日本IBMの定年後再雇用制度であるシニア契約社員の賃金があまりにも低い状態(月額給与18万5千円・年収222万円)が続いており、社会的責任やモラルが問われています。組合は、日本IBMのシニア契約社員の賃金に関する問題点や労使交渉の模様などをシリーズで連載しています。今回が6回目の連載となります。前号まで5回連続で団交のやりとりを中心に紹介してきましたが、会社の不誠実な対応は紹介した通りです。今号でも、前号で紹介した「シニア契約社員制度に関する情報要求」に対する会社回答の続き(項番8から)を紹介します。今回紹介する会社回答も、東京都労働委員会が今年3月に発した全部救済命令後も依然として不誠実な対応を継続している内容です。
シニア契約社員制度に関する情報要求と会社回答
9月25日の団体交渉で、組合はシニア契約社員制度について質問し、会社はその回答を持ち帰ることになりました。組合は10月31日の団交までに文書での回答を求め、誠実に協議することを求める書簡を提出し、会社が10月30日に回答してきました。以下に項番8からの情報要求と会社回答を紹介します。
(前号の続き)
8.定年までペイ・フォー・パフォーマンス、スキルに応じた賃金だと言われて、60歳になるとなぜ一律にバンド3の仕事しかありませんという制度になるのか回答すること。
(会社回答)
改正高年齢者雇用安定法の施行により60歳定年退職後に雇用継続を希望する社員全員に雇用機会を提供する必要性が生じたところ、IBMにおける顧客からの受注件数・受注額自体に大きな変化がない中で、新規採用等の会社全体の運営や従業員の年齢分布に影響が出ないようにするためには、定年再雇用者向けの新たな仕事を創出する必要がありました。このため、IBMは、シニア契約社員の業務内容について、これまで社外に委託していた仕事や部門で発生するサポート業務などを切り出して、新たにシニア契約社員の業務を創出することにしましたが、かかる方法によって十分な分量の業務を確保できると見込めた業務がバンド3相当のサポート業務だったためです。
9.「シニア契約社員の職務は、外注していた業務等を一部中止して新たに創出したもの」と断定しているが、シニア契約社員のすべての業務を確認した調査方法、結果を開示すること。
(会社回答)
シニア契約社員の業務については、契約開始時および契約更新時にマネージャーが業務アサインチェックリストを用いてバンド3相当の業務を検討し、事前にオファー内容について社員に確認をとっています。業務アサインに際しては、社員の申し込み内容や健康状態も配慮しています。
10.業務のアサインがまったく無いシニア契約社員がいるかどうか、業務のアサインが勤務時間の50%未満というシニア契約社員がいるかどうか、を回答すること。
(会社回答)
現時点でそのような実態は把握しておりません。、なお、一時的に担当業務がなくなることは正社員であってもしばしば発生する事態であり、サポート業務のみに従事しているシニア契約社員については同様の事態がより発生しやすいとは思いますが、少なくとも大多数のシニア契約社員についてご指摘のような状況が常態化していることは無いと認識しております。今後も適切に制度運用がなされるようサンプリング調査を継続して参りますが、人事部の人数が限られており既存の業務で手一杯である関係上、全員についての網羅的な調査は困難であるため、組合で把握している具体的な部署名や個人名についてご教示いただければ確認いたします。
不誠実団交をやめろ
東京都労働委員会は、今年3月に日本IBM(シニア契約社員制度)事件において発した命令において、シニア契約社員の給与を議題とする団体交渉における日本IBMの対応は、次の理由で不当労働行為に当たると認定しています。
・組合らは、長年にわたりシニア契約社員の処遇改善を会社に要求し、社会情勢や定年後再雇用を取り巻く環境の変化に応じて、会社に改善すべき根拠を示してきた。
・組合らは、団体交渉においても、シニア契約社員の給与が低いことなどについて根拠を示した上で、パートタイム・有期雇用労働法の説明義務に基づく具体的な説明を求めていた。
・これに対し、会社は、組合らの質問に応じた具体的な説明や回答を行わず、従前と同様の抽象的な回答を繰り返していたのであるから、シニア契約社員の給与を議題とする団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるといわざるを得ない。
このような都労委命令を受けながら日本IBMは今も上記のような不誠実な回答を続けています。
組合は会社の不誠実な対応とは一貫してたたかいます。次号では次回の日本IBMとの団交について紹介します。
(次回につづく)