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争議の全面解決を要求

 

争議の全面解決を要求

-安心して働ける職場を目指して-

 

 ロックアウト解雇第3次・4次裁判が解決し、第1次・2次・5次裁判も和解協議に入っている状況です。さらに、第2次賃金減額裁判も和解協議に入っています。
 今、私たち従業員に本当に必要なのは、会社がすべての労働争議の解決を決断すること、労使関係を正常化すること、安心して働ける職場を作ることであると組合は考えました。
 そこで2017年5月26日、組合は以下のような要求書を会社に提出しました。

争議の全面解決要求

(1)ロックアウト解雇事件を解決すること
①現在係争中のロックアウト解雇裁判において解雇を撤回して原告の要望(復職、金銭的保障)に誠実に応じ、早期に解決すること
②今後はロックアウト解雇を行わないこと。組合員への解雇、退職勧奨においては労働組合と事前に協議し合意を得ること
(解説)
 この要求のポイントは、今後のことについて言及している点です。今後会社が解雇や退職勧奨を行おうとした場合、事前に労働組合と協議することを求めています。
(2)賃金減額事件を解決すること
①賃金減額の撤回、裁判原告の減額分の返還、減額前の賃金に戻すこと
②裁判未提訴組合員についても減額を撤回し、減額前の賃金に戻すこと
③賃金減額の就業規則・規定を廃止すること
④今後、賃金・労働条件の変更を行なう場合は、労働組合と事前に協議し合意を得ること
(解説)
 裁判提訴していない減額被害者(組合員)についても解決を求めました。さらに、賃金減額を定めた就業規則や格付規定についても廃止を求めました。そうでなければ、今後も安心して働くことができないからです。
(3)労働組合に加入したバンド8の組合員について、他の組合員と同じ扱いをすること不利益扱いをおこなわないこと。
(解説)
 組合推定ではバンド8以上の従業員は全従業員の4割以上にのぼります。バンド8の組合員について会社が組合員の権利行使を拒否しているため、組合は都労委に申立をしています。すでのこの問題は過去に一度結論が出ているため、都労委からは組合勝利、会社の不当労働行為を認定する命令が出ることは明らかです。
(4)シニア契約社員の賃金・労働条件を改善すること
①週5日勤務の場合で月額賃金31万円以上とすること
②週あたりの勤務日数を会社が一方的に決めるのではなく、本人の希望により決めること
③賞与を支給すること
(解説)
 日本IBM再雇用者の労働条件は全国のなかでも最下位企業のひとつです。もはや人権侵害とも言えるこのような低労働条件は早急な改善が必要です。
(5)労使関係を正常化すること
①誠実な団体交渉を行うこと
(A)団結権・団交権を無視した組合員の個別干渉をやめ、組合員の雇用・処遇・労働条件等については、労働組合との団体交渉で協議し決定すること
(B)労働条件・賃金交渉にあたっては、組合の求める経営資料を開示し説明するとともに、組合員の賃金・労働条件の背景となる会社業績、個人の成績評価などについて、組合からの質問に誠実に答えること
(C)組合員の直属上司を団体交渉に出席させること
②安全配慮義務を守り、人権侵害や退職強要をやめること
(解説)
 ロックアウト解雇事件や賃金減額事件、バンド8事件、シニア契約社員事件は会社が日本の労働法を無視した結果起こりました。日本の労働法を尊重すれば、自然にここに記した要求事項のような状態になります。
(6)争議全面解決にあたって、原告と組合に謝罪するとともに、解決金を支払うこと
(解説)
 ロックアウト解雇原告の被害は想像を絶するものがあります。会社の違法行為が明らかになった以上、謝罪し、事件全体としての原告と労働組合が費やした費用を補償するのは当然のことです。

バンド8以上でも組合に入れます

 

バンド8以上でも組合に入れます

司法判断を無視する会社を再び労働委員会の場に

 

 組合は4月9日、東京都労働委員会に組合員資格の問題で申立てを行いました。この問題は、すでに2007年11月に最高裁判所で確定しています。今回の申立は、司法判断に従わない会社の責任を追及するものです。

