定年後再雇用賃金差別
不当労働行為を認定都労委で全面勝利命令!
全面勝利命令にあたっての声明
1.東京都労働委員会は、本日、日本IBMシニア契約社員の労働条件交渉を巡る不当労働行為救済命令申立事件に関して、日本IBM(以下「会社」)及びキンドリルジャパン(以下「キンドリル」)の対応が誠実団体交渉義務に違反する不当労働行為に該当するとして、救済命令を発した。
2.会社は、2013年4月、改正高齢者雇用安定法に対応して、定年退職後に雇用継続を希望する社員を65歳まで雇用を継続する「シニア契約社員」制度を設けた。しかし、シニア契約社員の賃金(月給)は、担当業務を問わず、月額一律17万円と当時の最低賃金違反すれすれの低賃金とされ賞与も支給されず、正社員の退職前給与の約2割に減額されるという著しい待遇格差が生じた。この待遇格差の理由について、会社は「シニア契約社員が担当する業務の重要度・困難度を勘案し決定した」と回答するだけであった。組合は、会社に対し、各シニア契約社員が担当する業務は全く異なるうえ、定年前とほぼ同じ業務をしている者もいるのに何故給与額が一律17万円になるのか、各シニア契約社員が担当する業務の重要度・困難度を具体的にどのように評価したのか、比較対象となる正社員の業務とは何か等について、資料を提出して具体的に説明するよう求めた。これに対して、会社は何ら資料を提出せずに従前の抽象的な説明を繰り返すのみで、具体的な説明を全くしないという不誠実な対応に終始したそ。こで、組合は、2020年11月、シニア契約社員の労働条件の根拠を具体的に説明すること及びポスト・ノーティスを求めて、都労委に不当労働行為救済命令を申し立てた。
3.都労委は、次のとおり会社及びキンドリルの対応を不当労働行為と認定した。「会社は、17万円という給与金額の算定根拠や、制度導入以来それが変わっていない理由については、抽象的な説明をするだけで、資料に基づいた具体的な説明等」を行っていないとし、「組合らは、長年にわたりシニア契約社員の処遇改善を会社に要求し、社会情勢や定年後再雇用を取り巻く環境の変化に応じて、会社に改善すべき根拠を示してきており、本件団体交渉においても、シニア契約社員の給与が低いことなどについて根拠を示した上で、パートタイム・有期雇用労働法の説明義務に基づく具体的な説明を求めていたのに対し、会社は、組合らの質問に応じた具体的な説明や回答を行わず、従前と同様の抽象的な回答を繰り返していたのであるから、…(中略)…団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たる(2面に続く)
(1面から続く)と言わざるを得ない」として、「シニア契約社員をバンド3に位置付けて給与額等を決定した理由、シニア契約社員と正社員との待遇の相違の理由、シニア契約社員制度導入以降給与を据え置いている理由を具体的に説明するなどして、誠実に応じなければならない」と命じ、本社内の見やすい場所での文書の掲示を命令した。また、キンドリルに対しても、会社分割したとしても不当労働行為責任を承継すると判断したものである。
4.本命令は、会社がシニア契約社員のような非正規社員の低廉な賃金等についてその具体的根拠を説明しないことの不当性を明らかにした点で大きな意義がある。また、本命令は、パートタイム・有期雇用労働法が禁止している正社員と非正規社員との不合理な待遇差を是正するためにも誠実な団体交渉が重要であることを示すとともに、非正規社員から正社員との待遇差の説明を求められた会社は待遇の相違の内容・理由を具体的な根拠を示して説明しなければ同法14条の説明義務違反となり不誠実団交につながることを示した点でも大きな意義がある。5.組合は、会社及びキンドリルに対して、中労委に再審査を申し立てずに団体交渉で誠実に対応し、シニア契約社員の待遇格差の改善を図ることを強く求める。また、本命令は、事件当事者である両社だけでなく全ての使用者には、非正規労働者の待遇格差是正要求に対しては、誠実団体交渉義務があることを明らかにしたものである。現在の春闘での非正規社員待遇格差是正の前進につながる命令である今。後も組合はシニア契約社員をはじめとする非正規社員の労働条件改善のため全力を尽くす所存である。以上