6月27日、組合は厚生労働省を訪れ、会社が違法解雇をやめるよう指導を要請しました。これには田村智子参院議員も同席しました。組合は、5月下旬から6月下旬にかけて多くのロックアウト解雇が発生し、その一方で年収の15%にも及ぶ減給を脅しに使った退職強要が蔓延しており、次の段階は壮絶なリストラになる、と強調しました。
厚労省の担当者は「情報を入手したら会社に法令や裁判例の周知を啓発指導している。情報は真摯にお伺いしました」「尊厳を損ねるような方法を避けるようお願いしている」と答えました。田村議員は「ILO(国際労働機関)でも対話が重視されているが、IBMには話し合いの余地もない。これが許されれば他社に飛び火する」と早急な対応を求めました。
違法解雇止めよ 厚労省へ指導要請
ロックアウト解雇で、さらに2人提訴
6月末締めにあわせてロックアウト解雇が再び実施されたことに対して、2人の組合員が6月20日地位保全と賃金の支払いを求めて東京地裁に提訴しました。
◆昨年と同じやり方で◆
今回のロックアウト解雇も、昨年の9月末締めに合わせて実施されたロックアウト解雇と同じ方法です。
上司から午後5時にミーティングが召集され会議室に行くよう指示を受けます。そこにいきなり上長や人事担当者が入ってきて、「貴殿は、業績が低い状態が続いており…」と突然、解雇予告通知書を読み上げ始めます。まるでロールプレイを行うように淡々と進みます。そして私物をまとめて帰るように指示され、翌日から出勤禁止とされます。私物は宅配便で自宅に送られます。
◆あってはならない・・・◆
人員削減が目的なのに、個人の業績を口実にして解雇するこのようなやり方は、労働者に屈辱を与えるばかりでなく、仕事の誇りも人間関係も奪い去るもので、社会的に大きな問題になっています。
昨秋の国会の予算委員会でも野田首相(当時)が「あってはならないやりかたであります」と答弁を行っています。それにもかかわらず会社はまたもや解雇を強行しました。このような横暴な解雇の撤回を求め、昨年10月に3人が、今回新たに2人が東京地裁に提訴したものです。
◆具体的事実は提示せず◆
会社は「貴殿は、業績が低い状態が続いており、その間、会社は職掌や担当範囲の変更を試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、もはやこの状態を放っておくことができないと判断しました」などと主張し、これが「技能または能率が極めて低く、かつ上達または回復の見込みが乏しいかもしくは他人の就業に支障を及ぼす等、現職または他の職務に就業させるに著しく適しないと認められるとき」(就業規則53条2項)に該当するとして解雇予告を出しました。
しかしながら会社は、就業規則53条2項に該当する具体的な事実を明らかにしていません。そもそも、就業規則53条2項に該当するような事情や事象は存在しないと言えます。
◆理由や相当性なし◆
労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
IBMの解雇には、就業規則53条2項に該当する事実もなく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないのです。
組合は、この問題に関連する団体交渉拒否の救済申し立てを東京都労働委員会に対して行っており、9月に命令が出る予定です。今後、追加提訴、第三者機関への申し立てや宣伝行動を強め、他の労組や団体との連携を強化し、会社を社会的に包囲していきます。
【中央団交 報告】
他社より優れた制度は廃止
従業員代表選挙せず、就業規則改悪
6月6日に第17回中央団体交渉が開かれ、会社業績スコア19を資すとともに、借り上げ社宅廃止、従業員代表選出、減給、ロックアウト解雇について、交渉しました。