(労組法2条)組合員の範囲を決めるのは組合

 労働組合員の範囲は、労働組合自身が自主的に決めるべきことで、会社の介入や干渉は許されません。労組法第2条では、労働組合は自主的に運営されると明確に書かれているからです。
 その理由は、組合の運営に会社の意向が入ることで、労働者の利益を擁護し向上させるという組合本来の機能や自主性が著しく損なわれることがないようにするためです。

会社の狙いは労働者の弱体化

 通常、組合員の範囲外として除外すべきは役員など該当全社員の2%~5%が常識となっています。バンド8以上(推定40%)を組合員の対象外とすると、あまりにも多くの社員が対象外となり、労働者の団結が難しくなります。これは、組合に対する団結権を侵害する支配介入、不当労働行為にあたります。

すでに裁判で決着済

 すでにこの問題は東京都労働委員会と裁判所において決着しています。東京高裁の判決でも「組合員の資格を有するものの範囲は本来、組合の自主的判断にゆだねられるべきもの」と明言しています。それにもかかわらず、司法判断を歪曲する会社の姿勢をただすため、東京都労働委員会に申立てを行いました。

バンド8以上の方も組合に加入しましょう

 組合が組合員資格があると認めた方は組合員です。すでに多くのバンド8以上の社員が自らの権利をまもり、要求を実現するため組合に加入されています。また組合に加入されるのは当然のことです。例えばバンド8であっても賃金減額裁判に参加し、差額賃金の支払いを勝ち取った方もいます。
 団結すれば、労働条件の改善や問題を解決することができます。バンド8以上の皆さんもぜひ組合に加入しましょう。

 

【告発】このままでは会社が消滅?

 

【告発】 このままでは会社が消滅?

-会社が秘密裏に減資、株主資本が半減-

 

 前号に続く「日本IBMの昨年度業績」分析の第二弾です。なんと、昨年度の利益処分(株主総会)で資本金が300億円減額され、これと「その他利益剰余金」などを合わせて、株主資本がほぼ半減していることが分かりました。この結果は、日本IBMのオペレーションにどう影響してくるのでしょうか。

株主資本半減で安全性に「かなり問題」

 前号では異常に高いPTI(税引前純利益)について報告しましたが、この額1996億円にほぼ相当する1905億円が株主資本から減少しました。この結果、株主資本の金額は2015年末の3791億円から2016年末には1886億円とほぼ半減し、総資産(負債・純資産合計と等しい)に対する純資産の部の比率は49.1%から一気に減って26.8%となりました。一般的な日本の会社と比較しても、「安全性にかなり問題がある」と言わざるを得ない財務状況です。これらをまとめたものが上表です。

 株主配当のための減資

 一般的に「減資」は業績が悪化し累積損失が出ている企業が、資本金とこの累積損失とを相殺するために行います(このほかに節税のための減資もありますが、これは大企業には当てはまりません)。このタイプの減資では手持ち現金が減ることはありませんが、今回の減資はこれとは明らかに違うものです。
 これは親会社への「配当」のための減資であり、親会社に儲けをゴッソリ現金で持って行かれたことを意味します。そのうち、手持ちの現金・預金などから出し切れなかった分が「借入金」の純増として計上されています。その金額はおよそ1100億円あまりと見られ、これも「支払利息(営業外費用)の純増」につながるほか、将来的に日本IBMの業績を圧迫する要因になる可能性があります。このように子会社の財務的な安全性が損なわれるのは、管理会計側からの経営分析の視点では「あってはならないこと」です。ROE(株主資本利益率)や一株あたり利益が大幅に向上したとしても、これでは経営不安が増大する弊害の方が遥かに大きくなります。

「預け金」は何のため

 また資産の部で急増した「預け金」はあまりなじみのない勘定科目ですが、基本的には「従業員に預けた、あとで精算の必要があるお金」または「短期での資産運用のために委託したお金」がこれに該当します。増加分およそ1100億円は、あとで精算の必要があるお金とは考えにくく、その目的が極めて不自然です。リストラ費用の短期運用でなければいいのですが。

