かいな2446号でご紹介したレイバーノーツ大会に参加した生熊茂美JMITU特別顧問の手記の続編です。
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最も印象に残ったこと
4月18日から24日の日程で、シカゴで開催された「レイバー・ノーツ大会」に参加してきたが、最も印象に残ったことは、資本主義の最先端であるアメリカでの労働運動、階級闘争の生きた姿を見たということである。
前提として共有しておきたいことは、アメリカでは労働者の30%の賛同で、労働組合結成の認証選挙をおこなうことができ、過半数の支持を得て公式の団交権、労働協約締結権が獲得できるという法制度となっていることがある。また最近の前進の典型として、昨年秋からたたかわれたUAW(全米自動車労組・「改革派」が執行部を占めた)による、三大自動車(GM、フォード、ストランティスー旧クライスラー)の工場においてストライキでたたかい、4年半で25%の賃上げ、「二階層賃金」(リーマンショック以降雇用された労働者の差別的低賃金)廃止などをかちとった経験がある。この前進に励まされ、労働組合の組織化が困難で過去2回労働組合結成に失敗していた南部テネシー州のVW工場での労働組合結成に成功した。三大自動車労組のメンバーからの具体的な報告などを聞いて、私は、アメリカの労働組合運動の要求実現の基本的な力はストライキであって、「力と力のぶつかりあい」が勝負を決めるという感想を持った。アメリカでは、要求を実現するまで「無期限ストライキ」でたたかう。私の参加したワークショップでは「1日や象徴的なストライキは遊びだ」という発言もあった。また「恐怖をどうはねのけるか」というテーマのワークショップもあった。それはストライキを行なえば、経営者の対抗策で職を失う恐れがあるからだという。つまり、ストライキに入れば「勝つか負けるかの力勝負」なのである。だから、勝つための「パワー」は何か、それをどう獲得するかという真剣な議論が中心的なテーマのひとつになっていた。ストライキでは、工場の操業を止める(すべての門にピケットをはる)ことができるだけの組合員の数と団結、ストライキ中の生活を補てんする財政力(今回のストでの生活補償はフォードで週500ドル、これでは生活が大変だった、やっと乗り切ったという発言があった)、世論の支持・連帯、政権・政治の動向(バイデン大統領もトランプもストライキ「支持」を表明、この秋の大統領選挙で労働者の票がほしいという動機もあるだろう)、これらのすべてが「パワー」という認識で、この「パワー」をどうつくるかが「戦略」となっている。
パワーの源泉である「組合員拡大が命」を学んだ
アメリカの労働運動が「組合員が組合員を増やす」運動への転換、「サービス提供モデル」から「組織化モデル」への転換によって前進したと言われている。この「組合員を増やせる組合員の育成」、そのための「交流と学校」が「レイバー・ノーツ大会」だ。大会といっても方針を決めることはない。大会の規模は、会場参加者が2,000人ぐらいだと思う。このような交流集会と元気な決起集会が一つのパターンだった。ジェンダー視点で言えば、女性が運営・発言でも主導的な役割を果たしていた。もう一つは、毎日30~40もあるテーマごとの「ワークショップ」(規模は数十人)、これは学校の教室のようなものだ。報告・問題提起の後に、数人での討論、あるいは隣に座った人と感じたことを話させるなど、「とにかくお客さんにしない、ガヤガヤして聞き取れないが、口を開かせて参加意識を持たせる、考えさせる」、これも「コミュニティ・オーガナイジング」の一つなのだと思った。「組合員を増やせる組合員の育成」を最大の獲得目標としているから、「秘密のレシピ」や「コミュニティ・オーガナイジング」などのノウハウやスキルが生みだされ、活用されているのだと感じた。「みんなが発言し、みんなが参加する元気な運動」、無関心な人に働きかけることについても、「労働組合には無関心でも、自分の働き方や労働条件に無関心な人はいない」ということだ。「よく知らない人とも話をするには」、「まず自分のことから話すこと」、「コミュニティ・オーガナイジング」でも「自分のストーリーを話す」とか表現されるが、私が「要求討議を前進させるには、討議をすすめる側が自らの生活、要求を語れ」と言い続けていることと同じように思う。アメリカの経験をまねできるわけではないが、なぜ元気に組合員を増やせているのか、よく使われる「トラブルメーカー」という標語には、何が示されているのだろうか。職場でおかしなことや要求があったら、「声を上げる」、「問題を提起する、問題を起こす」、「みんなで考えるようにする」、それが「トラブルメーカーズ・スクール」ではないかと感じた