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相談窓口

従業員代表は、就業規則改悪に反対を

就業規則、またも不利益改訂

会社は7月末付けで借上げ社宅制度の廃止を発表しました。中央団交報告(5月23日開催)にもあるように、組合は「借上げ社宅制度廃止の撤回」を求めましたが、会社は拒絶しました。
 今回の発表は単なる福利厚生制度の廃止としては影響が大きすぎます。転居を迫られる社員も多く、家族持ちには大きな負担です。その場合の補助はたった10万円です。そのまま住み続けられる社員も家賃の増額を迫られる人が多くいます。しかも更新料や礼金は自己負担です。
 家賃増額や更新料・礼金を計算から外しても、組合試算で最大年間59万円もの負担増になります。(会社負担分の家賃と住宅費補助の差額に税金・社会保険料の1年分の増加を試算しました)
 また住宅費補助の廃止とその金額の本給への組入れも発表されました。かいな前号で指摘したとおり、これは減給された場合、その影響が住宅費補助分にも反映されることを示しており、見過ごせない不利益変更です。

従業員代表の責任

 就業規則を改訂する時は、従業員代表に改訂の内容を説明し、署名を求めます。今回の就業規則「改悪」は対象社員に大きな負担増を強いるものです。
 従業員代表には住宅費補助廃止に反対を表明するよう求めます。ぜひ一緒に闘って、就業規則「改悪」を阻止しましょう。
 組合だけでなく影響を受ける社員は、従業員代表の意見に注視しています。

借り上げ社宅廃止シミュレーション

2013年8月1日付就業規則およびその付属規程の一部改訂について_P2-4

都労委・不当労働行為(団交拒否)事件結審  9月に命令

 2013年5月30 日に東京都労働委員会(以下、「都労委」という)でIBMの不当労働行為(団交拒否)に対する第5回目の審査が行われました。組合・会社の双方が最終陳述書を提出し、結審しました。そして9月に救済命令が言渡される旨、通知されました。
 会社側の団交拒否は明らかと言うことで、申立から1年以内という、異例の早さで命令が出されることになりました。また労働委員会が「救済命令」と表現するのも極めて異例のことです。
 4月30日の証人調べにおいて、会社側証人で当時の団交責任者の坂上俊樹氏は「普通解雇を議題にいれられなかった理由」を証言しました。しかし組合側弁護士の反対尋問に対しては苦しい証言に終始しました。
 組合は9月の命令で、都労委が会社の不当労働行為・団交拒否を認め、組合が勝利することを確信しています。
 組合は東京地裁でのロックアウト解雇撤回裁判と合わせて、会社による横暴な解雇阻止のためにたたかっていきます。他人事と考えず、皆さんも組合に結集して雇用を守りましょう。

【団交報告】 減給でやる気に?

イントラネット発表資料のみ提示

 組合は、5月23日会社と団体交渉(以下、団交)を行い、減給、借り上げ社宅制度の廃止、会社業績スコアなどについて交渉をしました。

減給に根拠なし

 まず、減給について、なぜPBC評価3の人が10%、4の人が15%、さらに3でも前年が3もしくは4の場合は15%の減給になるのか、問いただしました。しかし会社はその理由を明示することができず、減給理由は「ハイパフォーマンス・カルチャーの推進だ」という説明に終始しました。減給することが、社員のやる気を出させることになるのかと質問すると、答えませんでした。
 昨年までは減給対象者はPBC低評価者全員ではなく「マーケットに比べて給与水準の高い社員」に限定していましたが、今年はPBC評価で一律の減給、そしてPIPの結果も考慮されないことの理由についても、会社は回答できませんでした。
 また、減給は7月1日に実施する一方、昇給は10月1日にずらして行う理由を追及しましたが、「昇給はグローバルの方針に従う、減給は国ごとに異なる。日本では就業規則に定められた給与調整の日である7月1日に減給を実施する」との回答でした。「昇給については就業規則に定められた給与調整日を変更してもいいのか」と追及しても、「3ヶ月の遅れは就業規則解釈の範囲内だ」という、就業規則をやぶる回答でした。