通常業務にも影響が

 前号2面に「無理な外部発注禁止をやめよ」と題した記事を掲載しました。その理由がキャッシュアウト抑制のためとされていることと、親会社への配当などにより日本IBMの財務状況が圧迫されていることは符合します。このような施策の結果、協力会社がIBMからの受注を避けるようなことになると、通常の業務にも影響が出ることになりかねません。
 これはもはや「日本IBMの経営の危機」と言っても過言ではありません。組合はこの問題についても引き続き会社を追及していきます。

第3次訴訟、解雇撤回し2人職場復帰へ 第4次訴訟、解雇無効が確定し職場復帰

 

 ロックアウト解雇裁判 

第3次訴訟、解雇撤回し2人職場復帰へ
第4次訴訟、解雇無効が確定し職場復帰

裁判所前で喜ぶIBM争議団

 ロックアウト解雇裁判の第3次訴訟は、4月25日、東京地裁で和解が成立しました。原告4人全員の解雇を撤回し、うち2人については6月1日付で職場復帰。残る2人については会社が金銭的な支払いをすることを骨子とした和解が成立しました。
 また第4次訴訟は、会社が控訴を断念したため解雇無効と未払い賃金の支払いを命じる東京地裁の判決が確定し、5月9日から職場復帰をしています。
 以下に第3次訴訟の和解に際しての声明文を掲載します。


IBMロックアウト解雇第3次訴訟和解成立にあたっての声明

2017年4月25日

1.日本IBM(会社)がJMITU日本アイビーエム支部組合所属の組合員4名を2013年6月に解雇したロックアウト解雇第3次訴訟事件に関して、本日、東京地方裁判所民事第11部にて、会社が原告ら4名全員に対する解雇を撤回するとともに、うち2名については職場復帰させ、残る2名についても会社都合による退職を合意することを前提とした金銭的な支払いをすることを骨子として、本件紛争が円満に解決する和解が成立した。この和解は、会社が地裁判決前に原告ら全員の解雇を撤回した上で金銭的な支払をなし、うち2名の原告については復職を認めるという画期的な勝利を獲得したものといえる。

2.別訴の解雇第1次・第2次訴訟では、2016年3月に東京地裁が5名の組合員全員の解雇無効の勝訴判決を言い渡しており、さらに本年3月8日にも東京地裁は、解雇第4次訴訟の組合員1名についても勝訴判決を言い渡している。特に、後者の解雇第4次訴訟では、判決に対して会社が控訴せず、原告組合員の勝訴判決が確定しており、会社は同原告の復職を受け入れている。

3.現在、上記解雇第1次・第2次訴訟は東京高裁に、ロックアウト解雇第5次訴訟は東京地裁にそれぞれ係属している。また、確定した第4次訴訟の原告である組合員も、会社との間で復職条件について交渉中である。
私たちは、会社に対し、すべての解雇訴訟について、速やかに解雇を撤回するとともに、本日の第3次訴訟の和解に準じて、組合員らの職場復帰あるいは十分な金銭的補償を伴う合意退職に応じること、さらに都労委での不当労働行為救済命令申立事件、賃金減額訴訟も含めた本件争議の全面解決に踏み切るとともに、今後の労使関係の正常化を実現することを強く求める。

以上

空前のPTIはどこへ行った【春闘報告】

 
空前のPTIはどこへ行った 【春闘報告】
 
――超低額GDP、会社業績達成度の説明つかず――

 先日、日本IBMの昨年度業績が発表されましたが、驚くべきことがわかりました。なんと、昨年度のPTI(税引前純利益)が一昨年度の倍以上である一千九百九十六億円もあるのです。左図はこの5年間のPTIの推移をグラフにしたものですが、昨年度のPTIがいかに突出しているかがわかります。この原因は一千百二十七億円の特別利益が計上されていることにありますが、これについての会社説明は一切ありません。

