前号で退職勧奨に応じなかったことを理由に大幅減収になり、不当な扱いを受けたとして、米グーグル(親会社Alphabet)の日本法人で働く6人が1月31日、同社側に約6300万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したことを紹介しました。今号では、昨年末に米グーグルの日本法人を解雇された元従業員が、会社から業務改善計画(PIP)の実施を命じられ、当初の目標を達成したにも関わらず、突然付け加えられた評価項目を理由に解雇されたことは無効だとして、雇用契約上の地位の確認と、賃金の支払いを命じる仮処分の申し立てを2月11日、東京地裁に行いました。JMITU・Alphabetユニオン支部(以下、JAU)の執行委員長と仮処分の申し立てをした原告からJMITU日本IBM支部にメッセージが寄せられましたので紹介します。
JAUの小林執行委員長からのメッセージ
アメリカ外資では、PIPと呼ばれる制度が導入されている企業が多くあります。人事評価が低い社員に、改善を示す機会として課題を与えるものです。アメリカでは、未達成の場合、解雇に繋がることが多く、非現実的な目標設定をし、解雇の口実となっている実態も報告されています。グーグルの日本法人でも慣例的に実態としてアメリカと同じ形の未達成を理由とした解雇が行われていました。2024年11月、そのうちの1人が立ち上がり、JAUに加入し、たたかう覚悟を決めました。最初は、解雇は受け入れるが、せめてきちんと説明をしてほしいという要求でしたが、団体交渉での会社からのしどろもどろの説明を聞くうちに、納得できないと、争議で解雇無効を争う決意を決めました。グーグルでのPIPは、目標設定も具体的な数字を伴わない抽象的なものです。更にひどいことに、達成目標として伝えられていた3項目については達成を会社も認めたにも関わらず、当初目標に含まれなかった「ソートリーダーシップ」という項目で、未達成とされたのです。チームの同僚たちも「ソートリーダーシップ」ははじめて聞いた様子で、上司以外誰も意味を知りません。組合に対しても、未だにソートリーダーシップの意味について納得のできる説明はありません。
原告からのメッセージ
新卒からIT業界に入り、ずっと憧れていたグーグルで働くことができるというのは、私にとって大きな夢の実現でした。そんな企業からオファーを受け取ったとき、私は驚きと共に胸が高鳴ったのを今でも覚えています。年収はかなり上がり、そのおかげで、大切な人と共に美味しい食事を楽しんだり、旅行に出かけたりと、より豊かな生活を送ることができました。しかし、そんな平穏な日々を壊したのは突然の解雇通知でした。グーグルでは、マネージャーが部下に低評価をつける場合、事前に文章でフィードバックを行い、改善のための時間を与えることが推奨されています。しかし、毎週の面談や四半期ごとの中間評価面談でも問題点の指摘もないまま、一方的に低評価がつけられました。そしてPIPを実行したのです。そこから6ヶ月間、私は必死に努力しマネージャーからも改善されたことが認められていたにもかかわらず、PIP未達とされました。PIP終了後、会社は毎週面談を設定し、合意退職を強要しようとし、拒否すれば解雇される恐れがあると脅しました。そして、1ヶ月以上にわたる退職勧奨の後に突然の解雇通知が届き、その後すぐに仕事用のPCやアカウントへのアクセス権を剥奪されました。「解雇予定日」はその1ヶ月後とのことでした。私にとって、この出来事は単なる職場での問題にとどまりません。将来への不安が一気に広がり、人生の大切な瞬間においても影を落としています。プロポーズを考えていた彼女との未来も不安定になり、心の中で感じる痛みや不安は計り知れません。会社代表から組合に提出された解雇理由書は杜撰なものでした。改善されたと認められた項目や、「分析の深さ」というそもそもこれまで一度も指摘されなかった項目が並べられていました。解雇通知の内容は「就業状態、または意欲が著しく不良で業務に適しないと認められる」という虚構されたものでした。「解雇」とは労働者のキャリアのみならず、日常生活にも大きな影響がある重大な事案です。その解雇がしっかりとした事実確認なしに強行されようとしていることに、私は非常に驚き、愕然としました。さらに、会社は借り上げ社宅の解約や退去手続きの圧力をかけるなど、私の状況をますます厳しくしようとしています。このような理不尽なPIPや一方的な解雇を黙って泣き寝入りすることはできません。私の身に起こっている出来事が、もう二度と他の社員には起こってほしくない。その思いを糧に私は会社と徹底的に戦い、公正な評価と解雇の撤回を求めていくつもりです。