借り上げ社宅廃止やめよ

 次に、借り上げ社宅の廃止について質問しましたが、なぜ「古い制度」と判断したかの根拠は回答できませんでした。廃止するにしても、新規受付を中止し契約更新を行わないという方法で、順次減らしていくことが常識的な方法なのに、なぜ一斉に7月31日をもって廃止なのか、会社は説明できませんでした。
 また「日本人社員に対する借り上げ社宅を廃止するくらいなら、まずはアサイニーに対する住宅の提供をやめろ」と迫りましたが、会社は「国をまたいでいますので」という、理由にならない説明しかできませんでした。

利益増えても業績半減?

 賞与計算に使われる会社業績が19と算出された根拠についても、計算可能な説明はされませんでした。会社の説明では、「日本とグローバルとそれぞれの業績で50%ずつが決まり、日本の税引き前利益が昨年の1.8倍になっても目標には到達しなかった」とか「質的な指標もすべて目標を下回り、グローバルの業績も悪かったから」ということでした。「日本IBMの2012年度決算から見て、昨年の40に対して、今年が19である結果は出ない。最終的には、計算結果を無視して、19という数字だけを出したのではないか」と質問しても、会社は「関係部署と相談しないと19という指標が出された理由は説明できない」と逃げました。
 以上のように、会社は、社員に多大な犠牲を払わせながら、イントラネットの発表だけ行い、それに対する納得のいく説明を一つもできないという状態です。
 組合は今後も継続して会社の理不尽な施策に対して、協議を続けていきます。

「一方的不利益変更等やめよ 」 ストライキ決行し訴え

本社事業所前で訴える組合員たち 会社が5月15日に発表した、PBC低評価者の全員減給や借上げ社宅制度の廃止、住宅費補助制度の廃止等の労働条件の一方的な不利益変更、会社業績達成度を19とすること及びまたもや強行したロックアウト解雇に抗議し、組合(JMIU日本IBM支部)は6月3日朝、ストライキに立ち上がりました。
 本社事業所前では、JMIUの生熊中央委員長をはじめ、東京地方の各JMIU支部の応援を受けて、約1300枚のビラを社員に手渡しました。鈴木すみれさんの解雇予告を聞いた女性センターの仲間たちは、お手製の横断幕を手に、解雇撤回を訴えました。
豊洲事業所前で初めてのストライキ行動 豊洲事業所前では、初めてのストライキ行動が行われました。組合ののぼりと「スト決行中」を掲げ、「一方的不利益変更をやめよ」「組合に結集しよう」との宣伝を行い、用意したビラは1時間でなくなり、急きょ増刷して対応しました。この問題に関する従業員の関心は高く、近くの住民からも「がんばれよ」の声を受けました。
 幕張事業所では、支部組合員3人にJMIU千葉地本および千葉労連から十数名が支援して本社前行動のような迫力を実現し、700枚以上のビラを配布しました。
 大阪事業所前では、地本・労連、OBの支援を得て、宣伝カーからの宣伝を行うと共に、400枚のビラを配布しました。大阪事業所前で宣伝行動

ブルームバーグPIP解雇事件・東京高裁判決についての声明

 米ブルームバーグ東京支局の記者の解雇をめぐる訴訟で4月24日、東京高裁が一審東京地裁に続いて、原告記者側勝利の判決を言い渡しました。
 これを受けて、新聞労連、新聞通信合同ユニオン、弁護団が連名で声明が発表されましたので紹介します。

