2020年11月6日、組合は日本IBMが定年後再雇用制度である「シニア契約社員制度」の待遇格差を求める団体交渉に誠実に応じないとして東京都労働委員会に不当労働行為の申し立てをしました。
シニア契約社員の処遇問題では、2020年4月1日に賃金格差の損害賠償を求めて組合は東京地裁に集団訴訟を起こしています。これで、裁判と労働委員の2つでシニア契約社員の処遇について争われていくことになり、待遇改善の取り組みに拍車がかかることになります。
裁判と労働委の違いは
裁判所は個人の救済を求めての争いになるのに対し、労働委員会は労働組合の救済を求めての争いになります。例えば集団訴訟の方の裁判で勝てば最終的に原告一人ひとりに損害賠償金が支払われます。これに対し労働委員会の場合、申し立てる主体は労働組合です。労働委員会で勝った場合は会社に対して労働組合を守るような行政命令が出されます。
今回の定年後再雇用の賃金差別事件の場合、個人の賃金差別がパート有期雇用労働法に照らし合わせて違法な状態であることはもちろん、労働組合としてこの間行ってきた賃金交渉に対する会社の態度が違法な状態だったことから、裁判と労働委員会の2つで争うことになりました。
使用者に説明義務
パート有期雇用労働法では、使用者は非正規労働者から求めがあれば正社員との間の待遇の相違の内容及び理由を説明する義務があります。これは、労働者個人として説明を求めても、労働組合として説明を求めても有効です。
しかし、労働者個人が説明を求めても、現実には会社の力の方が圧倒的に強く、相手にしてもらえません。泣き寝入りしている労働者が多いのが現実ではないでしょうか。
もともと労働者が会社と交渉するための組織としてあるのが労働組合です。労働組合として説明を求めれば、会社も説明せざるを得ません。
説明しない会社
ところが、日本IBMは組合がパート有期雇用労働法に従って、具体的に指名した正社員とシニア契約社員の、待遇の相違の内容及び理由を文書で説明することを拒み続けました。
さらに、純粋な賃金交渉と見た場合であっても、日本IBMは「適切な運用がなされているとの考え」であり、これが全てだとする返答を繰り返すばかりでした。これは「団体交渉を正当な理由なく拒むこと」に該当し、不当労働行為として禁止されています。さらに労使協定にも違反するため、労働組合法7条違反として申し立てたものです。