そのうち、手持ちの現金・預金などから出し切れなかった分が「借入金」の純増として計上されています。その金額はおよそ1100億円あまりと見られ、これも「支払利息(営業外費用)の純増」につながるほか、将来的に日本IBMの業績を圧迫する要因になる可能性があります。このように子会社の財務的な安全性が損なわれるのは、管理会計側からの経営分析の視点では「あってはならないこと」です。ROE(株主資本利益率)や一株あたり利益が大幅に向上したとしても、これでは経営不安が増大する弊害の方が遥かに大きくなります。
「預け金」は何のため
また資産の部で急増した「預け金」はあまりなじみのない勘定科目ですが、基本的には「従業員に預けた、あとで精算の必要があるお金」または「短期での資産運用のために委託したお金」がこれに該当します。増加分およそ1100億円は、あとで精算の必要があるお金とは考えにくく、その目的が極めて不自然です。リストラ費用の短期運用でなければいいのですが。
通常業務にも影響が
前号2面に「無理な外部発注禁止をやめよ」と題した記事を掲載しました。その理由がキャッシュアウト抑制のためとされていることと、親会社への配当などにより日本IBMの財務状況が圧迫されていることは符合します。このような施策の結果、協力会社がIBMからの受注を避けるようなことになると、通常の業務にも影響が出ることになりかねません。
これはもはや「日本IBMの経営の危機」と言っても過言ではありません。組合はこの問題についても引き続き会社を追及していきます。