ブルームバーグPIP解雇事件・東京高裁判決についての声明
(1)  東京高等裁判所第20民事部(坂井満裁判長)は、2013年4月24日、ブルームバーグPIP解雇事件の裁判において、会社側の控訴を棄却する判決を出した。本件は、2005年11月に通信社ブルームバーグに記者として中途採用された原告(被控訴人)が、2009年12月から2010年3月にかけて会社からPIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン:業績改善プラン)を実施された後、能力不足を口実に解雇されたことから、会社を相手どり、解雇は無効であるとして従業員としての地位の確認を求め、2012年10月5日に、一審東京地裁が解雇無効の判決を出していた事件である。
(2)  高裁判決は、原審より進んで、原告が会社の管理システムに行動予定を書き込んでいたことや原告が執筆した記事本数は同僚と遜色がないことなど、会社の主張する解雇理由が成り立たないことを補強して認定した。さらに、会社が提出した、氏名不詳の14名の従業員の資料については、原告が反証不能な書証であり信用できないなどとし、原告の職務能力の重大な低下を示す客観的証拠はないと断言した。
 また、控訴審において会社が「国際企業と一般的な日本企業との雇用形態には差異がある」として、外資系企業について解雇権濫用法理をゆるやかに適用すべき旨を主張していた点については、「単なる一般論に過ぎず」「解雇事由の判断に影響を与えるようなものではない」と一蹴した。
 なお、会社は、原告が会社側の提案した備品管理などの業務での復職に応じないことを理由として、高裁結審後の和解協議中の本年3月1日、改めて解雇通告をした。違法に違法を重ねて恥じない会社の姿勢は、自らの存立を危うくするものであることを知るべきである。
(3)  本判決は、解雇の規制緩和や大企業による退職強要が横行し、労働者の雇用環境が悪化しつつある中で貴重な判決である。
とりわけ今、政府の産業競争力会議や規制改革会議において、首切り自由の「限定正社員制度」や違法解雇を手切れ金で解決する「解雇の金銭解決制度」の導入が検討されている。
 上記会議の構成員である経済学者や大企業経営者は、日本の正社員が過度に雇用保障されていることが、産業の発展を阻害していることを議論の前提としている。しかし、それは実態とかけはなれた机上の議論である。
 現場では、本件のように、「業績改善」に名を借りた退職強要・違法解雇が横行している。訴訟などで闘える労働者はごく一部に留まり、圧倒的多数の労働者が権利を守られることなく泣き寝入りしているのが実態である。
 今、必要なのは、解雇自由の弱肉強食社会の実現ではない。労働者が、自らの労働にふさわしい対価と十分な休息を享受し、安心して働き続けられる社会の実現である。
 そのために、労働者が長年にわたる闘いで勝ち取った解雇権濫用法理(労働契約法16条)をはじめとする労働者保護法制を実効化し、さらに強化していくことこそが必要である。
 私たちは、労働者の権利を擁護し、健全な社会の発展のために引き続き奮闘する決意である。
2013年4月24日
日本新聞労働組合連合
新聞通信合同ユニオン
弁護団弁護士 今泉義竜/小木和男/菅 俊治

参考:ブルームバーグの記者解雇訴訟、2審も原告勝訴
          (ニュース・ワーカー2 2013年04月25日)

【団交報告】 団交で触れず減給発表
         不誠実団交続ける会社

 組合は、5月13日会社と団体交渉(以下、団交)を行いました。
 組合は、夏期一時金に対する会社業績スコア、ISCJからIBITにさらに出向させられる社員に対する待遇等について、そして就業規則の不利益変更について、追及しました。

▼会社業績スコアのだまし討ち▼

 組合が、会社業績には量的指数と質的指標があるが、量的指標は売上高と税引き前利益で決まるので、この二つの金額がすでに出ているためすでに算出できるはずだと追及しましたが、会社は日本だけの状況では決まらないため、まだ回答できないとしました。
 日本では、売上高は微減しましたが、税引き前利益は倍増していますので、昨年のスコア40に対して期待できるのではないかとさらに追及しましたが、会社は何も回答しませんでした。
 ところがそのたった二日後の5月15日、会社はスコアが19であると全社員に対して発表しました。発表の前に組合に対して何の通知も行われませんでした。会社は依然として不誠実団交を続けています。

▼就業規則の不利益変更▼

 会社は4月1日付けの就業規則を「文言の変更」と説明しました。しかしながら、詳細を調べると不利益変更が二点含まれていることが判明しました。
 一点目は休職期間を必ず通算するようにしたことで、二点目は定年退職日を誕生日から誕生月の月末としたことです。
 この不利益変更について、繰り返し追及すると、遂に会社も不利益変更であることを認めました。
 なお、IBITへ出向したことによる不利益変更は団交の場で回答はできず、調査して回答するとのことでした。