超低額のGDPと会社業績達成度45はなぜか

 すでに今年度のGDP額が各社員に通知されていますが、あまりにも低額のGDPに驚いている人も多いのではないでしょうか。GDPはその性質からしてもPTIのウェイトが一番高いと思われるので、このPTIの値からしても今年度のGDPがこのように低い説明がつきません。
 また、今年の会社業績達成度45についても疑問です。日本IBMとグローバルIBMの業績が勘案されるにしても、日本IBMのこれだけ突出したPTIであれば少なくとも会社業績達成度は75以上でなければ説明がつきません。
 会社はGDPと会社業績達成度についてもう一度社員に対して誠実に説明する責任がありますし、場合によっては見直すべきです。

賃金決定の不透明さ露呈

 そもそも組合は今年の春闘の一環で会社が回答したGDP額の根拠について次のように求めていました。まず、会社の説明では、昨年から始まったチェックポイント制度と賃金決定は直接の関係は無いとの説明を受け、その点から説明を求めました。

組合要求1

1.各人のGDP回答額を算定した根拠を各所属長に調査し、個別に回答すること。
2.GDP算定にあたって会社から各所属長にガイドした内容を示すこと。

会社回答1

1.2016年のパフォーマンスは、社員とその上司との間で行われたCheckpoint Processにおいて明らかにされており、それを反映してGDP支給額が決定されています。Checkpointの5つのディメンジョンとGDP支給額を関連づける機械的な関連性はありません。
2.社内の管理資料またはガイドを開示する考えはありません。
~ ~ ~
 組合はこれに対し次のように説明を求めました。

組合要求2

Checkpoint Processによって明らかにされたパフォーマンスは何か。何によって示されたのか。具体的に個人別に示すこと。

会社回答2

 2016年のパフォーマンスは、社員とその上司との間で行われたCheckpoint Processにおいて明らかにされており、それを反映してGDP支給額が決定されています。
~ ~ ~
 そもそも所属長とまともにCheckpoint Processをやった人がどれだけいるでしょうか。「あなたのパフォーマンスはxxだった」と明確な答えをもらった人はどれだけいるでしょうか。皆さんのご意見をお待ちしています。

無理な外部発注禁止をやめよ

 
無理な外部発注禁止をやめよ

 現在、GTSをはじめとする多くの部門で、キャッシュアウトを抑制するため、外部業者への発注を禁止する動きがあります。しかし、ここに見てきたように、昨年度の空前のPTIがありながら、ここまでしてキャッシュアウトを抑制する必要があるのでしょうか。
 運用部門の現場では外部業者に頼らざるを得ない現実があります。それをいきなりIBM社員で代替することには無理があります。さらに、入社してまだ1ヶ月の新入社員を、ELTを切り上げて現場の運用要員に配置するという情報もあります。大事故につながる恐れがあることは直ちに止めるべきです。

IBMロックアウト解雇3次訴訟和解成立にあたっての声明

 

IBMロックアウト解雇3次訴訟和解成立にあたっての声明

 

2017年4月25日

 

  1.  日本IBM(会社)がJMITU日本アイビーエム支部組合所属の組合員4名を2013年6月に解雇したロックアウト解雇第3次訴訟事件に関して,本日,東京地方裁判所民事第11部にて,会社が原告ら4名全員に対する解雇を撤回するとともに,うち2名については職場復帰させ,残る2名についても会社都合による退職を合意することを前提とした金銭的な支払いをすることを骨子として、本件紛争が円満に解決する和解が成立した。この和解は,会社が地裁判決前に原告ら全員の解雇を撤回した上で金銭的な支払をなし、うち2名の原告については復職を認めるという画期的な勝利を獲得したものといえる。
  2.  別訴の解雇第1次・第2次訴訟では,2016年3月に東京地裁が5名の組合員全員の解雇無効の勝訴判決を言い渡しており,さらに本年3月8日にも東京地裁は,解雇第4次訴訟の組合員1名についても勝訴判決を言い渡している。特に、後者の解雇第4次訴訟では,判決に対して会社が控訴せず,原告組合員の勝訴判決が確定しており、会社は同原告の復職を受け入れている。
  3.  現在,上記解雇第1次・第2次訴訟は東京高裁に,ロックアウト解雇第5次訴訟は東京地裁にそれぞれ係属している。また、確定した第4次訴訟の原告である組合員も,会社との間で復職条件について交渉中である。
     私たちは,会社に対し,すべての解雇訴訟について,速やかに解雇を撤回するとともに,本日の第3次訴訟の和解に準じて、組合員らの職場復帰あるいは十分な金銭的補償を伴う合意退職に応じること,さらに都労委での不当労働行為救済命令申立事件、賃金減額訴訟も含めた本件争議の全面解決に踏み切るとともに,今後の労使関係の正常化を実現することを強く求める。

