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日本IBMグループに頼れる労働組合あり

 4月1日付で入社された新入社員の皆さん、そして中途入社の皆さん、このコロナ禍の中で就職できたことを一緒に喜びあいたいと思います。
 しかし、喜んでばかりいられません。インフラストラクチャー・サービスの分割を控えたこの会社で無事にやっていけるか、不安の人も多いでしょう。この会社がブラック企業であることを承知の上で入ってきた人も多いと思います。ひどい目に会わないか、きっと不安で一杯でしょう。
 安心してください。日本IBMグループには、頼れる労働組合があります。以下にこの会社の労務政策の特徴と、それに対する労働組合の対応をご紹介します。

労務政策の特徴

 日本IBMの労務政策の特徴は「ラインによる人事管理」です。つまり昇給額や人事異動など、普通は人事部門が決めることを全てラインマネジャー、すなわち皆さんの所属長が決定します。ラインに強大な権力を持たせ、所属している個々の従業員を支配するのがこの会社の労務政策の根幹をなしています。

パワハラ4点セット

 ラインによる人事管理は、従業員から見れば会社の圧倒的な力を背景にした所属長によって個々人が「会社対個人」の関係で支配されることを意味します。この圧倒的な力関係の差がパワハラの温床になります。事実、パワハラ4点セットが社内で猛威をふるっています。
①人事考課権限を濫用し、恣意的な低評価をつける「パワハラ低評価」。
②リストラのターゲットになると突然対象者になる「改善指導」(パフォーマンス・インプルーブメント・プログラム)という名の「パワハラPIP」。
③PIPが不合格だとされると待っている「パワハラ賃下げ」。
④賃下げされても会社を辞めないでがんばっていると待っている「パワハラ降格」。
 働きだしてみれば、あらゆる社員が所属長との関係をどう良好に保つかに腐心しながら働いていることが分かってくるでしょう。そのあり方は異常なほどです。それこそが、パワハラ体質の証明と言えるものです。

日本の労働法の考え方

 ところで、外資系の会社であっても、日本という国で事業をしている以上、日本の法律は守らなければなりません。特に大事なのが、会社と従業員との関係を規定している、いわゆる「労働法」と呼ばれるものです。
 日本ではまず日本国憲法第28条で労働三権、すなわち労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しています。その下に労働組合法、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法が整備されています。
 最上位の憲法で労働者の団結権が認められていることからも、日本の労働法の考え方は「会社対労働組合」という考え方、すなわち集団的労使関係が基本になっています。
 ところが、日本IBMグループの「ラインによる人事管理」という労務政策は会社対個人に押し込めるものですから、日本の労働法に真っ向から挑んでいるということが言えます。

労働組合のメリット

 パワハラ体質の職場で我慢して働かなくても良くなる方法が、労働組合に入ることです。
 日本IBMグループの労働組合は「オープンショップ」の形態を取っています。つまり、「入りたい」と思う人が入る仕組みです。この点が全員自動加入の一般の大企業とは異なり、団結力が格段に強いことが特徴です。
 この団結力と労働三権の力で、ラインによる人事管理の壁を乗り越え、「会社対個人」の関係から「会社対労働組合」の関係に持ってゆくことができます。つまり、パワハラの恐怖から解放されるのです。
 個の管理によって従業員一人一人が孤立する傾向がある中でも、労働組合には皆でオープンに話し合うことができるコミュニティがあります。
 また、労働組合に入るとお得な保険である「全労連共済」に加入することができます。若い時から入ればさらにお得です。
 その上、労働組合員であれば「ろうきん」から有利な金利で住宅ローン等の借り入れをすることができます。
 いかがでしょうか。この会社で労働組合に入らない理由は無いのではないでしょうか。

今後のアドバイス

 心身ともに健康を保つことを心がけてください。もし心折れそうだと感じたときは、左表の「なんでも相談窓口」に連絡してください。

会社分割での注意点

行くのか行かないのか判別が重要

 これまで、3月1日号と3月15日号で労働契約承継法と会社分割制度についてご紹介してきました。今回は会社分割の際に従業員としてどういった点に注意する必要があるかを解説します。
 会社分割制度では移籍に際して本人の同意を必要としないため、自分が行く人なのかそうでないのか、その点に注意しないと思わぬ結果につながりかねません。過去の日本IBMの事例ではこの間違いが非常に多いことが分かっており、注意する必要があります。
 組合はすでに商法等改正法附則第5条、及び労働契約承継法第7条、さらに、組合員の労働条件に関する協議協定に基づき、下記にご紹介する観点での要求書を提出し、協議を開始しています。

