再雇用制度であるシニア契約社員の賃金があまりにも低い状態が続いており、会社の社会的責任やモラルが問われています。10月からの一年契約も同額の月額18万5千円で更新され、問題が続いています。前号から、日本IBMのシニア契約社員の賃金に関する問題点や労使交渉の模様などをシリーズで連載しています。今号では、シニア契約社員の月額給与18万5千円・年収222万円のマーケット調査方法について会社を追及した内容です。会社の8月21日の文書回答と、同日の団体交渉でのやり取りを以下に紹介します。
会社の8月21日の文書回答(抜粋)
当社は守秘義務を負っているため、マーケット調査の方法、内容、結果等に関する具体的な情報・資料を開示することはできません。説明可能な範囲でシニア契約社員に関するマーケット調査の特徴を説明すると、以下のとおりです。シニア契約社員の給与を決定するにあたって行っている「バンド3相当のサポート業務」に関するマーケット調査においては、IT業界においてバンド3相当のサポート業務を主たる業務としている正社員がいる会社はほとんど存在しないため、マーケット調査の対象は、主に有期雇用社員であり、その中には、単純なサポート業務のみを行っている派遣社員やアルバイトの給与水準が含まれています。
8月21日の団体交渉でのやり取り(抜粋)
組合 マーケット調査というのはいつ行われるのですか。
会社 それは常に出てくるニュースを注視しながらやっておりますし、その都度、得られた情報を持って検討している。特に毎年決まったサイクルとかやっているっていうことではない。
組合 毎年やられているのか、毎年やってるんだけど、1月や10月にやるときもあるよ、ということか。例えばニュースで最賃のニュースが出たから、やらなきゃいけないとか。
会社 情報は、毎年取るようにしています。
組合 国家公務員が、定年再雇用の制度ではなく、定年延長に切り替えていきましょうということで既に始まっており、65歳まで最終的には延長する。(延長された後の)その時の賃金のレベルがいくらかご存知ですか。正社員と比べて、どのくらいの賃金が支払われるか。再雇用の人がどれくらいの賃金を支払われるか。
会社 すみません。その情報は。
組合 国家公務員の正社員と比べて再雇用の人たちが、最初いくらぐらいか、そういう情報を取ってなくて、なぜIBMの再雇用の賃金が決められるんですか。いただいた回答を読む限りは、とにかくバンド3だということで、バンド3相当のマーケット調査をしています、としか書いていません。さっき質問した他社が定年後再雇用あるいは定年延長、つまり60歳から65歳の雇用についてどういう動向にあるかという点のマーケット調査をされていますか。つまり、どれぐらいの企業が定年延長65歳定年であるとか、定年をなくすとか、IBMのように再雇用契約社員とか、あると思いますけど、どれぐらいの会社がどういう制度をとって、バンド3みたいなこういう落とし方をするのか、同じような処遇で再雇用されているのかって、そういう観点の調査ってされてますか。
会社 同業他社か、定年再雇用制度を持っているか否かとか、それがどういう制度で作られているかっていうのを絞って調査しているかというご質問ですか。
組合 賃金水準を含めてですけど。
会社 賃金水準、そこに絞った調査は特に行っていないです。あくまで賃金水準のマーケット調査という形です。
組合 東京南部地区で私は見ている職場、20職場くらいあるんです。日本IBMは再雇用賃金が最低です。一時金もなし、それから各種手当を含むと本当に差がでます。しかも、(日本IBM以外の職場は)日本IBMのように売上・利益を持ってる企業か、とんでもないです。超零細企業ですよ。それでも上回っていますよ。どういう調査をすると、18万5千円が妥当になるのですか。回答でマーケット調査の内容について言えないって書いてあるけど、言えないと思います。まともにやって、この金額が出てくると思えないです。本当にバンド3ありきで、単純業務の市場調査をすれば、それは最低賃金のギリギリの金額になるのは当り前なので、それ以上のことが読み取れないです。問題なのは、シニア制度の調査は、バンド3相当との業務でのマーケット調査しかしてないんです。今、IBMの再雇用の人たちがやってる業務で調べてみてくださいよ。絶対この数字にならないから。日本IBMには、シニア契約社員の方は何名ぐらいおられるかお聞きしていいですか。
会社 人数については申し上げていない。(次回につづく。ご期待ください。