業績スコア19の理由説明せず
まず組合は会社業績スコア19の根拠を前回の団交に続いて問いただしました。会社は量的指標(売上高と税引き前利益、キャッシュフロー)が目標に達しなかったためと説明しました。
しかし会社がいう量的指標の目標額や、どのくらい到達しなったのかという質問には「答えるつもりはありません」と言って回答しませんでした。
「会社としての総合的評価である」として、会社の言う量的指標が単なる口実であり、会社業績スコアを会社が恣意的に決めていることを暗に認めました。
優れた制度は廃止する
次に借り上げ社宅廃止の中止を求めるとともに、廃止の理由として挙げた「制度が古い」根拠の説明を求めました。会社は「他社に同様の制度がなかったから」「過去にあっても廃止する方向にあるから」と説明しましたが、比較した他社の名前は開示しませんでした。
組合は「今の回答だと、IBMの制度は優れているので、ほかの会社の悪い制度にあわせるということか」と質問しましたが、会社は「報酬は個々人の属性ではなく、(個人の)業績に連動する」と回答し、社員の生活への配慮をやめたことを公言しました。
従業員代表選挙せず就業規則改悪の意見聴取
組合は今回の就業規則改訂の手続きも問題にしました。就業規則改訂には従業員代表の意見聴取が必要ですが、現在の従業員代表は昨年11月に36協定のために選出された人たちです。借り上げ社宅廃止などについて、社員の信任を受けていないことを指摘しましたが、会社は「従業員代表の任期は1年である」と言って無視しました。
組合は今後の従業員代表選挙では、就業規則「改悪」に反対する従業員代表への投票を訴えていきます。
減給で、社員のやる気が出る?
つづいて組合は減給について追及しましたが、会社は「減給の根拠は説明しない」「対象人数や平均減給額も公表しない」と詳細な説明を拒否しました。組合は「減給された社員はやる気をなくすだけである。ハイ・パフォーマンスカルチャーの推進にならない」と指摘しましたが、会社側は「どういう回答をして欲しいのですか?」と茶化すのみで、まともな回答をしませんでした。
組合は「懲戒処分による減給でさえ、10%の制限があるのに、個人業績が『期待値を下回った』だけで、15%も減給するのは異常である」と迫りましたが、「懲戒処分と給与調整の減給は無関係である」として、減給%の不当性を無視しました。
解雇は撤回せず
解雇理由も説明せず
最後にロックアウト解雇について解雇撤回を求めましたが、会社は拒絶しました。解雇理由の説明も求めましたが、既に解雇理由証明書を添付してあるとして、こちらも拒絶しました。
組合はロックアウト解雇や退職強要、個人のPBC低評価やPIPだけでなく、就業規則の不利益変更についても追求していきます。
個別業績を理由に解雇乱発
6月10日の「ロックアウト解雇」裁判での原告側の意見書は以下のとおりです。
|
従業員代表は、就業規則改悪に反対を
就業規則、またも不利益改訂
会社は7月末付けで借上げ社宅制度の廃止を発表しました。中央団交報告(5月23日開催)にもあるように、組合は「借上げ社宅制度廃止の撤回」を求めましたが、会社は拒絶しました。
今回の発表は単なる福利厚生制度の廃止としては影響が大きすぎます。転居を迫られる社員も多く、家族持ちには大きな負担です。その場合の補助はたった10万円です。そのまま住み続けられる社員も家賃の増額を迫られる人が多くいます。しかも更新料や礼金は自己負担です。
家賃増額や更新料・礼金を計算から外しても、組合試算で最大年間59万円もの負担増になります。(会社負担分の家賃と住宅費補助の差額に税金・社会保険料の1年分の増加を試算しました)