主従事労働者とは

 主従事労働者とは、承継される事業に専ら従事している労働者をいいます。会社分割制度で包括的に承継される際、「主従事労働者」と呼ばれる人には異議を申し出る権利がありません。従って、主従事労働者に入っているかどうかが非常に重要になります。
 労働者が承継される事業だけでなく他の事業にも従事している場合には、それぞれの事業に従事する時間、果たしている役割等を総合的に判断して、「主従事労働者」か否かを決定することになります。
 総務、人事、経理等のいわゆる間接部門に従事する労働者であっても、承継される事業のために専ら従事している労働者は、「主従事労働者」となります。なお、それ以外の業務も行っている場合は総合的に判断することになります。
 研修・応援等のように承継される事業に一時的に従事している場合で、当該業務の終了後には承継される事業に主として従事しないことが明らかである人は主従事労働者に当たりません。

意図的な配置転換ダメ

 判断基準は上記のようになるとして、もし会社が特定の労働者を排除する目的で意図的に配置転換を行なったらどうなるでしょうか。
 その場合、合理的理由なく労働者を排除することを目的として会社分割前に意図的に配置転換を行ったような場合には、当該労働者は配置転換の無効の主張を行うことができます。

見解の相違がある場合

 会社と労働者との間で、「主従事労働者」に該当するか否かについて見解の相違があるときには、商法等改正法附則第5条の労働組合との協議により解決することができます。この場合、労働者は労働組合を当該協議の代理人として選定することができます。
 それでもなお解決しない場合には、最終的には裁判によって解決を図ることができます。

会社分割利用の解雇

 会社は会社分割のみを理由とする解雇を行うことは許されません。
 また、会社分割後に倒産するなど、債務の履行の見込みが無いことが分かっているにもかかわらず、労働者を会社分割で移籍させる場合など、特定の労働者を解雇する目的で、この制度を濫用することはできません。

労働条件の継承

 会社は、会社分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更を行ってはいけません。福利厚生制度なども労働条件として維持されます。もし同一内容で引き継ぐことが難しいものは情報提供を行うとともに、労働組合との協議により、代替措置等を含む妥当な解決を図らなければいけません。

異議の申出

 会社が「主従事労働者」をもとの会社に残留させる場合や、「非主従事労働者」を行かせる場合には、これらの労働者は、異議の申出を行うことができます。
 会社は、これらの労働者が、異議の申出を行ったことを理由として不利益な取扱いを行ってはなりません。

第3次パワハラ賃下げ裁判

減額撤回・差額支払 全面勝利和解!

和解成立にあたっての声明
1.2021年2月25日、JMITU日本アイビーエム支部組合員18人が日本アイ・ビー・エム(株)とその子会社日本アイ・ビーエムデジタルサービス(株)を相手取って提訴していた第3次パワハラ賃下げ訴訟(東京地裁平成30年(ワ)第32219号他)において、東京地方裁判所民事第19部(春名茂裁判長)において、会社が賃金減額措置を撤回し、減額前の賃金に戻すと同時に、減額前後の差額賃金及び遅延損害金を支払うことを骨子とする内容で和解が成立した。この和解は,会社が地裁判決前に原告主張の中核の全てを認めるという労働側の画期的かつ全面勝利と評価できる内容である。

2.パワハラ賃下げは、個人の成績を恣意的に下げ、それを口実に従業員の同意なしに最大で年収の15%もの賃下げを強行するものであった。今回の第3次訴訟は、第2次訴訟(東京地裁平成28年(ワ)第5084号他)において2017年6月28日、前1項と同様の内容で和解が成立していたにもかかわらず、会社がパワハラ賃下げを続けたため提訴していたものである。