以上

JMITU(日本金属製造情報通信労働組合)
JMITU 日本アイビーエム支部
IBMロックアウト解雇事件弁護団

第4次ロックアウト解雇 会社 控訴断念 判決確定

 

   第4次ロックアウト解雇   

 会社  控訴断念 判決確定 

 

原告を職場に戻し

争議を全面解決せよ

官民共同で勝訴確定を宣伝=日本IBM本社前

勝訴判決が確定
復職に向け協議開始

 2017年3月8日に勝利判決が出された第4次ロックアウト解雇裁判は、控訴期限になっても会社が控訴しなかったことが判明。組合側の勝訴が確定しました。すでに原告には約3年分の未払い賃金が遅延損害金6%を含めて支払われました。また、3月分から給与支払いも開始。弁護士から復職に向け協議を開始すると通知がありました。

連戦連勝の組合

 今回の組合側勝訴確定は、団交拒否事件での不当労働行為救済命令の確定、賃金減額事件での請求認諾、ロックアウト解雇第1次・2次裁判全面勝利に続くもので、組合は連戦連勝です。現在、第1次・2次裁判は高裁で、第3次裁判は地裁で和解協議が進行中です。第5次裁判は証人尋問が終わったところで裁判所が心証を決める段階です。
 このタイミングで第4次裁判の勝訴が確定したことは、これら裁判の行方に大きな影響を与えることは必至です。

会社の人事労務政策の誤りと破綻は明らか

 司法による断罪によって、もはや会社の人事労務政策の誤りと破綻は明らかです。これ以上愚行を繰り返し、社会的信頼を失墜させることはやめ、憲法や労働法制を遵守し、労働者の雇用と基本的人権を尊重する労務政策へと根本的に転換すべきときです。

全面解決のとき

 現在係争中のすべてのロックアウト解雇事件及び賃金減額事件についても、先行した裁判と事件の本質・背景は同様です。もはやこれ以上争っても無益です。会社は、争議の全面解決を決断するとともに、労使関係を正常化すべきときです。

学習しよう 労働者の権利

 

 学習しよう 労働者の権利 

 

憲法が労働者の団結権を保障している意味とその歴史的意義

弁護士 岡田 尚

 

 団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)。憲法に定められた「労働基本権」ですが、この権利は労働組合に加入することで、また労働組合として会社に対して行使するものです。
 なぜこのような権利が労働者側に認められているのか、また労働者は労働法をどう活用すべきか。JMITU日本IBM支部争議弁護団の一員である岡田尚弁護士が月刊『学習の友』2017年4月号に執筆した記事をもとに改めて「学習」していきましょう。
※『学習の友』編集部および岡田尚弁護士の許可を得て転載しています。

居酒屋から始まった労働組合

 憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定めています。これが労働組合を結成し、使用者と対等に話し合い、要求が受け入れられなかったときにはストライキをする等の権利の源泉です。
 このような権利の保障は、日本国憲法が制定された1946年以前のわが国にはありませんでした。これを労働基本権といい、ここでいう団結権が認められてはじめて労働組合の結成が非合法でなくなったのです。労働力を売り、賃金をもらうことでしか生きていけない労働者にとって、不満と要求はなくなることはありません。仕事が終わって、ビールを飲みながら愚痴をこぼし合う…そんななかから連帯が生まれ、団結が生まれます。それが労働組合結成のはじまりです。
 それをみた資本家たちは「そのまとまりが自分に向かってきたら」と恐くなって、例えば英国では1799年の「団結禁止法」ができました。労働者が団結することはもちろん、話をすることも、説得することも、カネを出すことも、集めることも、全てを禁止されていました。そして、労働者はこうした弾圧に抗してたたかうために、お互い裏切らないことを約し、「兄弟分の契り(ブラザーリング)」を結んだのです。
 労働組合結成、その合法化までに、世界でどれだけの血が流れ、生命と自由の犠牲があったことか。