▼いきなり減給を発表▼

 二日前に団交をしたにもかかわらず、団交の場では減給について、一言も会社は触れませんでした。
 労働条件の変更は事前に協議するように重ねて申し入れているにもかかわらず、組合を軽視しています。

▼誠実な団交を求める▼

 会社の不誠実団交に対して、断固として闘っていきます。そして、団交を行ったという履歴だけを残そうとしている会社に対して、毎回の団交を実のあるものにしていくようにします。

就業規則改訂の問題点(その2)

 会社は4月1日付けで就業規則の改訂を発表しました。この改訂には私傷病時に取得できる欠勤や休職期間の短縮という重大な不利益変更が含まれていることは、4月1日発行のかいな2221号(第13回中央団交報告)でお知らせしたとおりです。その他にも定年退職の日を定年の「誕生日」から「誕生月の月末」に変更しました。一見、良いことのように見えますが、そうではありません。3月以前は月の途中で定年退職した場合でも、月末までの給与が支払われていました。1日生まれの社員は、1日付けで退職しても1か月分の給与を受取れたということです。それが4月以降は月末まで働かなければならないということで、最大で30日のただ働きを強いられるのです。このことに気づいている社員が何人いるでしょうか。

 手続きにも大きな疑問

 今回の改訂手続きにも大きな疑問があります。会社は2009年までは就業規則改訂のたびに従業員代表選出を行い、社員にその信を問うてきました。しかし2010年以降は、36協定締結のために選出した従業員代表に1年の任期を与え、その間の就業規則改訂を無条件で承認させています。今回の就業規則改訂も、昨年11月に選出された従業員代表が署名したはずです。社員は36協定については、協定案と公開された趣意書を読んだうえで、従業員代表を選出しました。しかし今回の就業規則改訂についてまで、賛否を委任したわけではありません。社員は反対する機会を与えられませんでした。
 組合は2012年12月17日発行のかいな2014号で従業員代表選出の問題点を指摘しましたが、それが現実のものとなりました。
 会社は巧妙かつ狡猾な方法で労働条件を切り下げてきます。社員の皆さんは騙されることなく、会社の意図を見抜いてください。組合は労働条件の悪化を防止するために闘っていきます。

またも労基署から指導票
    有休取得制限は不当

 本社勤務のAさんは業務の傍ら、一人でお父様の介護を行っており、有休はほぼ全て介護のために使っています。(もちろん看護休暇も取得しています。)そのため、お父様の具合が悪いときは、有休取得が多くなり、3月は5.5日に及びました。
 ところがAさんの所属長のB担当は、Aさんの家庭の事情と3月分の有休取得日数を知りながら、PIPの目標に3月~5月は「毎月有休2日以内」という要求を加えました。(AさんのPIP管理フォームの特記事項にはお父様の介護のことが明記してあります。)そして目標を達成出来なかった場合は、減給、降格、更には解雇が有り得るという紙も渡されました。
 説明するまでもなく、有休取得は私たち労働者に認められた権利です。理由を問わず、私たちは自由に有休を取得できます。「業務に大きな支障をきたす」という限られた条件でのみ、会社は時期変更権を行使できるのです。
 それにもかかわらず、有休取得そのものを月2日に制限するなど許されることではありません。
 特にAさんの場合は、遊びではなく、親の介護のために有休を取得しているのです。その事情を知りながら、有休取得日数を制限するなど、まともな人間のすることとは思えません。
 しかも月3日以上の有休を取得したら、減給、降格、更には解雇が有り得るとなれば、誰でも有休取得を躊躇するでしょう。人の命を何だと思っているのでしょうか。
 また、お父様の容態が悪化したとき、救急隊員、搬送先病院の医師や看護師、ケアマネージャーから、Aさんの携帯電話に連絡が入ります。就業時間中に対応したAさんに対して、B担当は「仕事中に私用電話をして、ずるい」という信じられない発言を繰り返しました。「家族の具合が悪い」という連絡は、「休憩時間にかけ直す」など出来ないのです。遊びの連絡を就業時間中にしているのとは、明らかに次元が異なるのです。
 B担当のあまりの酷さに、Aさんは組合の支援を受け、労働基準監督署(労基署)にB担当の違法行為を申告しました。申告受理から労基署が実際に動き出すまで、通常は1ヶ月程度かかります。しかし今回は人の命がかかわることということで、1週間という異例の早さで動いてくれました。4月8日に労務の川崎慎吾担当を始めとする関係者を労基署に呼出し、指導票を交付しました。
 内容は「Aさんに対する扱いは労働基準法に照らして問題がありますので、有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額、不利益変更などの取り扱いをしないように。」というものでした。B担当は、PIPの目標から有休取得制限を削除しました。
 組合はもちろんPIPそのものの不当性を訴えて闘っています。そのなかでも今回のB担当の目標設定は、悪魔の所業としか考えられません。B担当こそ、「業績改善」のため、個別に上司や人事から指導を受けるべきと考えます。