3.今回の和解は、以下のような点で大きな成果と重要な意義を持つと考える。
(1)第1、2次訴訟では、15%~10%までの減額が法的に認められないことが明らかとなった。そこで会社は減額幅を7%に下げて挑戦してきた。しかし、今回の和解で7%でも許されないことが明らかとなった。
(2)第3次訴訟では会社は賃下げ原資を賃上げに組み入れたと主張したが、この論理も通用しないことが明らかとなった。
(3)第3次原告団にはバンド9(部長級)の組合員も含まれておりバンド9の賃下げも許されないことが明らかとなった。
(4)第3次原告団には子会社の組合員も含まれており子会社においても同様に賃下げが許されないことが明らかとなった。
(5)これまでに1次、2次、3次で多くの従業員が組合に加入し、これまで延べ48人が集団訴訟を起こし賃下げの撤回を勝ち取ったことになる。
(6)2019年、2020年は、組合員に対する賃金減額はなかった。

 私たちは、賃下げされた従業員に対し賃金を取り戻すため一日も早く組合に加入することを呼びかけるとともに、会社に対しては就業規則上の賃下げ規程を廃止し一方的賃下げをなくすこと、さらにパワハラ降格争議、定年後再雇用賃金差別争議、AI不当労働行為争議など会社における労使間の労働争議の全面解決に踏み切り、労使関係を正常化することを強く求めるものである。

危険な会社分割制度

労働組合を通じた協議なら安心

 日本IBMグループのインフラストラクチャー・サービスが会社分割制度により分割されることが2月中に明らかとなりました。ところが、これまでの会社の説明はお客様との契約の取り扱い方や、営業戦略についての議論ばかりで、肝心の従業員の処遇についてはきちんと説明されていません。
 そこで、過去の事例を参考にしながら従業員としてどのような心の備えが必要か考えてみます。

会社分割制度の危険性

 会社を組織再編するやり方は様々ですが、従業員を移す際は労働契約にかかわることから従業員の同意を必要とするケースがほとんどです。これでは大規模な再編が面倒なことから、手続きを簡素化して従業員丸ごと分割できるようにしたのが会社分割制度です。
 つまり、会社分割制度による分割は、そこで働く従業員がまるでモノのように否応なく会社もろとも連れて行かれることを意味しています。使われ方によっては従業員にとって大変危険な制度であることを認識しておく必要があります。

労働契約承継法で保護

 会社分割制度が労働者にとって危険なため、労働者保護の観点から制定されたのが「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」すなわち「労働契約承継法」です。この法律では決められた手続きに従って労働契約を保護した上で、さらに会社は会社分割にあたって労働者の理解と協力を得るよう努めなければならないと定めています。
 ところが、従業員にとって大変重要な会社分割制度利用の決定が今年2月に全社発表されていません。一部の社員向けの説明会等で既成事実のように説明され、なし崩し的に進められています。さらにラインマネジャーの中には「新会社の労働条件は君たち次第だ」などと経営責任を放棄する発言をする人もいます。

HDD部門分割の事例

 過去の事例から、日本IBMが会社分割制度をどのように使ってきたかを見てみましょう。
 2002年末に会社はハードディスク(HDD)部門を新しく設立する会社として分割し、新しい会社を設立しました。ところが、分割が12月25日に行われると、6日後の12月31日に株式会社日立製作所が株式の70%を買収して別会社になってしまいました。つまり、労働契約承継法で定めた労働契約の保護はたった6日だけだったのです。
 その後、日立のグループ会社になったHDD会社の労働条件はどんどん引き下げられていきました。こうした手法はいわゆる「泥船分割」と言われます。泥の船ですから、水に浮かんでいるのはほんのわずかだという意味です。
 また、HDD部門分割に合わせて日本IBM本体でも全社的な人員削減が行われたことは言うまでもありません。当時の機関紙「かいな」で執拗な退職強要が報道されています。

労働組合の価値

 当時、JMITU日本IBM支部はこのような泥船分割に反対。この時期に組合に加入した約70名の従業員とともにたたかいに立ち上がりました。
 情報をいち早く察知し2002年10月には神奈川県労委に分割差し止めの申し立てを行い、また11月7日には横浜地方裁判所に仮処分の申し立てを行いました。
 そのたたかいは2010年の最高裁判決まで続くことになりましたが、たとえ会社が日立グループの会社になったとしても産業別労働組合であるJMITUはビクともしませんでした。何度も日立と団体交渉を実施。結果として労働組合員の労働条件は全員が無事に定年退職するまで見事に維持されたのです。
 さらにその最高裁判決では画期的な判断が示されました。労働契約承継法第7条及び商法等改正附則第5条に定める労働者との協議(5条協議、7条協議)を全く行わないか、実質的に同一視し得る場合は会社分割の無効の原因になるという判断です。法の趣旨に反する会社分割の場合は承継の効力を個別に争うことができるとしました。