労働法は「不平等」を定めている

 労働組合結成の歴史をみても、労使関係を大きく左右するのは「力」関係です。働く者の団結の「力」が弱ければ要求は実現しないし、雇用・労働条件を守ることもできません。
 しかし、「力」関係といっても、裸と裸のぶつかり合いではありません。「力」関係において、大きな差がある労使関係を可能な限り対等にするために、憲法の保障のもと労働法があります。
 平等な人と人との間では、何時間働こうと、働いてもらおうと、お互い納得すれば自由に契約できるはずです。しかし、労働基準法32条は「原則1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない」としています(もっとも、時間外労働の上限の規定はありませんので、実際は青天井となっている職場は相当あり、これが現在大きな問題となって議論されているところです)。
 労働組合の権利等を定めた労働組合法は、1条2項で「労働組合がその目的に沿った正当な活動をする限り(例えば刑法に該当するような行為であっても)罰せられない」としています(もちろん暴力等の行使は例外です)。ストライキは外形的・形式的にみれば「会社に対する業務妨害」ですが、これに対しても威力業務妨害罪の刑事責任も損害賠償の民事上の責任も問われません。
また、同法7条2号に「使用者の団体交渉応諾義務」が規定されています。使用者は労働組合の団交申し入れを断ってはいけないのです。一方、労働組合は使用者から話し合いの申し入れがあっても、受けるか断るかを自由に選択できます。そして、使用者が労働組合の結成や活動を妨害すると「支配介入」とみなされ(同3号)、組合員に不利益取扱いをすることも禁じられています(同1号)。

 労働組合法は、使用者に対して「不平等」な取扱いをしているのです。対等にするためにいわば労働者に「下駄を履かせている」のです。

何故、労働者に「下駄を履かせている」のか

 どうして、こんなに労働組合側を有利に取扱っているのでしょうか。近代法が形式的自由・形式的平等を謳ったのに対して、労働者や農民に実質的自由・実質的平等を付与したのが、ワイマール憲法における生存権です。この考えは、日本国憲法25条に引き継がれています。労働法は、この生存権を具体的に確保するために、労働者を階級的従属・人格的従属から解放し、団結権、団体交渉権、争議権(これを「労働基本権三種の神器」といいます)を認めることによって、労使の実質的対等の原則を実現し、そのなかではじめて人間の尊厳が守られると考えたのです。

労働法を我がものにして日常活動の活発化を

 このように厳しい歴史と試練を経て日本国憲法に規定された労働基本権を、現代の私たちが理解し、これを使いこなさなければなりません。権利が法典のなかに眠っていては、絵に描いた餅になってしまいます。権利を守り、発展させるためには「権利のための闘争」(イェーリング)が必要です。まずは、労働者・労働組合に憲法や労働法が認めている権利を知ること、そしてこれらをどう使うかを日常的に考えることが求められます。三種の神器を、使用者からの攻撃に対する防御としてだけではなく、こちらからの攻撃の道具として用いなければなりません。
 組合活動の権利(組合事務所の貸与、掲示板の設置、チェックオフ等)を拡大し、賃金等労働条件についても、使用者が一方的に制定する就業規則ではなく、労使対等で合意した労働協約によって決定することが大事です。労働協約に反する就業規則は無効です。どんな小さなことでも労使合意少なくとも協議を経て決めるということを慣行化させることが重要です。そして、仮に獲得した既得の陣地があっても、すぐに奪いとられる可能性があるということも十分注意する必要があります。
 使用者との間に紛争が発生すれば、その内容によって、労働基準監督署、労働委員会、裁判所等第三者機関の利用も検討することになりますが、その際は、労働関係に詳しい弁護士に相談するのがベターかと思います。
 労働組合は、何より現場の力で決せられます。幹部請負ではなく民主的運営が不可欠です。そして、学習・討議・実践のくり返しを通じることで、団結の力が本物になります。労働者の生活と権利を守り、発展させていくことが、労働組合の責務です。労働組合のあり様は労働者が人間らしく生きられるかどうかを決定付けるものと言えます。