15%もの減額発表
   社員無視の会社施策

 5月15日に「パーソナル・リーダーシップを通じた、さらなる変革の推進について」という一見、前向きな素晴らしい名前のレターが社長名で発信されました。日本IBMの成長を促す、新規施策の発表かと思い読んでみると、実は社員の労働条件を切下げる酷い改悪の発表でした。

◆PBC低評価は全員減給◆

 2012年PBCが4の社員は7月1日付けでReference Salaryの15%、3の社員は10%を減額調整する。ただし2011年のPBCが3または4の場合は2012年のPBCが3でも15%減額調整するというものでした。
 昨年までの減額調整は、「PIPの目標を達成した場合は、減額調整しないこともある」という救済措置がありましたが、それもなくなりました。
 また昨年までは「給与がマーケット水準より高い社員」のみが対象でしたが、今年は全員が対象となります。会社のいう「マーケットと比較した給与水準」を自ら否定することとなりました。
 減給方法も巧妙です。減給割合を給与と賞与で6対4としています。これは15%の減給対象者でも「給与」からは9%減給されることを示しています。減給についての判例では、「10%を越える大幅な減給は不当」とされることが多く、それを意識したものと考えられます。
 IBMの評価制度は相対評価です。社員がどんなに頑張っても一定の割合で低評価の社員が出てきます。そして低評価をつけられた社員を無条件で減給するなど、日本の労働法・労働慣習で許されるものではありません。

◆借上げ社宅制度廃止◆

 「制度が古い」という不可解な理由で、借上げ社宅制度の廃止が通知されました。住宅費補助制度に基づく支給額を本給に組み込むとのことですが、多くの社員で月額数万円単位の負担増になります。それだけではありません。借上げ社宅の会社負担分は、多くの社員で非課税だったはずです。それが本給に組み込まれることで、課税対象になるほか、社会保険料の計算対象になります。
 制度廃止の8月以降は、「社員が自分で対応せよ」とのことですが、大家や不動産会社が契約を認めず、立退きを迫られる社員も出てくると思われます。家族を持ち、特に小中の公立学校に通うお子さんのいる社員には大きな負担になります。しかしそのための補助は、一律10万円の補助と、100万円を2年間無利子で貸し出すというわずかなものです。また契約を認めて、同じ家に住み続けられたとしても、契約時に値上げを迫られる可能性があります。4月入社の新入社員の場合、わずか4ヶ月での制度変更であり、入社早々、生活設計に大きな狂いが生じることになります。
 普通の日本の会社なら、8月以降の新規受付の停止、現在の契約更新を認めない」という形で徐々になくしていくところです。それが2ヶ月半前にいきなり廃止の発表です。いったい社員の生活を何だと思っているのでしょうか。
 また、住宅費補助の金額の本給への組入れは一見小さな内容ですが、これは減給された場合、その影響が住宅費補助分にも反映されることを示しており、見過ごせない不利益変更です。