抜け道に注意

 7条協議には、実は抜け道があります。労働組合、あるいは従業員代表との協議をすれば良いことになっていますから、従業員代表1人との協議だけで協議を終わらせられる危険があるのです。
 昨年末に行われた従業員代表選挙の結果、箱崎本社の従業員代表になった人はインフラストラクチャー・サービス所属の人ではありません。当事者でない人による協議に依存するのは、当事者にとっては大きなリスクと言わざるを得ません。一方、5条協議の方は労働組合が主体となりますのでこのリスクを回避することができます。

日本IBMは在宅勤務手当を支給せよ

3・11ストライキ決行

 在宅勤務の長期化に伴い、自宅水道光熱費の増加が顕著となっています。本来、業務目的の水道光熱費は会社が負担するべきですが、日本IBMは在宅勤務手当の春闘要求に対し、ゼロ回答をしました。私たちJMITU日本アイビーエム支部は在宅勤務手当の支給を要求し、3月11日朝9:00からストライキを決行します。
 すでに在宅勤務手当を支給している企業は増えており、その金額は月額ベースで3000円~15000円と幅はありますが、支給の動きはIT、情報通信、製造などの業界で広がっており、もはや在宅勤務手当の支給は社会常識と言えます。日本IBMのように会社が負担すべき経費を労働者に転嫁して利潤を図ることは、あってはなりません。

以上

コロナ禍での在宅勤務手当月額8000円支給を要求

【春闘要求】 統一回答日3月10日不達なら3月11日早朝スト

 春闘アンケートの結果、日本IBMの従業員は生活実感が苦しいと感じている人が約8割にのぼり、雇用と会社の将来に大きな不安を抱いていることが分かりました。在宅勤務手当の不支給と、分社化発表と昨年末のリストラが、特に大きく影響していると思われます。
 これらを踏まえ、組合は2月24日に春闘要求を提出しました。春闘要求書はなんと全部で28ページに及びます。15章からなり、章ごとに賃金に関する要求、一時金に関する要求、人事制度および昇給格差是正に関する要求、リストラ・人減らし「合理化」・パワーハラスメントに反対する要求、労働時間管理に関する要求、福利厚生に関する要求などが続きます。
 それらの中で、特に今年の重点となる要求が9項目からなる重点要求です。組合は重点要求に対する会社回答を十分に吟味し、誠意ある回答をしていないと判断した場合は3月11日に早朝ストライキに突入します。
 以下に重点要求の中からいくつかピックアップしご紹介します。

争議解決の要求

 パワハラ賃下げ争議、パワハラ降格争議、定年後再雇用賃金差別争議、AI不当労働行為争議の解決を要求しました。このことで、社内からパワハラを無くし、シニア契約社員の労働条件を改善し、社内の賃金制度の透明化を狙っています。

コロナ禍に伴う要求

 在宅勤務手当として1ヶ月あたり8千円の支給、危険手当として自宅外の仕事場所に行った従業員に対する1日あたり5千円の支給、在宅勤務のための自宅環境整備手当として一時金5万円の支給を要求しました。
 さらに、新型コロナウィルスワクチンの接種にかかる時間は業務扱いとすること、それにかかる交通費は会社負担とすることを要求しました。

賃上げ要求

 まずは、延期した昨年度9月1日付賃上げ(2020年春闘要求の内容)を、今年4月1日付で行うことを要求しました。
 これと併せて、今年度分の賃上げとして、9月1日分賃上げを4月1日付で行うこと、これまでの賃金上昇停滞を補うため、本給で平均5万円の賃上げを要求しました。
 さらに、賞与支給額に大きな影響を及ぼす会社業績達成度についても説明に足る資料を提示して具体的に説明することを要求しました。

シニア契約社員の要求

 パート有期雇用労働法の趣旨に従い、シニア契約社員の労働条件と正社員の労働条件に不合理な待遇差が無いようにする要求をしました。現在の制度は「60才以降はこの会社に残るな」と言っているのと同じで、50才代の人に対する転職強要とも言えます。

