日本IBMグループ、キンドリルジャパングループ、共に同じ就業規則が適用されるため、年次の賃上げは9月1日付です。ところが、前日の8月31日の土壇場になって「現在のIBMのビジネス環境等を考慮し、実施を見送る」と会社が発表した件について、組合は秋闘一次要求で当該発表の撤回を求め、その回答日である9月29日に団体交渉を行いました。以下にその内容をご紹介します。
誠実に説明せよ
組合 回答では「IBMグループのビジネス環境等を考慮した結果、実施を見送っております」とのことだが、もう少し具体的な説明が欲しい。
会社 昨年はこうでした、今年の1Hはやりました、9月1日付の就業規則は認識しているが、コロナ禍も続いていて不透明なビジネス環境であり、9月1日付で色々なことが起きている。しかしながら社員へはちゃんとコンペンセーションしていきますよ、ということだ。
組 ビジネス環境のところを具体的に説明してほしい。
会 ビジネスも、お客様の状況はコロナで苦しいだろうし、IBMとしても成長という意味ではアウトスタンディングというかそういう状況でもない。キンドリルもあるだろうし、そういう様々なものを包括してという意味だ。
組 2020年度の業績は悪くなかった。昇給を実施する原資はあると思う。まったく出せない状況とは違い、金庫にはお金はあると思う。
会 金庫が空だからやりませんなどとは言っていない。
組 ルールを持っているのではないのか。
会 昇給に関しては利益何%以上ならというルールは無い。
組 日本IBMの給与の競争力が下がっている。他社では去年の春闘は消費税が2%上がったこともあり、空前の賃上げブームだった。それに対し、日本IBMはその年の9月にやらなかった。今年の5月に遅れてやったからやっと周回遅れで追いついた。この9月にやらなかったら、競争力はますます下がる。
会 5月にかなりリワードできているので、9月は見直そうという判断だ。
就業規則を守れ
組 就業規則違反にならないのか、考えなかったのか。
会 就業規則違反ではないと社員には説明している。
組 ビジネス環境が不透明なのでやりません、と言えばそれで済むと思っているのか。
会 きわめて異例、特異な例だ。コロナがこんなに長引くとは思っていなかった。一種の特別な判断だ。簡単にそう決めたわけでもないし、本当に真剣に考えた結果で、極めて特異な例だ。
組 特異な例として社員に説明を尽くすべきだ。
会 誠意の受け止め方は人それぞれだ。これが会社の精いっぱいの説明だ。
組 9月は見合わせたが、給与調整を遅らせて実施する可能性はあるのか。
会 来年の9月までお預けか、ということについてはまだわからない。簡単に9月の昇給を経営判断でやめよう、ということではない。
組 持ち帰って、いついつには賃上げを予定しますと、代替案を持ってきてもらわないといけない。それが最低の誠実さだと思う。
会 例えば12月1日昇給とか約束はできないが、9月1日にできなかったことについて重く受け止めて、代替案のようなものを模索できるか持ち帰りたいと思う。
組 就業規則というルールを、労働法の中でどう位置付けられているのか、法の中の観点で検討してほしい。
会 検討を持ち帰りたいと思う。