◆会社業績はたった19?◆

 夏期ボーナスの会社業績スコアはたった19であることが発表されました。日本IBMは経常利益率が10%を越え、財務諸表上は超優良企業です。税引前利益は2011年度の2倍近いにもかかわらず、昨年の半分以下です。

 組合は法廷闘争、ストを含むあらゆる方法で闘っていきます。社員の皆さんも組合に加入して、会社の横暴と闘っていきましょう。

ここが変だよ 「シニア契約社員」制度

 会社は2月1日付けで「シニア契約社員」制度と「シニア・プロフェッショナル」制度を発表しました。これは4月1日付けで施行される改正高年齢者雇用安定法に対応するためのものです。
 しかしその内容は、組合が要求する「65歳までの定年延長」とはかけ離れた貧弱なものでした。ここでは特に問題が大きい「シニア契約社員」制度について検証します。
 組合は「シニア契約社員」制度について、以下の①~③の三つの問題点があると考えます。

①月給17万円では生活できない

 「シニア契約社員」制度では週5日勤務でも一律月額17万円(年額204万円)の処遇となります。60歳代の夫婦二人に必要な収入はJMIUの調査では月額28万円といわれています。年金支給年齢が60歳から引き上げられる状況も合わせ考えると、全く足りません。
 さらに勤務日数は「社員と雇用部門の合意に基づき定めます」とあります。会社が「週3日勤務」と指定すれば、週3日しか勤務出来ないと考えられます。週3日勤務の場合、月給は10万2千円になります。これは東京の一人暮らしの生活保護水準を下回ります。
 厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」で「賃金について高年齢者の生活の安定などを考慮し」とありますが、そのような考慮がなされていないことは明らかです。

②業務は60歳より前とは異なる

 「想定する業務」は「これまで社外に委託していた仕事や部門で発生するサポート業務など」になっています。会社は「本人が60歳より前に行っていた業務とは異なる」と明言しています。社員のこれまでのキャリアを全く無視しています。
 週5日勤務で月に23日勤務した場合は、時給は1000円を下回ります。まだまだ元気な60歳の社員を、学生アルバイト並みの時給1000円の業務につけるのですから人材の無駄遣いです。
 それでも会社は「業務内容を考慮して月額17万円の処遇を決定した」と主張しています。会社が高年齢者の有効活用を本気で考えているとは考えられません。

③PBCで契約解除も

 会社は「シニア契約社員」は「PBC評価対象。ただし、他の社員との相対評価はしません」としています。「シニア契約社員」の処遇は、週5日勤務で一律月額17万円と決まっており、「諸手当、賞与およびGDP・インセンティブは対象外です」としていますのでPBC評価による処遇の差はないことになります。
 ではなぜPBC評価を行うのでしょうか。契約更新条件に「就業規則の解雇事由、退職事由に該当する場合は更新しません」とあります。これはPBC低評価の場合この条件に抵触し、65歳までの契約更新がされない可能性があることを示しています。
 また相対評価ではないということは、何人でもPBC低評価をつけられます。会社の業績が悪い場合、多くの「シニア契約社員」の契約を更新しないという操作が出来るということを意味します。
 これらを考慮すると、会社が60歳以上の高年齢者の雇用を本気で確保しようとしているとは考えられません。改正高年齢者雇用安定法に対応するために制度だけは作ったが、本当に社員が応募するとは期待していないと思われます。
 それでも「シニア契約社員」になった人は安い給料で使われて、会社業績が悪化すればすぐに雇用を打切られる不安定な身分におかれるという、社員にとって非常に不利な制度ということです。

高年齢者雇用の安定を

 組合は2月28日の中央団体交渉で「4月1日から、この制度がはじまるが応募者は何人いるのか」質問しました。会社の回答は「ゼロではありません」という極めて不誠実なものでした。極めて少ないものと思われます。
 前出の厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」では、「希望者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること」とあります。 組合は、「シニア契約社員」制度が有効に活用されているかを監視し、改善を求めていきます。高年齢者の雇用の安定のために会社への働きかけを続けていきます。


高年法問題で厚労省要請(4月11日)
日本IBM支部大岡委員長も参加


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