労働契約承継法とは

会社分割の際に労働者を保護する法律

 日本IBMグループのインフラストラクチャー・サービスが分社される日が刻一刻と近づいています。私たち従業員としては雇用や労働条件がどうなるか、という点が心配です。そこで、労働者を保護するための法律「労働契約承継法」の概要を厚労省のパンフレットからご紹介します。
 労働者一人では立場が弱いため、この法律では労働者の代理となる労働組合と会社との協議を重視しています。

労働契約承継法とは

 私たちは法的には会社と労働契約を結んで働いています。従って、会社分割の際は労働契約がどのように扱われるのかが焦点となります。
 会社分割制度で分割をした会社の権利義務は、労働契約もろとも包括的に承継されるため、当該労働者が何も知らず、一方的に不利益を被ることのないよう、労働者保護の観点から制定された法律が、通称「労働契約承継法」、正式名称「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」です。
 労働契約承継法は会社分割に伴う労働契約の承継について、労働者や労働組合等への通知や協議、異議申出の手続、効力等を定めています。会社は会社分割にあたって、この規定に従わなければなりません。ここで「労働者」とは、分割会社が雇用する労働者のことであり、分割会社との間で労働契約を締結している労働者すべてを指します。すなわち、正社員だけでなく非正規社員も含まれます。

理解を得る義務

 会社は、会社分割に当たって、労働者の理解と協力を得るよう労働組合や従業員代表と協議を行う必要があります。
(1)努める事項
① 会社分割をする背景及び理由
② 会社分割の効力発生日以後における分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事
③ 項承継される事業に主として従事する労働者に該当するか否かの判断基
④ 準労働協約の承継に関する事項
⑤ 会社分割に当たり、労働者との間に生じた問題の解決手続
(2)団体交渉権
 会社は、労働組合による団体交渉の申し入れがあった場合には、その労働組合と誠意をもって交渉に当たらなければなりません。
(3)開始時期等
 遅くとも分割契約等を承認する株主総会の日の2週間前の日の前日等までに労働組合との協議に着手する必要があります。

協議をする義務

 商法等改正法附則第5条では、会社が会社分割を行う際、労働者と協議をしなければならないと規定しています。会社は当該労働者の労働契約を承継会社に承継させるか、分割会社に残留させるかについて事前に協議しなければなりません。必要な説明を十分に行い、希望を聴取した上で決定する必要があります。
(1)協議の対象となる労働者
・承継される事業に従事している労働者
・承継される事業に従事していないが承継対象とされる労働者
(2)協議の対象事項
 会社は以下①~③を十分説明し、本人の希望を聴取した上で、④・⑤について協議することが必要です。特に②については、債務の履行の見込みのある・なしに関わらず労働者に適切に説明する必要があります。なお、他にも協議が必要と認められる場合は、その事項についても協議を行うことが必要です。
【対象事項】
① 当該労働者が勤務することとなる会社の概要
② 分割会社及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項
③ 承継される事業に主として従事する労働者に該当するか否かの考え方
④ 本人の希望を聴取した上で、当該労働者の労働契約の承継の有無
⑤ 承継するとした場合又は承継しないとした場合に、当該労働者が従事することを予定する業務の内容、就業場所その他の就業形態等
 また、主として従事していなくても職務の内容に影響しうる場合は、上記とは別にその説明を行うなど一定の情報を提供することが望まれます。
(3)協議の代理人
 労働組合を当該協議の代理人として選定することができます。団体交渉の申し入れがあった場合には、会社は、その労働組合と誠意をもって交渉に当たらなければなりません。
(4)協議開始時期
 会社は、通知期限日までに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を開始し、十分に説明、労働者の希望を聴取した上で、労働契約の承継の有無について十分協議できるような時間を確保する必要があります。
(5)協議義務違反
 当該協議を全く行わないか実質的に同視し得る場合は、会社分割の無効の原因となります。
最高裁判例(平成22年日本IBM事件)により、法の趣旨に反する場合は承継の効力を個別に争うことができます。

