再雇用制度であるシニア契約社員の賃金があまりにも低い状態(月額給与18万5千円・年収222万円)が続いており、会社の社会的責任やモラルが問われています。10月からの一年契約も同額の月額18万5千円で更新されました。前々号から、日本IBMのシニア契約社員の賃金に関する問題点や労使交渉の模様などをシリーズで連載しています。今号では、今年3月に日本IBMシニア契約社員の労働条件交渉事件に関して、日本IBMの対応が誠実団体交渉義務に違反する不当労働行為に該当するとして、都労委から全部救済命令が出ました。会社はこの命令を不服として再審査申し立てを中労委に行っています。中労委に会社が提出した準備書面(令和6年8月20日)の内容と8月21日団体交渉でのやり取りを以下に紹介します。
会社の中労委宛・再審査申立人準備書面(1)(抜粋)
・(シニア契約社員の給与について)一度引き上げた賃金の引き下げは困難であるため、短期的な社会情勢の変化に応じて直ちに賃金を引き上げることはできず、中長期的な情勢を踏まえて内容を検討せざるを得ないからである。なお再審査申立人はその後の情勢も踏まえて昨年シニア契約社員の給与を一度引き上げているが、昨年末以来の情勢を踏まえてさがさらなる引き上げの必要性を検討しているところである。・別件訴訟で詳細に説明している通り、シニア契約社員の職務は外注していた業務などを一部中止して新たに創出したものである。
8月21日の団体交渉でのやり取り(抜粋)
組合 ここで言う(賃金引き上げの)必要性について、何をもって必要性があると判断しているのかということと、その必要性の今の検討状況はどうなっているか、ということ、二点お伺いますがどうでしょうか。
会社 世の中の動向です。賃金動向というのは必ず入れるようにしています。それから、定年再雇用制度は、希望した人を65歳まで雇用をする。仮に極端な話、定年を迎えられる方々みなさんが残った場合に賃金の支払い続けられるのか、というのは当然検討しているところです。(全員が残ることは)可能性としては考慮しなければいけない。
組合 「みなさん」というのは、100%シニア契約社員での雇用を希望したということですか。。
会社 100%希望されたら雇用する義務があるわけです。賃金の支払い続けられるのかっていうのは当然かもしれない。それから、その人口ピラミッドですよね。その高齢者層、いわゆるシニアなベテランの方々の層が厚くなればなるほど、この先10年、15年というところで、事業継続性のリスクも当然高まっていくわけですから、継続的に若年層の採用というのをしっかりしていかなければいけない。そういった全体の人口ピラミッドに対する影響というのも当然考慮しなければいけないところであって、その経営の継続性とかそういうところも見ていただいて、などですね。
組合 それが必要性の判断か。
会社 引き上げをすべきであるか否かっていうのを決定する一つの要因になっています。
組合 現在のこの引き上げの必要性の検討の状況とはいかがでしょうか。
会社 引き上げするしないという結果についてはまだ何も結論ないという状況です。全員がもし(再雇用を)希望されたらどうなるのだろうかっていう観点で、どうしても賃上げいうのは、ある程度、保守的にならざるをえない。
組合 全員と言ってるけど、全員再雇用したところで18万5千円のレベルの稼ぎ(業務)かと言えば、全然違うじゃないかと言いたくなります。日本IBMの年間利益いくらですか。生活できる賃金が必要です。それが社会的責任。
組合(外注していた業務などを一部中止して新たに創出したものという会社の主張について)シニア契約社員の職務は外注していた業務などを一部中止して新たに創出したものであるというこの表現なんですけど、現実、シニア契約社員というのは59歳までにやっていた業務を60歳・シニア契約社員になっても継続。新たに創出という表現は当たらないのではないかと思います。この事実があるとすれば、どの業務の何をやめて、誰に当てがったか言えますか。
会社 これまで派遣やアルバイトでお願いしていた業務をシニア契約社員用に契約社員として雇用した場合にアサインする業務として作ったということをここで感じる。
組合 これは調査された結果をここに書かれているのか。調査しないで書いているなら極めて悪質な書面。これは、ほとんどこういう業務をアサインしてますよ、っていうふうに印象づける文章です。逆に、今この例を言ってくださいって言えないんですよ。だから(創出したものは)稀なケースと思います。派遣社員の方ももっとレベルが高い仕事をされたのではないか。事実があるとすればぜひ紹介していただきたい。(次回につづく)