定年後再雇用制度であるシニア契約社員の賃金があまりにも低い状態(月額給与18万5千円・年収222万円)が続いており、社会的責任やモラルが問われています。組合は、日本IBMのシニア契約社員の賃金に関する問題点や労使交渉の模様などをシリーズで連載しています。今回が5回目の連載となります。前号まで4回連続で団交のやり取りを中心に紹介してきましたが、会社の不誠実な対応は紹介した通りです。今号では「シニア契約社員制度に関する情報要求」に対する会社回答を紹介します。今回紹介する会社回答も、東京都労働委員会が今年3月に発した全部救済命令後も依然として不誠実な対応を継続している内容です。
シニア契約社員制度に関する情報要求と会社回答
9月25日の団体交渉で、組合はシニア契約社員制度について質問し、会社はその回答を持ち帰ることになりました。組合は10月31日の団交までに文書での回答を求め、誠実に協議することを求める書簡を提出し、会社が10月30日に回答してきました。以下に情報要求と会社回答を紹介します。
*****
1.現在のシニア契約社員の人数を年齢別に開示すること。60歳の人数61歳の人数62歳の人数63歳の人数64歳の人数
2.シニア契約社員制度が2013年4月にできてから、60歳定年退職を迎えた従業員数とその中でシニア契約社員を選択した実績を年度ごとに開示すること。
3.現在のシニア契約社員の総額人件費を開示すること。(1~3の会社回答)IBMでは従業員の人数を含めて非公開としているため、申し訳ありませんが開示することはできません。
4.シニア契約社員の賃金を決定するための市場調査の方法、内容、結果について、具体的な情報・資料開示すること。
(会社回答)
これまでも何度か説明しているとおり、当社はマーケット調査に関して外部から取得した情報について守秘義務を負っているため、マーケット調査の方法、内容、結果等に関する具体的な情報・資料を開示することは、申し訳ありませんができません。但し、以前も説明しておりますが、説明可能な範囲でシニア契約社員に関するマーケット調査の特徴を説明すると以下のとおりです。まず、バンド6以上のマーケット調査においては、原則として同種市場における他社において同種の業務(バンド及びジョブファミリーの近い業務)に従事している正社員の給与水準について、主に同業他社と守秘義務契約を締結した上で相互に情報を開示し合う方法(補助的に外部の調査会社に委託する方法)によって調査していますが、シニア契約社員の給与を決定するにあたって行っている「バンド3相当のサポート業務」に関するマーケット調査においては、IT業界においてバンド3相当のサポート業務を主たる業務としている正社員がいる会社はほとんど存在しないため、マーケット調査の対象は、主に有期雇用社員であり、その中には、単純なサポート業務のみを行っている派遣社員やアルバイトの給与水準が含まれています。5.IT業界の他社で定年後再雇用の賃金水準がどの程度かいう点をなぜ市場調査しないのか回答すること。(会社回答)マーケット調査は当該業務の市場水準を調査するものであって、担当している業務とは無関係に定年後再雇用の給与水準を調査するものではないためです。6.2024年の市場調査を実施しないで、どのようにシニア契約社員賃金(月額賃金18万5千円) を決定し、2024年10月1日からの契約更新(1年)をしたのか回答すること。(会社回答)マーケット調査は毎年行っています。また、シニア契約社員の調査は正社員とは少しサイクルが異なり、特定の時期だけに行っているものではなく継続的に情報を収集しており2024年も情報を収集しています。7.シニア契約社員の賃金は、60歳以降社員が受け取る企業年金や公的補助、厚生年金を配慮して決定されていた。どのように配慮されているか回答すること。(会社回答)制度導入時においても、シニア契約社員の賃金は、専ら担当業務の市場調査の結果によって決定されていたものであり、年金等を主たる要素として決定された賃金が決定された訳ではありません。専ら市場調査の結果によってシニア契約社員の賃金を決定した後に、年金等について補助的・参考的に考慮した結果となります。したがって、市場調査によって決定された給与水準にさらに年金等の金額を追加することが必要と考えていた訳ではありません。項番8以降は次号で紹介します。(次回につづく)