春闘アンケート集計発表

在宅勤務手当要求平均7800円
生活実感悪化約80%が苦しい

 前号では日本IBM従業員の春闘アンケートコメントを紹介させていただきましたが、今号は項目ごとの集計結果を発表させていただきます。
 集計から従業員の生活実態に則した要求や思いが分かります。職種としては、SE系、営業系、事務系など、幅広い職種からのご協力をいただきました。

在宅勤務手当について

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、在宅勤務に移行せざるを得なかったため、在宅勤務手当についての要求は強く、その要求金額は平均で7844円となりました。
 業務のための水道光熱費等は会社が負担するのが当然であるとして、外資系や日本系企業を問わず、もはや在宅勤務手当を支給するのが常識となりつつあります(2面参照)。日本IBMにおいても、一刻も早い在宅勤務手当の支給開始が望まれます。

生活実感について

 生活実感については「かなり苦しい」「やや苦しい」の合計がなんと79.6%にもなります。、生活実感が悪化していることがわかります。2018年以降で比較して、最も悪い結果です。
 昨年9月の賃上げが延期されたことも大きく影響しています。さらに長年の賃上げ抑制の結果、特に住宅や子供の教育費にお金がかかる年代の生活が苦しくなっています。その上、2019年10月の消費税10%への増税がボディーブローのように効いており、家計への影響が顕著に出ていると思われます。
 会社が約束した今年上半期の賃上げに対する要望も強くなっており、賃上げ要求額は、平均49,556円となりました。

職場の不安・不満

 不安・不満では69.9%の人が「雇用・リストラ」と回答。分社化発表と昨年末のリストラが大きく影響していると思われます。続けて「企業の将来」51.9%、「賃金」42.9%となり、こちらの割合も上昇しました。

在宅勤務手当の他社動向

支給するのが社会常識

 コロナ禍における「在宅勤務のための自宅の環境整備費一時金の支給」の組合要求が一部実現し、日本IBMにおいて「在宅勤務のためのオフィス用品と一部のPC周辺機器の購入が可能となりました」という発表があったことは、かいな第2372号にて紹介しました。
 一方、コロナ禍での在宅勤務の長期化に伴い、業務のための自宅水道光熱費の増加が顕著となっています。本来、業務目的の水道光熱費は会社が負担するべきですが、日本IBMは月々の在宅勤務手当を依然として支給していません。
 マスコミ情報などをもとにまとめた上表によれば、在宅勤務手当の支給を発表する企業が増えています。
 在宅勤務手当の金額は月額ベースで3000円~15000円と幅はありますが、在宅勤務手当を導入する動きはIT、情報通信、製造などの業界で広がっており、各企業が在宅勤務を金銭面で継続的に支援しています。もはや在宅勤務手当の支給は社会常識です。
 日本IBMは、在宅勤務の推奨を強化した2020年3月に遡及して、速やかに月々の在宅勤務手当を支給するべきです。企業の負担を労働者に転嫁して利潤を図ることは、あってはなりません。

会社の不都合な真実

裁判で次々と明らかに

 組合が労働争議として取り組んでいる事件において、弁論が進むにつれて会社の「不都合な真実」が次々と明らかになっています。以下にお伝えします。

再雇用賃金差別裁判

 パート有期雇用労働法に基づき、シニア契約社員の待遇差の説明を求めたところ、例えばある原告の仕事は「現役に比べレビューの回数が少ないから」というのが会社側の説明でした。
 これは単なる表面的な説明にすぎません。シニア側が実際に従事している高度な仕事内容を具体的に書面で反論したところ、裁判所も「良く分かる」と高く評価しました。
 会社は待遇差の比較書面を補充するとしましたが、もともと分かっているはずの現役側の労働条件と職務内容の書面に2ヶ月半もの期間を要すると答弁し、傍聴席があきれる一幕がありました。

パワハラ降格裁判

 この裁判は降格が適切だったのかどうかを争う裁判です。ある原告はPIP(業績改善プログラム)が不合格になったことが降格の理由だと会社側は主張しています。
 ところが原告側がPIPの目標設定内容について検証したところ、設定された期間で設定された目標の達成は絶対に不可能であることが判明しました。
 これを原告側が書面で反論したところ、会社側は「不知」つまり、知らなかったと答弁してきました。降格に結びつくほどの重大な目標設定について、会社はその妥当性を検証もせずに押し付けたことが判明しました。

 

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