日本IBMジョブ型リストラ 正社員1000人削減か

 IBMが来年末までをメドに全世界でインフラストラクチャー・サービスの分社化を進めているのは既報の通りですが、ここにきて人員削減が表面化してきました。ヨーロッパでは1万人の人員削減が進められており、完了は来年半ばまでかかることが11月25日に報道されました。
 日本IBMでも広く退職勧奨が行われており、すでに組合に多くの相談が寄せられています。ヨーロッパとの対比で日本の人員削減規模は千人と推測されますが、会社は人員削減とは言わず「パフォーマンスマネジメントの一環」だと言っています。労働組合と協議し、まともなやり方で人員削減を進めているヨーロッパに比べ、日本IBMのやり方には多くの問題があります。

組合への相談状況

 11月に入るとすぐに退職勧奨についての相談が入り始めました。そして11月12日に山口社長が「変化を恐れず、未来へ向けて前進する」と題した社内発表をした途端、悲鳴に近い相談が一斉に組合に押し寄せました。これまでのところ以下の部門で退職勧奨が行われています。
・ブランド営業部門
・マーケティング部門
・GBS部門
・TSS部門

ジョブ型リストラとは

 日本IBMでは成果主義をベースに各従業員のジョブ定義をもとに上司が成績を評価し賃金やボーナスを決める方法を取っています。賃金テーブルといったものはありません。これをチェックポイント制度と呼んでいます。
 問題は評価が上司の一存で決められるため、パワハラの温床になっていることです。「パワハラ3点セット」すなわち、「パワハラ低評価」「パワハラPIP(業績改善プログラム)」「パワハラ賃下げ」はあまりにも有名です。
 今回の人員削減ではこの仕組みが悪用され、本来は会社の責任で進められなければならない人員削減が、従業員個人の自己責任として進められています。現在行われている退職勧奨の典型的なパターンをご紹介します。
1.突然「あなたのキャリアについて面談したい」と申し入れられる。
2.面談で「あなたの仕事は無くなる」あるいは「あなたの働きぶりに問題がある」と言われ、他社に移るキャリアを、つまり退職勧奨をされる。
3.会社を辞めない旨を伝えると「1週間後に面談をセットするからIBMでどういうキャリアを描くのか教えてくれ」と言われる。
 そもそも当該従業員がこれまでやってきた仕事を命じたのは会社です。その仕事が必要無くなるのなら、新たな仕事を命じれば良いのに、さも自己責任であるかのように他のキャリアを探せというのは本末転倒な話です。「働きぶり」に至っては何の根拠もありません。

組合員には協定を発動

 組合員については、すでに協定に基づいて団体交渉を申し入れています。この協定に従い、会社は組合員の労働条件や処遇に関することについて組合と団体交渉で協議しなければなりません。もちろん、退職勧奨もその範疇に入ります。安心してください。

ジョブ型の導入に警鐘

 コロナ禍で在宅勤務が広がり、評価に困った多くの企業でジョブ型評価システムの採用が進められようとしています。
 しかし、ジョブ型は従業員の仕事を固定化させ、成果主義による一方的な査定を許し、リストラを容易にさせる評価システムであることが分かってきました。
 日本IBMの状況は安易なジョブ型の導入に警鐘を鳴らしています。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。