5月16日に証人尋問
AI不当労働行為事件の証人尋問が5月16日に東京都労働委員会で行われます。組合側は大岡義久中央執行委員長、会社側は中村充範元人事労務担当が証言を行います。
AIによる賃金査定や人事評価をめぐる日本で初めての労使紛争です。
所属長のサポートツール
2019年8月、日本IBMはAI(ワトソン)を賃金査定に導入しました。会社は、AIの学習データや、AIが所属長に示す情報の開示・説明を拒否しており「AIが所属長に示す情報は、社員に開示することを前提としていない」「あくまでマネージャーの判断をサポートするツール」だとの主張を繰り返しています。
昇給判断に影響
会社資料によるとAIは「市場におけるスキルの多寡」や「主たる業務の専門性」など40種類のデータを使っています。さらにこれらを「スキル」「基本給の競争力」「パフォーマンス」「キャリアの可能性」を評価し、賃金提案するとしています。これはあまりに抽象的説明です。
また、所属長は部下の賃金を「何%上げる」までAIから提案を受けています。さらにIBMのAIの営業用資料には、マネージャーはAIが示すレコメンデーションに従う傾向にあると説明されています。このことから賃金決定をする所属長の判断に大きな影響を及ぼすことがわかります。
AIの説明を会社が拒否
AIを導入しようとするのであれば、AIへはどのようなデータを入力し、AIはどのようなアルゴリズムで、出力は何か、所属長はそれをどう使うかなど組合にしっかり説明し協議することが不可欠です。この事件は、ここが問題になっています。組合からの要求に対し、会社が誠実な回答をしないまま運用を強行し続けることは大変に危険です。
ハイリスクAIに分類
EU(欧州連合)では、2021年4月に公表したAI規制法案で、人の安全や権利に影響を及ぼすリスクが高いAIを「ハイリスクAI」と分類し、適切な透明性確保を義務付けようとしています。これには、採用・昇進の決定、業務分配・業績評価等のために用いられるAIが含まれます。これは組合が要求している内容と同じです。