日本IBM・シニア契約社員の賃金 本当に年収222万円でいいのか(連載⑨)

キンドリルジャパンは65歳への定年延長を発表

日本IBMの定年後再雇用制度であるシニア契約社員の賃金があまりにも低い状態(月額給与18万5千円・年収222万円)が続いています。組合は、日本IBMのシニア契約社員の賃金に関する問題点や労使交渉の模様などをシリーズで連載しています。
今号の9回目は、キンドリルジャパンと日本IBMがそれぞれ今年1月に発表した定年後の労働条件の違いを紹介します。また、シニア契約社員の収入は賃金と高年齢雇用継続給付金の合計ですが、今年4月1日から給付金の給付率が引き下げられるため、シニア契約社員の賃上げが急務となっています。この問題を取り上げた12月19日の日本IBMとの団体交渉のやり取りを紹介します。

キンドリルジャパンは65歳への定年延長を発表

前号でもお知らせしましたが、キンドリルジャパンは1月6日、キンドリルジャパン、KJTSおよびKSOKの正社員を対象に、4月1日から賃下げなしで定年を60歳から65歳に延長することを発表しました。今回発表の定年延長は組合の要求通りの内容です。さらに、キンドリルジャパンは1月24日、シニア契約社員の給与を月額25万円(年収300万円)から月額27万5千円(年収330万円)に4月1日から引き上げることを発表しました。

国家公務員も65歳定年

国においても、国家公務員定年年齢を段階的に65歳に引き上げることなどを規定した「国家公務員法等の一部を改正する法律」が令和5年4月1日から施行されました。定年年齢は、令和5年度から2年に1歳ずつ引き上がり、1967年4月2日以降に生まれた方は65歳定年が原則となりました。

日本IBMのシニア契約社員、年収222万円を継続

一方で日本IBMは1月20日、山口社長が「高い専門スキルを持ったシニア層のさらなる活躍を目指して」と称する発表レターを全従業員宛にメール発信し「2021年12月に発表したハイブリッド&パーソナライズされた新しい働き方では、社員一人ひとりが成長し輝ける環境と文化を促進し、より多様な人材を惹きつけ、お客様の成功につながる価値あるイノベーションを起こし続けるIBMになる」ことを目指し、これまで順次施策を展開してきました。一方、日本社会や企業のデジタル変革へのニーズは引き続き高く、人材不足は変わらず大きな課題になっています。このような環境において、人のスキルなどが生かせる場所を企業内外に提供して行くことは、企業の使命の一つであると考えています」と述べています。発表レターで、シニア契約社員の報酬について、固定(年収222万円)と記載されています。組合要求であるシニア契約社員の労働条件の改善や65歳までの定年延長を無視しています。シニア契約社員の現在の処遇を継続することは許せません。

高年齢雇用継続給付金が下がる

12月19日の団交を紹介する前に高年齢雇用継続給付金について述べます。高年齢雇用継続給付とは、60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度のことです。雇用保険法等の一部を改正され令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が各月に支払われた賃金の15%から10%に変更になります。

12月19日の団交(抜粋)

組合 シニア契約社員の国からの高年齢雇用継続給付金(の最高給付率)が15%から10%に下がります。現在、(月額賃金の)18万5000円の15%の給付金が国から支払われいてます。日本IBMはあまりにも(定年前よりも)賃金が下がりすぎるためです。この給付金が2025年4月から10%に下がることで、シニア契約社員の給付金が減ります。国は給付金という形で労働者の生活を守ってきましたが、この間に十分に賃金が上がったという判断になりました。この物価高の中でシニア契約社員の給付金は一律に下がります。この件で会社は何か検討されていないのですか。

会社 現時点で検討しているものはないです。今後に向けて何かしら改善できないかということを考えていきます。将来の可能性を否定しないです。

組合 将来の可能性について否定はしませんが、今の時点で何らかの検討がでてないということは、4月からは改善されないと認識をします。さらに物価高の中で生活が苦しくなります。他の会社で月額(賃金)が25万円だとするとその15%の給付金が支払われます。月額が高い会社ほど給付金が高くなる。そのため、(月額賃金が低いと)さらに従業員が追い詰められる。人事施策が後手ではなく、とんでもない制度になっていると思います。
(次回につづく)

 

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