憲法の危機は労働法の危機

 そして、日本国憲法においてもう一つ重要なことは、労働者にこのような権利を与えることが、再び戦争への道を歩まないための最善の保証という考えが根本にあることです。明治憲法下においては労働基本権の保障がなかったが故に「軍部独裁のもと戦争に突っ走ることを阻止する力が労働者になかった」との反省のうえに立っているのです。
 今、安倍内閣の憲法改悪への歩みは急ピッチで進んでいます。憲法の危機は労働法の危機です。労働者・労働組合の権利の後退は戦争への道とつながっていきます。「今、ここに、共に、生きる」私たちは、職場から、地域から、これを阻止するためのたたかいに一緒に起ちあがらなければなりません。

今こそ労働争議を全面解決し、良い労働環境をともにつくりましょう

 

今こそ労働争議を全面解決し、

良い労働環境をともにつくりましょう

 

JMITU(日本金属製造情報通信労働組合) 中央執行委員長 生熊茂実

 日本IBMで働く仲間のみなさん、新入社員のみなさん、毎日のお仕事お疲れさまです。日本IBMの労働組合=JMITU日本アイビーエム支部と力を合わせて、良い労働環境をつくりましょう。
 私は全国組織であるJMITUの中央執行委員長をしていますが、日ごろから日本アイビーエム支部の仲間とともに、日本IBMで働く仲間の雇用と権利をまもるために力を尽くしています。

組合のとりくみ

 マスコミ報道などで有名になったのでご存じのことと思いますが、日本IBMでは日本企業ではほとんど聞いたことがない「ロックアウト解雇」や「大幅な賃金減額」が行われ、それを撤回させるために、JMITU日本アイビーエム支部は2012年から5つの解雇撤回裁判と賃金減額撤回裁判にとりくんできました。企業としての雇用責任を無視して、上司が「業績不良」評価をして退職強要や解雇をする、「基準もはっきりしない評価で大幅賃金減額」、こんなことに納得できない仲間が労働組合と力を合わせて撤回を求めてきました。
 その結果「ロックアウト解雇」については、昨年3月に二つ、今年3月に一つの訴訟で合計6名の仲間全員の解雇は無効という判決が東京地方裁判所で出ました。「賃金減額」については、おととしの11月に、会社は判決一ヶ月前に労働組合側の請求をすべて認めて裁判を終了させました。しかし一年分の減額分しか支払わず、同じことを繰り返したため、やむを得ず新たな裁判をしています。私たちは裁判をやりたくてやっているのではありません。不当なことや納得できないことが強行され、話し合いで解決しようとしても話し合いにならない、そういうなかでやむを得ず裁判や社会に訴える行動をせざるを得なくなりました。

ともに力をあわせて

 今では労働組合の主張が正しかったことが、裁判所の判決という形で明らかになり、また団体交渉のあり方についても中央労働委員会から「謝罪文」掲示の命令が出され、退職強要による「メンタル不全」が労働災害と認定されるなど、日本IBMの人事政策の誤りが公的機関で次々に認定されています。
 私たちは今こそ、解雇撤回・復職、賃金減額撤回、労働組合との誠実な団体交渉など、労使関係を改善する「労働争議の全面解決」を決断するよう、日本IBM経営陣に求めています。
 雇われて働くものと企業経営者との間には大きな力の違いがあります。とりわけ「成果主義」のもとでは、上司が絶対的な力を持っています。解雇や賃金減額に至らなくても、パワハラやセクハラが蔓延します。一人では対応できません。多くの方が労働組合に加入してこそ、自由にものが言える明るい職場にすることができます。全国組織であるJMITUは、日本IBMに働くみなさんにいつも寄り添って、ともにがんばっています。良い会社・良い労働環境をつくるために、ぜひ労働組合に加入し、ともに力を合わせましょう。

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