従業員軽視ここに極まる
日本IBMとキンドリルジャパンの定年後再雇用制度となる「シニア契約社員」は月給17万円のみ。賞与も家族手当も住宅手当等、一切の手当はありません。
一方、東京都の最低賃金は時給1041円です。これをシニア契約社員の1ヶ月の労働時間に当てはめてみましょう。就業時間は1日7.6時間です。この3月は労働日数22日ありますので、22日X7.6時間X1041円を計算すると、17万4千55円になります。つまり、3月の月給は最低賃金で計算した場合にくらべて4千55円不足することになります。これは最低賃金に満たない金額ということになり、最低賃金法違反になります。
最低賃金制度によれば、会社が最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。さらに、会社が地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
組合はこれまで再三にわたって、この3月には東京都の最低賃金を下回ることを会社に警告し、給与引き上げを要求してきました。そもそもシニア契約社員は単年度契約なので、今年1月の契約更新の時点で契約給与を引き上げる必要がありましたが、会社はこれを怠り、漫然と同じ契約内容を押し付けていました。
会社はついに最賃法違反を犯しました。外資系と言えど日本社会の一員です。このようなCSR(社会的責任)を軽視する経営姿勢は直ちに改められるべきです。
【訂正記事】
かいな第2402号(2022年3月22日発行)2面記事「IBM・キンドリルついに最賃法違反従業員軽視ここに極まる」において、2022年3月は、日本IBMとキンドリルジャパンのシニア契約社員の月給17万円を労働日数22日の労働時間(=7.6時間×22日=167.2時間)で割った時間額が、東京都の最低賃金1041円を下回るため、最低賃金法違反になる、という内容を報道しました。
しかし、月給制の場合には、月給を年間労働時間の月平均で割った時間額が最低賃金以上であれば違反ではない、という法解釈(厚生労働省見解)が出されています。従って、上記の記事内容は、契約期間が1年の月給制である両社のシニア契約社員には該当しません。最低賃金法違反という報道は訂正させて頂きます。
シニア契約社員の月給については、キンドリルジャパンは2023年1月から19万円に是正しましたが、日本IBMはいまだにまったく是正していません。いずれにしても両社のシニア契約社員の賃金は業務の内容に照らして低すぎる賃金であり、生活できるレベルではないため、引き続き是正を要求していきます。
尚、上記の法解釈(厚生労働省見解)については、組合は、月給制であっても一月でも地域別最低賃金を下回れば最低賃金法違反とすべきであると考えます。
(かいな2420号[2023年2月20日発行]2面に掲載)