また住宅費補助の廃止とその金額の本給への組入れも発表されました。かいな前号で指摘したとおり、これは減給された場合、その影響が住宅費補助分にも反映されることを示しており、見過ごせない不利益変更です。
従業員代表の責任
就業規則を改訂する時は、従業員代表に改訂の内容を説明し、署名を求めます。今回の就業規則「改悪」は対象社員に大きな負担増を強いるものです。
従業員代表には住宅費補助廃止に反対を表明するよう求めます。ぜひ一緒に闘って、就業規則「改悪」を阻止しましょう。
組合だけでなく影響を受ける社員は、従業員代表の意見に注視しています。
借り上げ社宅廃止シミュレーション
2013年8月1日付就業規則およびその付属規程の一部改訂について_P2-4
都労委・不当労働行為(団交拒否)事件結審 9月に命令
2013年5月30 日に東京都労働委員会(以下、「都労委」という)でIBMの不当労働行為(団交拒否)に対する第5回目の審査が行われました。組合・会社の双方が最終陳述書を提出し、結審しました。そして9月に救済命令が言渡される旨、通知されました。
会社側の団交拒否は明らかと言うことで、申立から1年以内という、異例の早さで命令が出されることになりました。また労働委員会が「救済命令」と表現するのも極めて異例のことです。
4月30日の証人調べにおいて、会社側証人で当時の団交責任者の坂上俊樹氏は「普通解雇を議題にいれられなかった理由」を証言しました。しかし組合側弁護士の反対尋問に対しては苦しい証言に終始しました。
組合は9月の命令で、都労委が会社の不当労働行為・団交拒否を認め、組合が勝利することを確信しています。
組合は東京地裁でのロックアウト解雇撤回裁判と合わせて、会社による横暴な解雇阻止のためにたたかっていきます。他人事と考えず、皆さんも組合に結集して雇用を守りましょう。
【団交報告】 減給でやる気に?
イントラネット発表資料のみ提示
組合は、5月23日会社と団体交渉(以下、団交)を行い、減給、借り上げ社宅制度の廃止、会社業績スコアなどについて交渉をしました。
減給に根拠なし
まず、減給について、なぜPBC評価3の人が10%、4の人が15%、さらに3でも前年が3もしくは4の場合は15%の減給になるのか、問いただしました。しかし会社はその理由を明示することができず、減給理由は「ハイパフォーマンス・カルチャーの推進だ」という説明に終始しました。減給することが、社員のやる気を出させることになるのかと質問すると、答えませんでした。
昨年までは減給対象者はPBC低評価者全員ではなく「マーケットに比べて給与水準の高い社員」に限定していましたが、今年はPBC評価で一律の減給、そしてPIPの結果も考慮されないことの理由についても、会社は回答できませんでした。
また、減給は7月1日に実施する一方、昇給は10月1日にずらして行う理由を追及しましたが、「昇給はグローバルの方針に従う、減給は国ごとに異なる。日本では就業規則に定められた給与調整の日である7月1日に減給を実施する」との回答でした。「昇給については就業規則に定められた給与調整日を変更してもいいのか」と追及しても、「3ヶ月の遅れは就業規則解釈の範囲内だ」という、就業規則をやぶる回答でした。
借り上げ社宅廃止やめよ
次に、借り上げ社宅の廃止について質問しましたが、なぜ「古い制度」と判断したかの根拠は回答できませんでした。廃止するにしても、新規受付を中止し契約更新を行わないという方法で、順次減らしていくことが常識的な方法なのに、なぜ一斉に7月31日をもって廃止なのか、会社は説明できませんでした。
また「日本人社員に対する借り上げ社宅を廃止するくらいなら、まずはアサイニーに対する住宅の提供をやめろ」と迫りましたが、会社は「国をまたいでいますので」という、理由にならない説明しかできませんでした。
利益増えても業績半減?
