みんなで考えよう 労働時間の短縮で人間らしい生活を

 JMITUは残業削減を含めた一日の労働時間を正面にすえ「本格的な労働時間短縮闘争に挑戦しよう」と提起しました。
 今、若者を中心に「働き過ぎを何とかして」「自由な時間が欲しい」という切実な声が上がっていること、そして日本の労働組合がその声に十分に応えきれていない現状があるからです。
 労働者のいのちとくらしをまもるという責務をもつ労働組合として、なんとしても日本の長時間労働を改善したいという提起なのです。

健康で文化的な生活とは

 憲法25条には「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。では、「健康で文化的な生活」とはどんな生活のことでしょうか。物質的な豊かさ=貧困がないことは「健康で文化的な生活」の絶対条件です。しかし、それだけでは不十分です。絶対に欠かせないもの、それは自由な時間です。自分や家族・恋人との時間、友人たちとの交友の時間、スポーツや音楽・趣味などができる時間が必要です。物質的な豊かさがあり、さらに自由な時間が十分にあって初めて「健康で文化的な生活」といえるのであり、「自由な時間」は憲法で保証された基本的人権です。ところが、日本の労働者の多くは「健康で文化的」とは程遠い生活を強いられています。その原因が労働時間が長いことです。
 実際、日本の長時間労働は世界的に見ても異常です。フランス1420時間、ドイツ1305時間、スウェーデン1424時間、オランダ1365時間などに対し、日本の労働者の年間総労働時間は、1706時間(パート労働者含む)で、EU諸国と比べ日本の労働時間は年間300~400時間も多く、日本の労働者はEUの労働者より年間2~3か月も多く働いているのです。

1日7時間・週35時間が世界の流れ

 8時間労働を定めたILO第一号条約が採択されたのは1919年。いまから100年以上も前です。ILO条約とは国際的な労働基準を定めた条約のことです。
 ILO第1号条約は工業における労働時間は「交替労働、不可抗力による残業により特定日に8時間以上働かせる場合でも3週間の平均が1日8時間・1週48時間を越えてはならないとしています。EU諸国ではすでに1日7時間・週35時間労働が流れです。フランスの法定労働時間は週35時間です。ドイツは「1日8時間、もしくは平均週48時間(1日の上限は10時間)」が法定労働時間の規定ですが、産別組合の力の強いドイツでは、さらに短い労働時間が全ての企業に適用されています。ドイツの金属産業の労働時間は週35時間です。ちなみにフランスでもドイツでも法定労働時間を越えて働かせると罰金刑が課せられます。世界の労働時間は1日7時間・週35時間労働が流れであり、さらにその先を目指しているのです。

労働時間が長いのは日本人が勤勉だから?

 「日本の労働時間が長いのは日本人が勤勉だから」という人がいます。しかし、江戸時代の職人は4日働いて1日休む習慣があったそうです。農村部でも冬の間は湯治に行くなどしてゆっくりと過ごし、農繁期の9か月間でも30日くらいは仕事をしない日がありました。昔の日本人は意外にゆとりのある生活をしていたのです。
 そのくらしが変化していくのが明治時代です。「富国強兵」の掛け声のもと、労働者の働く時間がまたたく間に長くなったのです。

労働時間短縮でいのちと健康をまもる

 日本の労働時間の特徴のひとつは、無制限な残業が蔓延していることです。長時間残業はときに過労死という悲惨な事態を引き起こしています。過労死根絶のためにも長時間の残業を削減することは重要です。
 過労死の主な原因である脳・心臓疾患になる最大のリスクは、睡眠・休息時間の不足です。1日の睡眠時間が十分にとれなくなると脳・心臓疾患のリスクが急速に高まります。厚労省は月の労働時間が200時間を越えると過労死のリスクが高まるとし、1日の所定労働時間を8時間、月の残業時間の上限を45時間と定めています。ところが労働基準法には「特別条項」という規定があって、臨時的な特別の事情があれば、年間720時間、単月では100時間までの残業を認めています。
 月100時間の残業とは、この状態で亡くなると、ただちに過労死に認定される「過労死ライン」です。
 JMITUは、時間外労働において、1日2時間・週6時間・月20時間・年間150時間、特別条項は原則結ばないという統一要求をかかげ、時間外労働の削減をすすめていきます。さらに特別条項の廃止などの労働基準法の改正を求めています。

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