賞与計算に使われる会社業績が19と算出された根拠についても、計算可能な説明はされませんでした。会社の説明では、「日本とグローバルとそれぞれの業績で50%ずつが決まり、日本の税引き前利益が昨年の1.8倍になっても目標には到達しなかった」とか「質的な指標もすべて目標を下回り、グローバルの業績も悪かったから」ということでした。「日本IBMの2012年度決算から見て、昨年の40に対して、今年が19である結果は出ない。最終的には、計算結果を無視して、19という数字だけを出したのではないか」と質問しても、会社は「関係部署と相談しないと19という指標が出された理由は説明できない」と逃げました。
以上のように、会社は、社員に多大な犠牲を払わせながら、イントラネットの発表だけ行い、それに対する納得のいく説明を一つもできないという状態です。
組合は今後も継続して会社の理不尽な施策に対して、協議を続けていきます。
「一方的不利益変更等やめよ 」 ストライキ決行し訴え
会社が5月15日に発表した、PBC低評価者の全員減給や借上げ社宅制度の廃止、住宅費補助制度の廃止等の労働条件の一方的な不利益変更、会社業績達成度を19とすること及びまたもや強行したロックアウト解雇に抗議し、組合(JMIU日本IBM支部)は6月3日朝、ストライキに立ち上がりました。
本社事業所前では、JMIUの生熊中央委員長をはじめ、東京地方の各JMIU支部の応援を受けて、約1300枚のビラを社員に手渡しました。鈴木すみれさんの解雇予告を聞いた女性センターの仲間たちは、お手製の横断幕を手に、解雇撤回を訴えました。
豊洲事業所前では、初めてのストライキ行動が行われました。組合ののぼりと「スト決行中」を掲げ、「一方的不利益変更をやめよ」「組合に結集しよう」との宣伝を行い、用意したビラは1時間でなくなり、急きょ増刷して対応しました。この問題に関する従業員の関心は高く、近くの住民からも「がんばれよ」の声を受けました。
幕張事業所では、支部組合員3人にJMIU千葉地本および千葉労連から十数名が支援して本社前行動のような迫力を実現し、700枚以上のビラを配布しました。
大阪事業所前では、地本・労連、OBの支援を得て、宣伝カーからの宣伝を行うと共に、400枚のビラを配布しました。
ブルームバーグPIP解雇事件・東京高裁判決についての声明
米ブルームバーグ東京支局の記者の解雇をめぐる訴訟で4月24日、東京高裁が一審東京地裁に続いて、原告記者側勝利の判決を言い渡しました。
これを受けて、新聞労連、新聞通信合同ユニオン、弁護団が連名で声明が発表されましたので紹介します。
|
参考:ブルームバーグの記者解雇訴訟、2審も原告勝訴
(ニュース・ワーカー2 2013年04月25日)
【団交報告】 団交で触れず減給発表
不誠実団交続ける会社
組合は、5月13日会社と団体交渉(以下、団交)を行いました。
組合は、夏期一時金に対する会社業績スコア、ISCJからIBITにさらに出向させられる社員に対する待遇等について、そして就業規則の不利益変更について、追及しました。
▼会社業績スコアのだまし討ち▼
組合が、会社業績には量的指数と質的指標があるが、量的指標は売上高と税引き前利益で決まるので、この二つの金額がすでに出ているためすでに算出できるはずだと追及しましたが、会社は日本だけの状況では決まらないため、まだ回答できないとしました。
日本では、売上高は微減しましたが、税引き前利益は倍増していますので、昨年のスコア40に対して期待できるのではないかとさらに追及しましたが、会社は何も回答しませんでした。
ところがそのたった二日後の5月15日、会社はスコアが19であると全社員に対して発表しました。発表の前に組合に対して何の通知も行われませんでした。会社は依然として不誠実団交を続けています。
▼就業規則の不利益変更▼
会社は4月1日付けの就業規則を「文言の変更」と説明しました。しかしながら、詳細を調べると不利益変更が二点含まれていることが判明しました。
一点目は休職期間を必ず通算するようにしたことで、二点目は定年退職日を誕生日から誕生月の月末としたことです。
この不利益変更について、繰り返し追及すると、遂に会社も不利益変更であることを認めました。
なお、IBITへ出向したことによる不利益変更は団交の場で回答はできず、調査して回答するとのことでした。
▼いきなり減給を発表▼
二日前に団交をしたにもかかわらず、団交の場では減給について、一言も会社は触れませんでした。
労働条件の変更は事前に協議するように重ねて申し入れているにもかかわらず、組合を軽視しています。
▼誠実な団交を求める▼
会社の不誠実団交に対して、断固として闘っていきます。そして、団交を行ったという履歴だけを残そうとしている会社に対して、毎回の団交を実のあるものにしていくようにします。